コリドラス・ジュリー<熱帯魚解説>

コリドラス
コリドラス種類解説(熱帯魚)

どうも、ほにゃらら sp.です。

今回ご紹介するのはコリドラス・ジュリー。

ジュリーといえばスポット模様が特徴の、古くから人気のコリドラスですね。
親しみやすい種でありながら、実は深~い謎に包まれた種でもあったりします。

今回はそんなジュリーの魅力について迫ってみましょう。
ポピュラーで知名度の高い種ですが、とんでもなく奥深いコリドラスだと思います。

コリドラス・ジュリーとは

生物学的情報
名前コリドラス・ジュリー
学名Corydoras julii
分類ナマズ目カリクティス科コリドラス亜科
食性雑食
ノーズショートノーズ
トリリネアータス/ジュリー系
分布ブラジル、ペルー、コロンビア
飼育要件
飼育しやすさ★★★★★
とても容易
入手しやすさ★★★☆☆
ふつう
混泳しやすさ★★★★★
とても混泳向き
最大体長5cm程度
適正水温22~27℃
pH生存可能:5.5~8.0
適正範囲:6.0~7.0
※あまり気にしなくてOK
備考特になし
標準的なコリドラスです。

コリドラス・ジュリーはブラジル、ペルー、コロンビア原産の広範囲に分布するコリドラスです。

白地に黒のシンプルなドット柄を持ち、古くからの人気種として知られます。
一方でその流通量と知名度の割に、実は多くの謎を秘めた種であることでも知られています。
今回紹介するのは正確には「ジュリーと呼ばれる種」というのが適切かもしれません。

ジュリーの名で別種となる「コリドラス・トリリネアータス」が流通していることも多いです。

バリエーションに関してはただでさえ混迷を極めている中、ジュリーの名で流通する個体はトリリネアータスであることも珍しくないため、本種の流通に関しては混沌とした状況が生まれています。

コリドラス・トリリネアータス
ジュリーの名で流通することも多いです。

初心者向けのイメージがあるものの、深掘りするとマニアも唸る、大変奥深いコリドラスです。

(本当の意味での)ジュリーのブリード個体は基本的に流通していません。
ブリード個体での販売があれば、その個体は高確率でトリリネアータスでしょう。

分類に関しては謎の多いジュリーですが、飼育に関しては特段複雑な点はありません。
熱帯魚飼育に必要とされる基本的な設備を整えていれば、それでOKです!

注意点があるにしても、底砂に砂粒の細かいものを採用するぐらい。

目が細かい砂を使おう
田砂

コリドラスと田砂は定番の組み合わせです。

田砂の砂粒はほどよく細かいうえに角が丸く、コリドラスのデリケートな髭を傷つけない点が評価されています。

他にも、“ほどよく細かく、粒の角が丸い”砂であればコリドラスと好相性です。相性の良い組み合わせを探してみましょう。

コリドラサンド
ナチュラルネグロサンド
No.111 Spring Water
アマゾン川の白砂

一応、大磯砂でも飼育は可能です。

飼育難易度は、コリドラスの中でも標準的といえ、特に難しい要素はありません。
はじめての方でも簡単に飼育ができることでしょう。

ジュリーは古くから知られたポピュラーなコリドラスですが、深い謎に包まれた種でもあります。

少なくとも、白地に黒いスポットを持つコリドラスが南米の広域に分布しており、それぞれが“ジュリー”と呼ばれて流通していることに関しては間違いありません。

まず、“Corydoras julii”その種として記載されているのはブラジルのパルナイーバ川産のものが該当します。

したがって真の意味で本物と呼べるのは、パルナイーバ産の個体のみです。
しかし、その入荷は極めてまれです。
2023年7月現在、チャームへの入荷記録はありません。

一方で、それとよく似た柄のコリドラスが“ジュリー”として、ブラジル、ペルー、コロンビアの各河川からそこそこの頻度で入荷します。

このうち、ベレン産またはプルス産のものが「リアルジュリー」として扱われることが多いようです。
ここでいう”リアル”とは、”本物”というよりは”本物と模様が似ているタイプ”を意味しているようです。

ブラジル産
ジュリー“プルス産”
ペルー産
ジュリー“マドレ・デ・ディオス産”
コロンビア産
ジュリー“コロンビア産”

これらは単なる産地が違うだけなのか、それとも地域変異などで遺伝的な違いがあるのか、あるいはそもそも別種なのか。
詳しいことは、よくわかっていません。

また個体差も大きいので、一個体だけでの判別は困難なものと思われます。

ジュリーはポピュラーで人気のあるコリドラスとして知られますが、真の意味でジュリーを突き詰めようとすると、大変奥の深い種であることが分かります。

結局、本物のジュリーとは?
  • 厳密な意味で本物と呼べるのは、パルナイーバ産の個体のみ。
    ただし入荷は極めて少ないです。
  • ”リアルジュリー”の名で流通するのは主に、
    ・「トリリネアータスでないワイルドのジュリー(らしき個体)」
    ・「パルナイーバ産に模様が似ているジュリー(らしき個体)」
    ・「ベレン便で入荷する、ジュリーの名で来る個体」
    の3通りです。
    この定義はあいまいで、販売店によっても異なるようです。
    チャームではパルナイーバ産のみを本物としています。
  • パルナイーバ産の魚はベレンに集積されるため、本物のジュリーがベレン便で来る可能性はありえます。
    ※ただし集積された時点で産地の特定は困難です。これを追跡する術は、残念ながらありません。

結局のところ、「トリリネアータス似の個体」と「プンクタータス似の個体」がおり、それぞれの比率が異なる中間系、あるいは交雑個体群が、南米の広範囲に存在しているのではないか、と思われます。

何種類かいるタイプの一つとして、ジュリーと定義づけられたものがパルナイーバ産の個体となる という認識でよいでしょう。


バリエーション

ジュリーはさまざまな産地バリエーションが知られています。

コリドラス・ジュリー“ベレン”

ブラジルのベレンから入荷するジュリーです。

細かめのスポットとラインが特徴的で、本物ジュリーに近い模様を持っていると言われるタイプ(=リアルジュリー)の一つです。
頭部のスポットは斑点状になっており、トリリネアータスのようにつながることは少ないようです。

以前は入荷量が多かったものの、近年では少なくなっているようです。

なおベレンはアマゾン川下流やシング―川で採集された魚の集積地となっています。
ベレン産と記載があっても、あくまでも集積された場所の記載となり、詳細な河川名ではない可能性がある点には留意しておきましょう。

パルナイーバ川で採れた魚はベレンに集積されることが多いので、もしかするとパルナイーバ産の個体が含まれている可能性はあります。

コリドラス・ジュリー“プルス”

ブラジルのプルス川から入荷するジュリーです。

コロコロとした体形がかわいらしく、こちらもリアルジュリーと呼ばれるタイプの一つです。

比較的入荷が多く、人気のタイプです。
こちらは頭部の斑点がトリリネアータスのようにつながることもあるようです。
このため頭部の模様だけでは、トリリネアータスに見えることもあるでしょう。

プルス産は体側のラインが明瞭な点も特徴です。
トリリネアータスは後半部のラインが直線状になるのに対し、こちらは中央に入るジャンクションライン以外は破線状になることが多いようです。

プルスジュリーはプルスジュリーとして、特徴のある魚という意見もあります。

トリリネアータスとジュリーの中間系のような印象があり、交雑由来なのか、たまたま似ただけなのか、いろいろな想像が楽しめる種だと思います。

プルス川出身のコリドラスは他にも魅力的な種が多いので、それらとの混泳を楽しむのもよいでしょう。

▼こちらも参考

コリドラス・ジュリー“コロンビア”

コロンビアから入荷するジュリーです。
ペルーとの国境沿いに流れるプトゥマヨ川に分布しています。

頭部のスポットや体側のラインが細かく、網目状とまではいかないもののある程度スポットがつながって見られます。

体側のジャンクションが明瞭な点はコロンビア産の特徴です。

プトゥマヨ川はペルーとの国境沿いの川であるため、ペルーからも入荷することがあるようです。

“プトゥマヨ”として入ってくる個体の入荷はまれですが、同一河川内に生息するので、単純に産地が異なるだけでコロンビア産の個体とはほぼ同一集団なのではないか?と推測されます。

ジュリー”プトゥマヨ”

コリドラス・ジュリー“シングー”

ブラジルのシングー川から入荷するジュリーです。

スポットが細かくも部分部分でつながっており、“ベレン”と“プルス”の中間形のような印象があります。

コリドラス・ジュリー“アクレ”

ブラジルのアクレ川から入荷するジュリーです。

体側のラインが整っており美しく、体側のジャンクションが明瞭です。
アクレボンディと呼ばれることもあります。

このタイプのようにジャンクションラインが明瞭で、体型がコロコロしたタイプのコリドラスは「○○ボンディ」と呼ばれることもあります。

コリドラス・ジュリー“グアマ”

ブラジルのグアマ川から入荷するジュリーです。

入荷例が極端に少なく、詳細については不明点の多い個体です。
地理的にはベレンの近くに位置する河川に分布しています。

コリドラス・ジュリー“マドレ・デ・ディオス”

ペルーから入荷するジュリーです。
ネットワーク模様が細かく、体側のジャンクションラインが明瞭な点が特徴です。

トリリネアータスのワイルド個体はこのタイプと同じくペルーから主に入荷されますが、体に入るラインはこちらの方が全体的に細く、繊細な傾向があります。

またトリリネアータスとは異なり、入荷は極めてまれです。

コリドラス・ジュリー“マナウス”

ブラジル、マナウスから入荷するジュリーです。

記載タイプであるパルナイーバ産のものに非常によく似た特徴を持つことが知られています。

マナウスもベレン同様、熱帯魚の集積地です。
このエリアはアマゾン川中流域やネグロ川で採集された魚の集積地として知られています。

ベレン同様の理由で、詳細な河川名ではない可能性があることに留意しておきましょう。

コリドラス・ジュリー“ロンドニア”

ブラジル、ロンドニア州から入荷するジュリーです。

一般的なジュリーに比べ体高が発達する傾向があり、ころころとした体形で愛らしさのある産地です。

ジュリーの愛好家の間では特に愛くるしいタイプとして知られ、「ロンドニアジュリー」の愛称もよく知られています。

人気は高いタイプですが、入荷はまれです。


ジュリー似のコリドラス

コリドラス・トリリネアータス

学名:Corydoras trilineatus

コリドラス・トリリネアータスはコロンビア、ブラジル、ペルー原産のコリドラスです。
白黒の迷路状の柄が古くから人気で、流通量も多く丈夫で飼育しやすい種類です。

古くからジュリーとは混同されて扱われることも多く、「トリリネジュリー」の名でも知られています。
「偽ジュリー」と呼ばれることもありますが、本来は「トリリネアータス」というきちんとした名があるのでそちらで呼ぶべきでしょう。

学名のtri-lineatusは「3本の線」を意味しています。
おそらくジャンクションラインとその上下がつながって線状に見えることから、そう名付けられたのかもしれません。

ブリード個体が大量に流通していますが、ワイルド個体も時折入荷が見られます。
ジュリーと並んで人気で需要があることもあり、総じて入手しやすい種類といえるでしょう。

ジュリーとトリリネアータスの違い

どちらも白黒の柄が特徴的なコリドラスですが、特にジャンクションラインと頭部に違いが現れます。

頭部の違い

トリリネアータスはドットがつながって迷路状柄となるのに対し、典型的なジュリーはつながらずにそのままドット柄になっています。

ジュリー 頭部
トリリネアータス 頭部

体側の模様もよく見るとトリリネアータスではつながって迷路状の模様を形成するのに対し、ジュリーはつながっておらずドット状になる傾向があります。

コロンビア産
アクレ産

ただし、ジュリーであっても産地によってはつながって迷路状になるものもいます。

その場合でも、トリリネアータスに比べると模様は細く、繊細な傾向があります。

ジャンクションラインの違い

トリリネアータスは1本くっきりと太い黒線が入るのに対し、典型的なジュリーは細く破線状に入ることが多いです。

ジュリーの
ジャンクションライン
トリリネアータスの
ジャンクションライン

ただし、ジュリーでも一部の産地ではつながってくっきりとした黒線が入るものもいます。

コロンビア産
ペルー産

ペルー、コロンビア産の個体では、特にこのような傾向が見られやすいようです。

産地のバリエーションにより確実ではない

ジュリーには産地ごとに多様なバリエーションが知られています。
典型的な個体であればここまでの方法で識別できますが、そうでない産地の個体では難しいです。

ここまで紹介した通り迷路状になるタイプ、ジャンクションラインがくっきり表れるタイプもおり、この点でなかなか判断が難しいところです。

コリドラス・トリリネアータス

トリリネアータスの場合、

  • 頭部の網目模様が太い
  • ジャンクションラインがはっきりしている
  • ジャンクションライン周辺のラインもくっきりしている

上記3つの特徴を満たすことが多いようです。


有用なアイテム

おすすめの組み合わせは次の通りです。

水槽フィルター底床
30~90cm外掛け、上部、外部タブレット、顆粒(沈下性)

ジュリーの飼育に関しては教科書通りの飼育で十分対応できるため、初心者の方でも飼育しやすいコリドラスです。

コリドラス全般に共通する基本的な性質については、コリドラス共通ページをご覧ください。

コリドラス
「コリドラス」の記事一覧です。

混泳について

ジュリーは非常に混泳向きのコリドラスです。
コリドラス同士であれば基本的に問題ありません。

グッピー、プラティ、テトラ、ラスボラ……。
人気の小型熱帯魚とも混泳相性は抜群です。

混泳相手混泳相性備考
グッピー
グッピーは弱アルカリ性を好みます。
プラティ・卵胎生メダカ
多くの卵胎生メダカは弱アルカリ性を好みます。
カラシン・小型テトラ
コイ・ラスボラ
ローチ・ボーシャ・タニノボリ
ローチ、タニノボリ系は好相性です。
ボーシャ系の攻撃性を持つ種では注意が必要です。
フライングフォックス/アルジイーター
ドワーフシクリッド
アフリカンシクリッド
×
エンゼルフィッシュ
ディスカス
ベタ・グラミー・アナバス
コリドラス
オトシンクルス・ロリカリア
大型種の場合、遊泳域が重なるのでエサの取り合いが発生することがあります。
サイズや飼育数、遊泳スペースを調整すれば問題はありません。
※一般的なオトシンクルスやオトシンネグロは特に問題はありません。
プレコ
大型種の場合、遊泳域が重なるのでエサの取り合いが発生することがあります。
サイズや飼育数、遊泳スペースを調整すれば問題はありません。
※タイガー、ブッシープレコ系はトラブルを起こしにくいでしょう。
※セルフィン、ロイヤルプレコ系は力関係を要観察です。
レインボーフィッシュ
ハゼ・ゴビー
遊泳層がかぶるため、攻撃性の高い種では注意が必要です。
フグ・パファー
×
エビ・ビーシュリンプ
稚エビは食べられる可能性があります。
コリドラス・ジュリーの混泳相性表
※混泳相手の種や性格によっては、例外もあります。
◎・・・混泳に適した組み合わせです。
〇・・・混泳は可能ですが、種や個体の性格によっては工夫が必要な場合もあります。
△・・・混泳は不可能ではありませんが、適しているとは言えません。工夫次第で可能になる場合もあります。
×・・・混泳には適さない組み合わせです。

基本的には、コリドラスに対し攻撃を仕掛ける生体でなければ、ほとんどなんでも混泳可能です。
コリドラスがトラブルの火種になることは少ないですが、コリドラス以外の同居魚同士の相性はよく考えてあげてくださいね。

コリドラス以外の生体間での相性はあるので、留意しましょう。


コリドラス・ジュリー まとめ

ジュリー“ベレン”
ジュリー“プルス”
ジュリー“コロンビア”
ジュリー“マナウス”

コリドラス・ジュリー。

白い地肌に黒いスポットが入り、トリリネアータスと並んで古くから人気のコリドラスです。
飼育に関して特に難しい点もなく、初めての方にもおすすめできる種です。

一方で、深掘りするとマニアも唸る奥深さ。
本種はそのバリエーションの奥深さも魅力であり、さまざまな産地のジュリーを集めてみる、といった楽しみ方もできるでしょう。

また逆に、特定の産地のジュリーだけを集めて繁殖にチャレンジするのも面白いかもしれません。

“本物”や“偽物”といった巷での評価を気にするよりも、気に入った柄や産地の個体を購入することが大事です。

あなただけの、お気に入りのジュリーを探してみてくださいね。

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投稿者
ほにゃらら sp.

福島県産のワイルド個体。
ロカリティの詳細は残念ながら記録がない模様。
アクアリウム歴はだいたい20年くらい。
「同属内で多様なバリエーション」が好き。若干コレクター気味。
つまりコリドラスや、ミクロソリウムが最高。ということですね。

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