よりよい世界に向け、新型コロナウイルスから教訓を得て

世界のリーダーの多くが、新型コロナウイルスの感染拡大は戦争だと言っています。私も同じ認識です。だからこそ、何よりも大切なのは、ウイルスという共通の敵のもと世界が団結することだと思います。国を超えた取り組みは欧州を中心に始まっていて希望を感じます。

新型コロナを“行き過ぎたグローバル化への警鐘”だと捉える動きもあります。しかし、私は、“さらなるグローバル化を進めるための教訓”が得られると考えています。ある地域で感染症が発症したら、国家を超えてすぐに調査ができるよう国際機関に権限を与えるなど、今回のことを学びに世界がさまざまな脅威に立ち向かう仕組みを考え直せると思うのです。科学技術の進歩と共に人が自由に移動をすることは止められないでしょうから、そのほうが現実的かつ建設的です。

ところで、人類は今2つのCの脅威に直面しています。ひとつがコロナ(Coronavirus)、もうひとつがCO2。つまり地球温暖化の問題であり、これも世界全体で取り組まなければとても立ち向かえません。大いなる危機を前に今こそ人類がまとまるとき!…私は新型コロナがそう言っているように思えてなりません。 さらに、SDGsにも定められている「誰一人取り残さない」という意識を、国も私たち一人一人も強く持たねばならないと思います。スラム街で感染拡大が深刻化すれば、富裕層だって影響を受けます。一人だけ助かろうとしても助からない。あなたが助かりたいのなら、みんなを助けることが必要です。誰一人取り残さない世界の構築に真剣に向き合う。私はこれも、新型コロナから得られる教訓だと考えています。

リーダーシップを発揮して社会を動かす女性に

パンデミック時代に自分は何ができるか。そう考える人も多いでしょう。まずは、相田みつをさんの「うばい合えば足らぬ わけ合えばあまる」という言葉を心に刻むことが大切だと思います。皆がものを買い占めれば足りなくなる。でも、譲り合えば騒ぎにはならないのではないでしょうか。団結するためにも、誰一人取り残さないためにも、今、求められる精神だと思います。

そして、女性の皆さんにはぜひリーダーを目指してほしい。主要国の中で効果的な新型コロナ対策を実施しているドイツや台湾、ニュージーランドに共通するのはトップが女性であることです。ごく個人的な見解ですが、女性には物事を中長期的かつ多角的に捉えられる人が多いように思います。日本に女性議員が増えれば、その場凌ぎの経済対策でツケを次世代に回すなどということは起こらないのではないか、とさえ思います。パンデミックを契機に、日本の女性も国のリーダー、そして国連職員など世界を動かすリーダーになることを視野に入れてほしいです。

自営業や企業の管理職でリーダーシップを取る女性もいるでしょう。困難な時代に求められるのは、最悪の事態に備える力も必要ですが、楽観的であること。新型コロナ後の世界は、ネットを活用したビジネスや自然環境をキーワードに産業構造が大きく変わるでしょう。感染拡大に伴い休業などで減収を余儀なくされる人たちは辛いでしょうが、ピンチはチャンスでもあります。新たなニーズを掴み、ビジネスチャンスを見つければ明るい未来があると、前向きに考えてほしいです。あとはパッション(情熱)とコンパッション(思いやり)、そして少々のユーモアがあるリーダーも素敵ですね。

最後に、いわゆる組織のリーダーでなくても、社会を変えられることを忘れないでください。新型コロナの国の対策に不満を感じている? でも、それを所与のものとする必要はないのです。「こういう制度だからそのなかで生きよう」ではなく、自分が幸せになるために社会の仕組みを変える発想や行動を大切にしてほしい。この国は、有権者の投票行動と消費者の消費行動で変わるように制度設計されているのですから(談)。

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PROFILE●村尾信尚(むらお・のぶたか)●関西学院大学教授。大蔵省主計局主計官やNEWS ZERO メーンキャスターを経て現在に至る。マスメディアの出演に加えて、高校生を対象にした「全国どこでも村尾塾」やInstagramなどでも独自にオピニオンを発信中。

※この特集の寄稿、インタビューは、 2020年5月13日までに行われたものです。
25ans(ヴァンサンカン)7月号掲載(2020/5/28発売)