菊地美香さん
日本の国民的特撮シリーズとして長きにわたって愛される「スーパー戦隊シリーズ」。

その最新作『王様戦隊キングオージャー』が話題を呼んでいる。去る3月20日に発売された『週刊プレイボーイ14号』は「スーパー戦隊ヒロイン大集合」と題し、歴代のスーパー戦隊ヒロインたちが登場。最新水着グラビアやインタビューを通じて各々のスーパー戦隊シリーズ愛を披露してくれた。

その特集ではすべてを掲載できなかった歴代ヒロイン4名のインタビュー全文を、撮り下ろし写真とともに週プレNEWSで掲載。今回はシリーズ第28作『特捜戦隊デカレンジャー』(2004~05年)で、胡堂小梅/デカピンク役を演じた菊地美香さんが登場。

胡堂小梅は変装と交渉術を得意とする地球署の刑事。時折、危ういミスを犯しかけるが、明るく元気。子供や動物に慕われる愛らしい戦士だ。作品から得たものや当時の心境、そしてスーパー戦隊シリーズの魅力を語る。

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――胡堂小梅/デカピンクを演じた『特捜戦隊デカレンジャー』の放送終了から、18年が経ちます。礼紋茉莉花/デカイエローを演じ、今も2人でカレンダーを制作するなど、親友である木下あゆ美さんとの出会い、また現在の伴侶である、姶良鉄幹/デカブレイク役の吉田友一さんとの出会いなど、その後の菊地さんの人生にも大きな影響を与えた作品だと思います。

菊地 本当にそうですね。『デカレンジャー』とのつきあいは、もう人生の半分以上になりました。今もキャストと交流が続いていたり、本当にすごいなって思います。

――当初、スーパー戦隊シリーズについてはどんな意識でしたか?

菊地 『デカレンジャー』に出演する前に、『くるくるアミー』というアニメで長澤奈央ちゃんと共演していたんですね。当時は2人とも高校生だったんですが、それがきっかけで奈央ちゃんとは友だちになりました。

その奈央ちゃんが『忍風戦隊ハリケンジャー』(2003~04年)にハリケンブルー役に決まるという出来事が、共演中にあったんですよ。その頃から、いつか私もスーパー戦隊シリーズのヒロインになりたいという憧れを持つようになって、憧れがだんだん「絶対になるんだ!」という気持ちに変わっていきました。

菊地美香さんが演じた胡堂小梅 ©東映菊地美香さんが演じた胡堂小梅 ©東映

――オーディション時の状況をブログにも綴られていますが、かなり前のめりで積極的だったんですよね。

菊地 やる気満々で、ピンクの役がやりたいからピンクのセーターを着て参加していました(笑)。

私は背が低いことにコンプレックスがあったし、背の低さで選ばれないんじゃないかなと思って、ヒールがちょっと高い靴を履いていったんですよね。身体テストのときだけ、動きやすいスニーカーにさっと履き替えられるようにしておいて。

でも、合格した理由は背が低いから(笑)。もう1人の女性キャスト・あゆ美ちゃんとは10センチぐらい身長差があって、私と彼女とならキャラクターに明確な違いが生まれると考えたみたいです。

――のちに親友となる菊地さんと木下さんのコンビが生まれた背景には、2人の身長差があったんですね。

菊地 そうなんです(笑)。あゆ美ちゃんとはライバルだったし、仲間だったし、不思議な関係なんですよ。当時は、呼んでもそばに来ないのに、呼ばないのに来るというか、そんな猫みたく気まぐれな性格の木下あゆ美ちゃんみたいになれたらいいなって思っていました。

私は何かと真面目すぎるところがあったから、彼女の自然体な姿に憧れたんですよね。逆に、あゆ美ちゃんは私みたいになりたいと思ってくれていたみたいです。

――木下さんとは、すぐに仲良くなったんですか?

菊地 本当に仲良くなったのは、第17話の「ツインカム・エンジェル」からです。

――ウメコ(小梅のコードネーム)とジャスミン(茉莉花のコードネーム)がメインの回で、2人が力を合わせて活躍するストーリーですよね。

菊地 2人がメインなので、単純に2人で一緒にいる時間が多くて、そこで仲が深まりました。それから15年かけて揺るぎない仲になって、今はものすごい信頼感があります。

あゆ美ちゃんは、私のソウルメイトです。『侍戦隊シンケンジャー』(2009~10年)でシンケンイエローを演じた森田涼花ちゃんが、『ガールズ・イン・トラブル スペース・スグワッド EPISODE ZERO』(2017年リリースのオリジナルビデオ作品)の撮影時に、「おふたりみたいになりたいって思います」って言ってくれたこともありました。

それを聞いて、あゆ美ちゃんと「私たちは、そんな風に言ってもらえるコンビなんだね」って嬉しくなりましたね。

――ウメコは、底抜けに明るくて活発な女のコ。ご自身に近いキャラクターでしたか?

菊地 近くはなかったですね。当時の私は真逆のおとなしいタイプで、ウメコみたいになりたいと必死に明るく演じていく中、どうにか役にたどり着けた感覚が強いです。

とにかく役に対する気持ちの熱さを大事に、ウメコに追いつこうとして、その結果、彼女のキャラクターに吸い寄せられて明るくなれたというか。

――ウメコにたどり着けた手応えを感じられたのは?

菊地 転機になったのは、ウメコがロボット警察犬と一緒に捜査にあたり、四苦八苦しつつも活躍する第5話(「バディ・マーフィー」)です。初めてウメコがメインになった回でひとりのシーンも多く、セリフも多い。

でも私は自信がなくて、「早く撮り終えなきゃ!」と周りに気をつかって焦っていました。そんなときに「お芝居は自分のペースでやっていいんだよ」という言葉をスタッフさんがかけてくれたんです。

その言葉ですっと楽になって、変に考えすぎず、気をつかいすぎず、自然に演じられるようになりました。

――演じていくうちに、自分の性格にも影響がありましたか?

菊地 素の性格も明るくなって、すごくおしゃべりになりました(笑)。ずっと憧れだった、明るく元気な女のコに生まれ変われましたね。

菊地美香さん

――撮影は、1年間の長丁場。大変なことも多かったのでは?

菊地 大変だった記憶はほとんどなくて、毎日が幸せでした。でも、まあよく怒られましたよ(笑)。若手だったし、現場での作法もわからない。カメラのレンズで前髪をいじってたら、「カメラの前でそんなことするな!」って怒鳴られたり。

自分では本気でやってるつもりでも、スタッフさんから見たら物足りなくて、「もっと本気でやれ!」って言われたり。でも落ち込んでなんかいられない。「とにかくやるぞ!」って気持ちでした。

――アクションシーンは大変ではなかったですか?

菊地 最終回で初めてデカピンクの衣装を着てアクションシーンに臨んだときは、すごく大変でした。最強になったつもりで着てみたものの、衣装に着られちゃって歩けないし、動けない。ショックでしたね。

「スーツアクターのJACのみなさんはあんなに軽やかなのに、私は......」って。前の日までは、デカピンクになれる喜びがあったんですけどね。「わー! いっぱい写真撮ろう!」って(笑)。

最終回で初めてデカピンクのスーツを着たことは、最後の最後でJACのみなさんのすごさをあらためて知った経験でもありました。

――菊地さんが感じている『デカレンジャー』の魅力を教えてください。

菊地 デカレンジャーたちはみんな悩みがあって、悲しみを抱えていて、それぞれ得意なことと不得意なことがあります。でも、それをお互いに補い合っている。

スーパー戦隊シリーズに共通した要素ですが、『デカレンジャー』ではそれが特にわかりやすく描かれていました。そのわかりやすさが、魅力の一つだと思います。

――ウメコはミスもするけど純粋なところが仲間に愛され、子供や動物にも好かれている明るい刑事でした。

菊地 何もできない彼女が、何かをやってのけるのも魅力だったと思います。子供たちも親御さんも、ウメコのそんなところに共感してくれたんじゃないでしょうか。

――僕も、私もウメコみたいに必死に頑張れば、何かをやってのけることができるかもしれないと。

菊地 そうですね。何かをやってのけたわけではないですけど、「あんなにお風呂が大嫌いだった子供が、喜んで入浴するようになった」という反響もいただきました。それは、毎回ウメコが楽しそうに入浴するシーンの影響だったみたいです。

――せっかくなので聞きますが、現在の伴侶である、姶良鉄幹/デカブレイク役の吉田友一さんとの出会いも『デカレンジャー』でしたね。

菊地 あははは。そうですね(笑)。『デカレンジャー』で出会ってはいるんですけど、ちゃんと話したのは2017年の『科捜研の女』に出演したときが初めてなんです。

私と夫のクランクアップのタイミングがたまたま一緒で、2人でランチをしたのをきっかけに、その約1年後に結婚しました。『科捜研の女』のプロデューサーが『デカレンジャー』と同じ塚田(英明)さんなのも、ご縁ですよね。塚田さんには、婚姻届の証人にもなっていただきました。

――最後にスーパー戦隊シリーズが長きにわたって愛されている理由は、どこにあると思いますか?

菊地 勧善懲悪、ですかね。スーパー戦隊シリーズは、子供たちに悪いことは悪いと教え、大人には善悪の基準を思い出させる、"世代を問わない教科書"です。これからもきっと、スーパー戦隊シリーズは不滅だと思っています!

――来年は『デカレンジャー』の放送から20周年。10周年の際には、Vシネマ『特捜戦隊デカレンジャー 10YEARS AFTER』が制作されましたので、ファンとしては何かあるのではと期待が高まります。

菊地 「何かやるでしょ!」とは思っています。やらないわけにはいかないですよね!

菊地美香さん

●菊地美香(きくち・みか)
12月16日生まれ 埼玉県出身
○女優のみならず、声優としても数々の作品に出演。現在は移住した高知県を拠点にして、マイペースに活動を続けている。
現在、高知市でオープンしたお弁当屋「十月一日」の冷蔵庫増設に向けたクラウドファンディングを実施中!