春の和菓子といって思い浮かべるものといえば、やっぱり桜餅ではないでしょうか。そして、私にとって桜餅は和菓子の中で一番驚かされた印象深い和菓子でもあります。
大学で東京に出てきたとき、初めて目にした"関東風桜餅"。つぶつぶしたもち米の中にあんこがはいった、関西風桜餅で育った私にとって、それは衝撃の出来事でした。くるっと巻かれたもちもちのクレープ生地。これが本当に桜餅!?と何度も目を疑いました。そして、今まで食べてきた桜餅には"道明寺"という見知らぬ名前が。思えば、地域によって異なる食文化に興味を持ち始めたのはこの出来事がきっかけだったかもしれません。
関東風桜餅ができたのは1717年。隅田川沿いの桜の落ち葉を何かに生かせないだろうか、と長命寺の門番だった山本新六が発案したといわれています。その後、”江戸で桜餅が流行っているらしい!”と、大阪の和菓子屋さんが道明寺粉を使って桜餅を作ったのが関西風桜餅の始まりです。
基本的には関東、関西で分けることができますが、島根では関東風桜餅、北海道は関西風桜餅が食べられていて、なんでこの地域で!?という場所も。そのルーツを探るのも和菓子の魅力。まるで謎解きをしているような気分になります。 ちなみに、島根は和菓子好きなお殿様、不昧公が関東風桜餅を作らせたから、北海道では北前船で関西風桜餅が大阪から伝わったからといわれています。
そういえば、よく通っていた和菓子屋さんでは年中桜餅がおいてあったかも…ふとそんな事を思い出し、その和菓子屋さんに行ってみると、やっぱり置いてありました。なぜ年中桜餅を置いているのか聞いてみると、
「桜餅はね、ピンクでかわいらしいでしょ?このお菓子がひとつあるだけで、ショーケースがパッと明るくなるのよ。」
と、おかみさんが教えてくれました。たしかに、街の小さな和菓子屋さんでは、おまんじゅうやおだんごは地味になってしまいがち。桜餅の淡いピンクがショーケースを明るくし、他のおまんじゅうたちをよりいっそう引き立てています。春に限らず、花を咲かせて明るくしてくれる桜餅の存在にちょっと嫉妬してしまいました。
桜餅草餅春も半かな 正岡子規
桜餅=春、というイメージですが、季節を先取りする和菓子では、春がきたと思ったら、すぐに次の季節の和菓子に移り変わってしまいます。あっという間に過ぎ去ってしまう春を、もう少し堪能させて…と願うばかりです。
日本には、その季節の植物を取り入れた「季節湯」という薬湯があります。「ゆず湯」や「菖蒲湯」は有名ですが、他にもひと月ごとに魅力的な季節湯がありました。
4月の季節湯は「さくら湯」。
満開の桜を感じさせるやさしい香りに包まれて、お花見気分でいかがでしょうか♪
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