『仮面ライダーフォーゼ』に出演した坂田梨香子さん
仮面ライダーシリーズ最新作『仮面ライダーガッチャード』のオンエアを記念して、ファンが待ちに待ったスペシャルイシューが今年も発売! 10月16日に発売された『週刊プレイボーイ』44号では「歴代仮面ライダーヒロインが大集合!!」と題し、歴代の仮面ライダー女優たちがこぞって登場。水着グラビアの最新撮り下ろしやインタビューなど、それぞれの仮面ライダー愛がほとばしる内容となった。

その特集より歴代ヒロイン5名のインタビューを、週プレNEWSにて再掲載。今回は『仮面ライダーフォーゼ』(2011~2012年)で風城美羽を演じた坂田梨香子さんが登場。風城美羽は主人公・弦太郎とともに怪物・ゾディアーツと戦う"仮面ライダー部"の部長。努力を惜しまず、欲しいものを堂々手に入れるタイプで「学園のクイーン」として全校生徒たちの憧れの眼差しを浴びる。今回の取材では、作品から得たものや当時の心境などを語ってくれた。

──坂田さんは『仮面ライダー』シリーズのオーディションを受けたのは今回が初めてですか?

坂田 いえ、何度か受けています。なんなら『スーパー戦隊』シリーズも受けました。全部合わせて4~5回くらいかな。どうしても出たかったんですけど、ずっと落ちまくってて。『仮面ライダーフォーゼ』のオーディションは、ちょっぴり自信を失った中で受けました。最終審査まで進んだときは、ここまできたら絶対に役を取るぞ!と、めっちゃ気合いが入りました。

──結果、『仮面ライダーフォーゼ』のオーディションに見事、合格しました。

坂田 出演が決まったときは、最高にうれしかったです。事務所のスタッフさんにお祝いの言葉をかけられた時は涙しましたし、自信にもなりました。今でも落ち込んだときは、あのときの自分を思い出し、元気を取り戻すときがありますね。

坂田梨香子さんが演じた風城美羽 ©️石森プロ・東映坂田梨香子さんが演じた風城美羽 ©️石森プロ・東映

──劇中では、フォーゼに変身する後輩の弦太朗を助け、怪人・ゾディアーツと戦う"仮面ライダー部"の部長・美羽を演じました。

坂田 美羽はプライドが高くて気の強い性格の女のコ。私も気が強そうと思われがちですが(笑)実際はそんなことなく、自己主張が苦手なので、最初、自分とは真逆だなと思いました。でも劇中ではプライドの裏で人知れず努力をする姿も描かれる。それを見て、当時モデルとして自分磨きに必死だった私は、美羽に共感するようになっていきました。

──当時の坂田さんは、『Seventeen』のモデルとしても活躍していましたよね。

坂田 そうなんです。美容やファッションに力を注いで、自分をどう出して、どう目立つか、そればかりを考えていました。自分に対する自信と、努力の裏で涙したくやしさという、両方の感情がありました。そういうリアルな感情を演技に乗せて、美羽が秘めている熱い思いを表現しました。

──全48話の中で、特に印象に残っているエピソードを教えてください。

坂田 学園のクイーンを決める「クイーンフェス」が描かれる第4話(『変・幻・暗・躍』)です。ゾディアーツの襲撃を受けた後、コンテストにエントリーしていた美羽がスピーチをするシーンがあるんですけど、傷だらけの姿になりながらも、持ち前のプライドの高さで女王の座を諦めない気持ちを語るんです。その美羽の強さに、私自身も引っ張られました。

あと、同じ第4話で、学園のキングと呼ばれている恋人の隼に「今から会えない?」とメールしようとするシーンも思い出深いです。

──ゾディアーツによってコンテスト中に美羽の裏の顔が全校生徒に暴露され、中間結果発表で最下位になったあとのシーンですよね。あのプライドの高い美羽がヒドく落ち込んでいる姿が印象的でした。

坂田 はい。いますぐ隼のもとへ行きたいけど、誰にも頼りたくない気持ちもある......。美羽らしい葛藤ですよね。その複雑な心情を表現するため、私なりに考えて撮影に臨んでいたのですが、現場ではなかなかOKがもらえず。なぜダメなのかが分からないまま何度もNGを出されたので、思わず泣きそうになったんですよね。でも、泣きそうになったまま演技を続けていたら、ついにOKが出て。追い込まれたことで、新しい表現の引き出しが開いたんだと思います。お芝居の奥深さを実感しました。

ほかには、仮面ライダー部の部室での部員同士の演技も楽しい思い出です。

──部室では部員のみんなが笑顔だったり、コミカルな動きや表情をしたり、楽しそうなシーンが多いですよね。

坂田 監督から「部室のシーンは、自由に演じていい」と言われていたので、お互いに笑わせようとして。実際の学校生活以上に青春してたし、いろんなことを学ばせていただいたなと思います。何しろクランクアップのときは、通っていた学校の卒業式より泣きましたから(笑)。『フォーゼ』は今も同窓会が恋しい、私の"出身校"です。

──『フォーゼ』は、東日本大震災から半年後に放送がスタートしました。放送当時、被災地の子どもたちは仮設住宅で暮らしたり、なかなか学校に行けなかったり、思うように友だちと遊べなかったりしていたと思います。そんな中、学校を舞台に学生たちが活躍する『フォーゼ』に、勇気や希望をもらっていた子どもは多いんじゃないでしょうか。

坂田 『フォーゼ』のテーマは「友情」や「絆」でしたし、大変なときだからこそ、とにかく明るい学園ドラマを作ろう、友情の素晴らしさを伝えようという共通認識がキャストたちにもスタッフさんたちにもありました。そのためにどうしようかと、キャスト同士で話し合いもしました。そこで出した結論は、物語や役柄を本気で楽しんで演じること。そうすればその楽しさが子どもたちにも伝わって、きっと明るい気持ちになってもらえるはずだと思ったんです。

──被災地の子どもたちからの反響は、いかがでしたか?

坂田 放送中も放送後も「元気をくれた」「明るい気持ちになれた」って。あと「ぶつかり合いながらも、友情を大事にする仮面ライダー部の姿に勇気をもらった」と言われた、そういう内容のファンレターももらいました。そんな作品に出演できたことは、私の自信になっていますし、誇りに感じています。オーディションに4回も5回も落ちたのは、『フォーゼ』に出演するためだったのかもしれないな、なんて、そう思うこともあるくらいです。

──坂田さんにとって、美羽はどういう存在ですか?

坂田 相棒みたいな存在かな。自分にない部分を美羽が持っていたり、美羽にない部分を私が持っていたり。だから、私自身が演じているんだけど、美羽っていう相棒がいるような感覚なんです。私は、美羽のことが大好きでした。彼女の存在にすごく救われたし、自分がイメージするかっこいい女性を最大限に演じ切れたのが美羽だったので、彼女には本当に感謝しているんです。

──女優として生きていく上で、坂田さんに大きな影響を与えた役で、作品だったということですね。

坂田 演技経験は少しあったんですけど、あそこまでみっちり1つの役柄、1つの作品に向き合うことは初めてでしたから。1年を通して現場で学んでいくという経験も、本当に大きかったです。『フォーゼ』があったからこそ、女優としての映り方、セリフの言い方、物語や役の背景を深く考えるようになりました。私の女優としての転機になった作品です。

──女優として影響を受けた以外に、『フォーゼ』が今の坂田さんに与えている影響はありますか?

坂田 『フォーゼ』がきっかけで今も応援してくれているファンの方がいますし、当時『フォーゼ』を見ていた子どもたちが芸能の世界で働いていることもあります。だから、ダサいところは見せられないな、かっこいい姿を見せなきゃいけないなという意識がずっとあるんです。その意識によって、自分を甘やかさないようになったし、落ち込んでもクサらずに活動できています。人の気持ちって波があるけど、その波の下のラインが下がりすぎないし、少し完璧主義者にもなりました。

●坂田梨香子(さかた・りかこ)
1993年12月16日生まれ 佐賀県出身 
○雑誌『ラブベリー』『Seventeen』の専属モデルとして活躍し、現在もモデル、女優として活動中。放送中のBSテレ東ドラマ『猫カレ~少年を飼う~』に出演中