【インタビュー】ハリウッドザコシショウ唯一無二の芸風貫く 単独ライブツアー4都市8~9月

2023年07月21日 16時31分
ハリウッドザコシショウ
ハリウッドザコシショウ

 

※後段に一問一答と、音声があります

 お笑いタレントのハリウッドザコシショウが、8月5日の東京を皮切りに、4都市6公演の単独ライブツアーを開催する。「誇張しすぎた物まね」など海パン一丁で見せる、唯一無二の芸風について話を聞いた。


 来年50歳を迎えるが動きは若々しく、ネタ中に見せる開脚ジャンプの高さに驚かされる。「『誇張』と言っているんだから、普通にジャンプしてもネタとして成立しない。服を着てジャンプしたらあそこまで上がらないと思うので、アドレナリンが出ているんじゃないかな」と語る。


 銅鑼やサイレンなど、ネタに用いる小道具は奇天烈な物ばかり。「受けたいのではなく、お客さんを嫌な気持ちにさせようと思ってやっている」と涼しい顔で「小道具を探すときは、インターネットで『騒音』と検索しています」と笑わせる。

ハリウッドザコシショウ
ハリウッドザコシショウ

 


 多くの後輩に慕われるザコシは、自らの芸風通り「唯一無二になれ。人のまねをしても意味がない」と説く。「マネジャーは今売れている芸人のネタを見て『こういうことをやれ』ってよく言うけれど、同じことをやっても超えるものを作れるわけがない。その人以上に売れようと思ったら、違うことをやるのが一番楽なんですよ」


 1993年にデビューしたザコシは、2016年の「R―1ぐらんぷり」優勝でようやくブレークした苦労人だ。「『しんどかったでしょう』とよく言われたけど、ずっと好きなことをやってたからね」と振り返る。「だから売れてからもスタンスは変わらないし、死ぬまでこういう感じで行きたい。好きなことをやれるのは幸せですよ」と笑顔を見せた。(取材・文=共同通信 近藤誠、撮影=佐藤まりえ)

★公演日程は、8月5日、6日東京・銀座博品館劇場、18日静岡・静岡市清水文化会館、26日大阪・朝日生命ホール、27日福岡・電気ビルみらいホール、9月17日東京・四谷区民ホール(8月の5公演は完売、9月の東京公演は配信有り)

★ここからは、一問一答をお届けします。

目次

① テレビでは見られないザコシ

② ネタ作りは苦しい?

③ 唯一無二になれ

ハリウッドザコシショウ
ハリウッドザコシショウ

 ★ ↑ 記事には盛り込めなかったザコシショウのおまけトーク聴けます

【① テレビでは見られないザコシ】

★記者 去年の追加公演の動画を見せてもらいました。「クレイジーの集大成を見せる」などと宣言していましたが、シショウがライブで見せようとしているものとは何でしょう?

●ハリウッドザコシショウ(以下シショウ) まあテレビはコンプラがありますから。テレビでは見られないようなことですかねえ。テレビよりいいものを見せないといけないなという思いはありますね。せっかくお金を払ってきてもらうんですから、来て良かったなと思っていただける方がいい。その一心ですね。

★記者 ライブでは、あまりテレビではやらない時事ネタ物まねが多いなと、意外な印象を受けました。

●シショウ コンプラがあるから、やるなと言われるんですよ。受けるからやりたいんですけど。ほぼほぼダメなんで、思っているより結構使えないことが多いです。

★記者 追加公演の時は、香川照之や巨人の坂本勇人選手を取り上げていました。当時はすごく好きだったのでしょうか?

●シショウ 特別に好きということではないんです。それは漫才師と同じ感覚で、キャッチーなネタを言えばたやすく笑いが取れるので。その場の空気をつかむためですよね。そうした方が早く燃え上がるので。

 
★記者 「誇張しすぎたごぼうの党」の物まねで見せた開脚ジャンプの高さと足の開きに驚きました。息を切らしつつも動きはキレキレ。来年50歳を迎えますが、動きへのこだわりや体力面への不安などがあれば教えてください。

●シショウ “誇張”って言ってんのに、普通にジャンプして普通に花束を投げ捨てていたら成立しないんですよ。別にあんなに高くジャンプしたくてやってるわけじゃなくて。服を着てジャンプしてもあそこまで上がらない気がするんですね。アドレナリンが出ているんじゃないですかね。

ハリウッドザコシショウ
ハリウッドザコシショウ

 

★記者 後輩芸人のチャーミングじろうちゃんから、シショウは鍛えていると聞きました。

●シショウ 鍛えてないですよ全然。あいつはウソばっかりつくから。信じない方がいいですよ。僕を描いた自伝マンガもうそまみれなんです。

★記者 動きや体力の話に戻らせてもらうと、今のところ不安はないという感じですか。

●シショウ そんなこともないですよ。毎回毎回体は痛いし。整体も行くし、湿布とかも貼りますし。

★記者 ネタ中で使う銅鑼やサイレンといったグッズはどこから見つけてくるのですか?
●シショウ あれは受けようと思ってやってるわけじゃなくて、お客さんや来てくれるみんなを嫌な気持ちにさせようと思ってるだけなんです。

★記者 「嫌な気持ちにさせる アイテム」とか検索しても出てこないですよね。

●シショウ そりゃ出てこないです。「騒音」とかです。別にこのコントにこのグッズが必要と思って探しているんじゃなくて、ずっと毎日何か面白い物がないかなって探していますね。バシッとくるのはそうそうないですね。
 手回しのサイレンは手動というところが面白かった。自分で回して音が出るのがばかばかしくて良かった。電気の力を借りるのはちょっと違うなと。

ハリウッドザコシショウ
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【② ネタ作りは苦しい?】目次へ戻る


★記者 売れるためのきっかけとしてネタを一生懸命やって、それで認められてテレビに出るようになると、そちらがメインになってあまりネタをやらなくなる人もいます。一方でシショウは毎日動画を上げるなど、ネタを見せ続けているように見える。どうしてネタをやり続けているのでしょうか?


●シショウ 僕がテレビに呼ばれる時は「何か新ネタないの?」とか聞かれるので、そこは作っていかないと。オーバーなことを言うと、最悪テレビに呼ばれなくなるから。そこは怠けちゃいけないなというところですね。


★記者 ネタを作り続けるのは苦しいことでしょうか?


●シショウ 苦しくないですよ、やっていて楽しいんで。僕は1年に1回なんでね。売れていない人が月に1回新ネタを作れと言われるよりは全然楽だと思いますけどね。やりたいことをやれるし。売れてない人は売れるネタを作んなきゃならないけど、そこはもうクリアしてるんで。


★記者 他のインタビューを読むと、R―1で優勝したとき、事務所のライブに出なくてよくなったのがうれしいとお話していました。結果を出すまでに毎月ネタを作り続けるのが苦しかったということでしょうか?


●シショウ 事務所ライブのことなんですよ。チケットノルマを取られているからです。ギャラも出ないし全部売ってもゼロ円。ずっと損してました。僕はチケットが売れないから。

ハリウッドザコシショウ
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★記者 ワーキャー等の固定ファンが少なかった?


●シショウ それもそうなんですけど、ファンとやりとりをしたくないんですよ。出待ちとかもしたくないので。出待ちで、ライブが終わってからファンに「ありがとうね」とかあいさつしないと、ファンが離れていく現象が多いんですよ。それってちょっと違うなと。


★記者 ファンにこびるというか?


●シショウ そう。僕は元吉本なので、そういうことを一切してこなかった。友だちみたいな感じになっていて一線を引いてないんですよ。ファンと飯を食いに行ったり、なんだったらデートしたりする人もいるじゃないですか。それでファンが多いっていうのはちょっと違うから。結局、ライブが組織票なんです。


★記者 その人からチケットを買ったら。その人に入れちゃいますもんね。


●シショウ 組織票で上に行っても、実力がなければテレビのオーディションとかをもらったって受かんないから。だから僕は、最初の方はすごく苦労しました。

ハリウッドザコシショウ
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【③ 唯一無二になれ】目次へ戻る


★記者 1993年にデビューして芸歴30周年です。どんな30年でしたか?


●シショウ ずっと売れてなくてやっと売れたって時に「しんどかったでしょう」とよく聞かれたんだけど、そんなしんどくなくて。ずっと好きなことをやってたから。もう死ぬしかないか、なんてことを思うことはなかったですね。バイトはしんどいですけど。だから売れてからもスタンスは変わんなくて。死ぬまでこういう感じで行きたいなって感じですね。好きなことをやれるのは幸せですよ。
 
★記者 シショウは後輩をすごく大事にされているなと感じています。「唯一無二になれ」「人と同じことをしてもも意味がない」とずっと言い続けていますね。


●シショウ それが一番楽なんですね。上のマネジャーは、今売れてる人のネタを見て「こういうことをやれ」って言うんですよ。既にやってる人がいるところで、そこに並ぶことはできても、超えるものを作るのってもっと難しいと思うんです。だからその人以上に売れようと思ったら、違うことをやんないといけないんですよ。
 舞台に出ていないマネジャーは芸人の感覚なんて分かりっこなくて。そのくせ、俺だったらこうネタを作るよみたいなことを言うんです。作れるかもしれないけど、それをどう演じるか、さらにその人の人間性とかをファンは見るわけじゃないですか。全部合わせてやっていかなきゃいけないのに、そんなこと分かるわけがない。
 やりたくないネタをやらされるのは違うし、そうやった方が売れるのかもしれないけど、僕はそうじゃないですね。やりたいことの方が、気持ちが乗るじゃないですか。どの職業でもそうだと思うんですけど、気持ちが乗らない仕事を任されたら憂鬱で仕方ない。じゃあ、やりたくない仕事をやらないで済む努力をした方がいいんじゃないかと、よく言いますね。

★記者 努力のお話が出ましたが、シショウが後輩を評する際に「体たらく」という言葉でよく表現しています。そもそも体たらくというのは、どういう状況を指しているのでしょうか?


●シショウ ソニー(SMA)にいるってことは、もう他の事務所と立ってるスタート地点が違う。吉本の芸人とかよりも、後ろにいるんですよ。吉本は名門で先輩もいっぱいいるから、(テレビに)すぐ呼ばれやすいんですよ。今はそうではなくなってきていますけど、うちの事務所はテレビと通じてなかったんですね。
 そんな状態なのに、吉本よりも怠けていたら勝てる率は低いんすよね。吉本の芸人よりも二倍、三倍用意していかないと絶対に勝てるわけがないのに、それを分かっていないんですよ。
 例えば吉本の芸人と仲良くなって一緒に飲みにいって、一緒の量、なんだったらそれ以上の酒を飲んでね、帰ってすぐ寝る。その繰り返しだったら勝てるわけがない。酒を飲んですぐに眠たくなるんだったら、ちょっと量を控えりゃいいじゃないですか。家に帰って、吉本の芸人に勝つためにどうしたらいいかって、ネタを考えて1日を終えたらいいなと思うんですけど。(後輩の多くは)それを言うても聞かなくて。聞いたのが、バイきんぐと錦鯉ですよ。

ハリウッドザコシショウ
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★記者 吉本にいるときのシショウは、どのような状況でしたか。どのタイミングで考え方や行動に変化があったのでしょう?


●シショウ 吉本の時は僕がそうでしたよ。周りの同期が天才ばっかりだったから。中川家、陣内智則、ケンドーコバヤシ。あいつらは本当に天才だと思っているんですけど、もしかしたら努力派なのかもしれないですね。その姿を見せていないだけで。
 そういう芸人とトークやら大喜利をやった時、自分は同じようなレベルで才能があると思っていたから、何も用意せずに一緒の舞台に立つんです。最初はね、たまたまウケが同じくらいだったんですよ。ところがどんどん回数を重ねるごとに、差が開いてくる。僕の方が下になってくる。
 それがなぜなのかを、吉本をやめるまで分からなかったんですね。たまたまだとか、客のせいとかにして。でもそれは違ったんですよ。結局あいつらは才能があった。コバヤシに関しては雑学王ですから。知らないことが無い状態の天才なので、どんな問いに対しても面白く答える。陣内も人柄がいいのでトークやいじられたり、MCもできるんですよ。
 だけど僕はそうじゃない。あいつらに勝ちたいなと思ったら、あいつらより用意していかんと到底かなわないなと。気付いたのは、吉本をやめてコンビ解散してからです。だいぶ離されていましたね。

★記者 売れたとしても自分のことで精いっぱいの厳しい世界だと思います。それでも後輩たちに目をかけるのはどうしてでしょう?


●シショウ 吉本の時、僕はバッファロー吾郎軍団だったんです。先輩にお世話になってすげー助けられたので。「ザコシさん」って言ってきてくれた後輩には、バッファロー吾郎さんの例にならって「ハリウッド軍団」とかやっています。そういう教えだったからね。

ハリウッドザコシショウ
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(取材・文=共同通信 近藤誠、撮影=佐藤まりえ)

 ★ポッドキャスト「山崎あみ『うるおう』リコメンド」にて、記事には盛り込めなかったザコシショウのおまけトーク聴けます ↓

 

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