日本における宿泊施設の種類一覧!ホテル・旅館の経営形態も解説

公開日 (更新日 2024.01.09)

開業準備に役立つ情報を知りたい方

宿泊施設の新規開業を検討しており、宿泊施設の具体的な種類について知りたいと考えている方もいるのではないでしょうか。この記事では、宿泊施設の開業を検討している経営者に向けて、宿泊施設の種類や経営形態などについて解説します。ぜひ、参考にして下さい。

旅館業法で定められている宿泊施設の4つの分類

まずは、旅館業法で定められている宿泊施設の大まかな分類について説明します。

旅館業とは、旅館業法で「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」と定義されているものです。旅館業法において、旅館業の種別は以下の4種類に分類されています。

ホテル営業洋式の構造および設備を主とした宿泊施設の営業
旅館営業和式の構造及び設備を主とした宿泊施設の営業(駅前旅館、温泉旅館、観光旅館、割烹旅館など。民宿も該当する場合あり)
簡易宿泊所営業宿泊するスペースを多数人で共用する構造及び設備を設けてする宿泊施設の営業(ベッドハウス、山小屋、スキー小屋、ユースホステル、カプセルホテルなど)
下宿営業1カ月以上の期間を単位として宿泊させる営業
参考:厚生労働省『旅館業法概要

宿泊施設の具体的な種類と特徴

ここでは、宿泊施設の具体的な種類とそれぞれの特徴について解説します。

ホテル

ホテルとは洋室をメインとする宿泊施設です。ホテルの種類には、「ビジネスホテル」「シティホテル」「リゾートホテル」「カプセルホテル」などがあります。

新型コロナウイルス感染症の影響で一時期大きく落ち込んでいた観光業ですが、2022年の後半から回復の傾向にあります。特に、インバウンド需要は復調の兆しが著しく、2022年10月以降は右肩上がりです。

中でも韓国・台湾などの東アジアや、ベトナム・シンガポールなどの東南アジア、アメリカ・カナダからの訪日外国人旅行者が増加しています。

参考:日本政府観光局『訪日外客数(2022 年 12 月および年間推計値)』

インバウンド増加に向けて、これからはさまざまなホテルのニーズが高まっていくでしょう。以下ではホテルの種類についてそれぞれ解説します。

ビジネスホテル

ビジネスホテルとは、ビジネスパーソンが出張した際に1部屋1~2人で宿泊することを主な目的としたホテルです。

ビジネスホテルは提供サービスを宿泊に特化しており、大規模な温泉や娯楽施設などの設備はなく、基本は素泊まりです。利用者の多くがビジネス利用を主な目的としているため、一般的には駅の近くや繁華街など、交通の便の良い場所で運営します。宿泊料金を抑えるため、アメニティの提供なども最小限です。

また、最近ではビジネス利用だけではなく、観光客やインバウンドの需要も高まっています。

シティホテル

シティホテルは、ビジネスや観光、レジャーなどでさまざまな目的で利用されるホテルです。客室もシングルやツイン、ダブルだけでなく、多人数で利用できるスイートルームなど幅広くそろえています。

シティホテルでは、結婚式などを実施できる宴会場を設けている場合もあります。また、プール、フィットネスジム、レストランなどのアクティビティや飲食施設が充実しているホテルが多い点がシティホテルの特徴です。

シティホテルは快適性や非日常的な利用体験の提供を追求する宿泊施設であり、その点がビジネスホテルと異なります。一般的に、宿泊料金はビジネスホテルよりも高額です。

リゾートホテル

リゾートホテルとは、テーマパークなどの観光地の近くや、海・山・湖・川・高原など自然の中でのアクティビティを楽しむエリアにある洋式のホテルです。リゾートホテルは一般的に、2食付きプランでサービスを提供します。温泉や大浴場、プールやカラオケ、遊技場、複数のレストランやバーなど、幅広い娯楽施設や飲食店を備えているのが一般的です。

リゾートホテルは利用客に非日常的な空間と時間を満喫してもらうことを追求しており、シティホテルにはない、さまざまなサービスを提供することもあります。例えば、観光地とホテル間の送迎、アクティビティの提供や観光案内などです。

カプセルホテル

カプセルホテルとは、寝具や小型テレビなどを備えたカプセル状の寝室を提供するホテルであり、簡易宿泊所に分類されます。

大人1人が横になれる程度の広さのカプセルを2段重ねで室内に複数配置するため、限られたスペースで多人数への宿泊サービスを提供できます。また、「個室カプセルホテル」と呼ばれるものもあり、就寝用のカプセルに加えて机などが配置されています。利用料金が安いこともカプセルホテルの特徴です。

終電を逃した人やライブ・イベント遠征などをした人が臨時の宿として利用することが多いカプセルホテルですが、中には観光客や女性客をターゲットとしたカプセルホテルもあります。また、宿泊サービスに加えて温泉やサウナなどリラクゼーション施設を備えているカプセルホテルも存在します。

旅館

旅館とは、和室や和式の設備を中心とした宿泊施設を意味します。旅館には温泉施設を備えた温泉旅館や観光地にある観光旅館が含まれます。

観光庁のデータによると、ここ25年間で国内のホテル軒数がゆるやかに増加していることに対し、旅館の軒数は年々減少している傾向にあります。また、軒数こそ旅館がホテルよりも多いものの、客室数においてはホテルが旅館を大きく上回っています。

参考:観光庁『観光や宿泊業を取り巻く現状及び課題等について』

旅館の魅力は和式建築や温泉、和食の飲食施設など和の雰囲気を満喫できることであり、インバウンドにも人気です。ただし、最近は様式の便利さに加えて和風の雰囲気も体験できる「和モダン」なホテルも増えてきているため、旅館を開業するなら利用者の利便性向上など、時代の変化への対応が必須となります。

グランピング

グランピングとはワンランク上の利便性やゴージャス感を提供するキャンプ施設をいいます。グランピングは略称であり、正式にはグラマラスキャンピングと呼ばれるものです。グランピングは、近年成長している業界の1つとして注目されています。

グランピングにおいては、キャンプに必要な道具の用意や搬入、料理の準備などを施設側が行うため、利用者は特別な準備をする必要がなく、手軽にキャンプを体験をすることが可能です。高級感のある設備が用意されている場合が多く、通常のキャンプよりも質の高い体験を提供することがグランピングの特徴といえます。

ゲストハウス

ゲストハウスは簡易宿泊所に分類される宿泊施設です。ドミトリーや共有のリビング、キッチン、トイレ、浴室など、他者と共有する設備が設けられている施設もあり、パブリック性・共有性の高さが特徴となっています。

ゲストハウスには年齢や職業、国籍を問わず、さまざまなバックグラウンドを持った人が集まるため、日常では味わえない交流体験ができる点が魅力です。また、寝具の準備や清掃、食事の準備や洗濯などを利用者が自分で行うため、現地での生活体験もできます。料金の安さもゲストハウスを利用するメリットであり、バックパッカーやインバウンドにも人気です。ゲストハウスはホテルと同様、新型コロナウイルス感染症の収束に伴うインバウンド需要を見込めます。

簡易宿泊所にはゲストハウスの他に民宿やユースホステルなどもあります。

宿泊施設の経営形態・タイプ

ホテルや旅館には次の経営形態があります。

  1. 所有直営方式
  2. リース方式
  3. 運営委託方式
  4. フランチャイズ方式

それぞれについて以下で解説します。

所有直営方式

所有直営方式は、ホテルの所有者が自ら経営から運営まで行う経営形態であり、国内では最もオーソドックスです。所有直営方式のホテルを代表するものとしては、プリンスホテルやリーガロイヤルホテル、帝国ホテルなどが挙げられます。個人経営の温泉旅館や民宿、ペンションなどでも所有直営方式を採用しているところがあります。

経営者・運営者が不動産所有者であるため社会的信用が高く、銀行などから融資を受けやすいことが所有直営方式のメリットです。また、利用者や時代のニーズの変化などに対応して重大な意思決定を迅速にできることや、責任の所存が明確であることも所有直営方式の強みです。

一方、土地・建物の購入費用や維持費用などの資金が必要となる点や、経営状態が悪化すれば収入も下がってしまう点は、所有直営方式のデメリットといえます。

リース方式

リース方式とは、ホテルのオーナーが運営会社に建物を貸し出し、運営会社がオーナーにリース料を支払って経営を行う形態です。リース方式を代表するものとしては、東横イン、ホテルルートインなどチェーン展開しているビジネスホテルなどが挙げられます。

リース方式のオーナー側のメリットは、ホテルの収益状況とは無関係に定期的なリース収入を得られることです。また、運営会社にとっては、土地・建物の購入など初期投資のコストを軽減できるため新規開業のハードルを下げられるというメリットがあります。

一方、ホテルの売上が上がったとしても、オーナーが得られるリース料金は変わりません。また、運営会社にとっては、ホテルの収益状況が悪化してもオーナーにリース料金を支払わなければならない点がデメリットです。

運営委託方式

運営委託方式はMC(マネジメント・コントラクト)方式とも呼ばれ、土地と建物を所有するオーナーが別会社にホテル運営の全てを委託する経営形態です。オーナーは運営会社に委託料金を支払い、委託された運営会社がホテル運営を実行します。運営委託方式の代表例としてはニッコー・ホテルズ・インターナショナル、星野リゾート、オークラホテルズ&リゾーツ、ホテルJALシティなどが挙げられます。

運営委託方式のオーナー側のメリットは、運営ノウハウを持つ運営会社に任せることで経営負担を軽減できることです。また、運営会社にとっては、土地・建物などの設備投資が不要となるため、低リスクで運営できるというメリットがあります。

ただし、経営に複数の関係者が携わることによって意思決定に時間を要する点は運営委託方式のデメリットです。

フランチャイズ方式

フランチャイズ方式とは、チェーン本部が保有するブランドやノウハウを活用してホテル運営を行う経営形態です。フランチャイズ方式の代表例としては、アパ(APA)ホテルやホテルサンルート、スーパーホテルなどが挙げられます。

フランチャイズのメリットは、チェーン本部のロゴやホテル名などのブランド力や、経営ノウハウ、スタッフの教育制度など、ホテル運営に必要なリソースを利用できる点です。宿泊施設経営の経験が不足しているオーナーでも、フランチャイズ方式なら挑戦しやすくなります。また、チェーンの知名度が高いため、宣伝もしやすい点もメリットです。

一方、フランチャイズ方式では、チェーン本部にロイヤリティを支払う必要があります。

目的に沿った宿泊施設を選択し必要な開業準備をしよう

この記事で解説した通り、宿泊施設にはさまざまな種類があり、それぞれ規模や利用者ニーズ、単価、必要な資金などの特性が異なります。宿泊施設を開業する際は、それぞれの特徴や需要をしっかり把握した上で自社に合った種類の宿泊施設や経営形態を選択し、適切な準備を進める必要があります。
なお、ホテルや旅館の開業準備では、ITシステムの導入やホームページの制作などが必要です。キャディッシュでは、ホテル宿泊予約システム『予約番』や『Webサイト制作サービス』、パートナー様の業務支援システムアプリ『every+1(エブリワン)』などの提供を通して、貴社のホテル開業・運営を全力でバックアップします。開業準備の際は、ぜひお気軽にご相談下さい。