真・お金の常識論

【第1回】サラリーマンだからこそ、お金持ちになれる

経済コラムニスト大江 英樹

多くのサラリーマンは「よほど出世でもしない限り、お金持ちになんかなれるわけがない」と思っています。毎月決まった給料しか貰えないからです。ところが、この“毎月決まったお金しかもらえない”ということが、実は資産を作る上では最大のメリットと言えるのです。一体どうしてなのでしょう。

世の中で“お金持ち”とか“資産家”といわれている人たちといえば、医師、オーナー、タレント、というイメージですが、彼らに共通して言えることは、収入が必ずしも一定ではないことです。オーナーなら事業が当たれば、タレントなら有名になれば、大きな収入が入りますが、下手をすれば一銭も入ってこないこともありえます。つまり収入が安定していないのです。一方、支出については、特別に贅沢な生活をしていなければ、ある程度読めるはずです。しかし、仕事柄、生活はどうしても派手になりがち。商売や事業をしていると、設備投資や商品の仕入などの機会があれば、資金を出さざるを得ません。つまり不安定な収入と意図せざる支出に悩まされ続けることになります。

ところが、サラリーマンの場合は、これらの人たちに比べれば、収入はずっと安定しています。支出にしても、大きな病気にでもならない限り、意図せざる出費というのはあまりありません。「入」と「出」がきちんと読めるのがサラリーマンなのです。ということは、やり方さえ間違わなければ、サラリーマンの方がずっと計画的に資産形成ができ、お金持ちになれるはずです。私も証券会社で長年仕事をしてきましたが、サラリーマンでも大きな資産をこしらえた人を見てきました。

今から20年ぐらい前にアメリカで発売され、日本でもベストセラーになった「となりの億万長者」(原題:Millionaire next door)という本があります。この本は、よくありがちな「お金持ちになるためのノウハウ本」ではありません。全米で金融純資産を百万ドル以上保有している人たちの思考や行動、生活パターンを克明に記録したものです。この本によれば、億万長者というのはフェラーリに乗って高級スーツを着、毎夜パーティーに出かけるような人たちではないと言います。一見するととても億万長者には見えないようなごく普通の人が、意外と巨額の財産を持っていたりする、まさに“となりに住んでいる”億万長者なのだそうです。

※写真はイメージです。

私は40年近くにわたる証券マンとしての仕事の中で、驚くようなお金持ちの人もたくさん見てきました。親の財産を引き継いだ資産を持っている人もいますが、自分一代で資産を築いた人の方が多かったのは事実です。そんな人たちの中に、ごく普通のサラリーマンで何億円もの資産を持っている人が結構いたのです。まさに私自身が経験してきたことが「となりの億万長者」に、ほぼ同じように書かれてあったことに驚きを覚えました。

この「となりの億万長者」に書いてあった、お金持ちに共通するたった一つのこと、それは「収入以上にはお金を使わない」という、ただそれだけのことだったのです。何ともあっけないというか、あまりにも当たり前すぎて拍子抜けしそうな結論。でも、実際に、それはその通りなのです。ところが多くの人がこの当たり前のことを実践できていないということもまた事実です。

サラリーマンというのは、一度ルールを決めてしまえば「収入以上にお金は使わない」ということを確実に実践することができます。それは給与天引という方法です。一定額をあらかじめ引いておくことで、仮に残りのお金を全部使ってしまったとしても、天引き分だけは確実に残るからです。つまり、給与天引という習慣をきちんと身に付けたサラリーマンが、お金持ちへの道の最短距離にいるということなのです。

他にも給与天引には有利な面がたくさんありますので、そのあたりはまた次回に詳しくお話しましょう。

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