「私には才能がない。」と2年で引退されたと聞く上原美佐さんですが、本当にそうだったのでしょうか。この映画を見る限り、驚くほど完成された女優さんに見えました。お相手の宝田明さんの方がよほど新米俳優に見えてしまったのですが気のせいでしょうか。
おそらく同時代の誰よりも美しいと言って過言ではない女優上原美佐さんが、自身の女性としての感性と価値観に生き、女性としての葛藤を母との関係の中でのりこえていく過程をすばらしく演じ切っておられると思いました。
昭和30年代の本当に移り変わりのはやい時代の中で、多くの要素を取り込んでいる映画ですが、中でも重要なのは、母と娘の関係ではないかと個人的には思いました。
倫理観としては母娘で確かな共通点があり、似た者どうしの母と娘として描かれています。母が娘の交際に大きな関心を持つことに対して、娘側が素直に応じる部分、そうでなく反発心をあらわにする部分がうまく描き分けられていると思います。こじれてしまうのかな.. と思ってみていると、最終的には、先鋭的な対立関係を克服する形ではなく、女性としての思いに共感することで、母子が通じ合う落としどころが設けられているように見えました。男性との関係や結婚をめぐって、母娘の関係はとても大切なんだな...ということを再認識させてくれる映画でした。