「日経WOMAN」が、この1年に各界で最も活躍した働く女性に贈る「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2023」。受賞者の一人が、山本理恵さん。コロナ禍で、小規模から数万人規模まで対応できるオンラインイベントを開催するためのプラットフォームを、日本でいち早く立ち上げました。そんな山本さんのキャリアヒストリーをご紹介します。

株式会社EventHub 代表取締役CEO
山本理恵さん(34歳)
1988年イギリス生まれ。日本で9歳まで過ごした後、アメリカで生活。ブラウン大学経済学部国際関係学部を卒業。マッキンゼー・アンド・カンパニーサンフランシスコ支社などを経て2016年にEventHubを設立。


●受賞理由1
累計参加者数60万人以上のイベントプラットフォームを立ち上げ
コロナ禍で、小規模から数万人規模まで対応できるオンラインイベントを開催するためのプラットフォームを、日本でいち早く立ち上げた。

●受賞理由2
官公庁や企業、公益団体、学会など多ジャンルでBtoBの「出会い」を促進
オンラインイベント未経験の団体を幅広くサポート。出会いの量と質を高めるため、集客から開催後の分析までワンパッケージで提供。

つながりが生まれにくい日本のイベントを商機に

 コロナ禍で緊急事態宣言が出された当初、人が集まるあらゆるイベントが中止を余儀なくされ、担当者たちは途方に暮れた。会場に来てもらうことはできないが、オンラインでの開催は未経験。ノウハウもシステムもない。そんななか、救世主となったのが、山本理恵さんが立ち上げたEventHubだ。参加申し込みの管理や動画配信、参加者の履歴の分析、チャットでの交流など、オンラインイベント運営に必要なツールをワンパッケージで提供。展示会やセミナーなど、大小のイベント開催をサポートしている。

 新型コロナの感染拡大が落ち着くとオンラインとオフラインを組み合わせたハイブリッドなイベント開催へのサービスも提供。これまでの利用企業は350社以上、累計参加者数は60万人に上る。2022年11月には新たに6.5億円の第三者割当増資を得て、これまでの累計資金調達額は10億円を突破。期待のスタートアップ企業として、投資家からも高い評価を受けている。

 山本さんの起業家への意識が芽生えたきっかけは、サンフランシスコで受けた刺激だ。アメリカで大学を卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーのサンフランシスコ支社に就職。「それまで暮らしていた東部とは違い、サンフランシスコは起業家やベンチャー企業であふれ、起業はリスクではなく称賛される文化でした」と振り返る。

 約3年間働いた後、日本に拠点を置くNGOへ出向し、27歳からフリーランスで日本のベンチャー企業などで働く。新卒での就職活動時はアメリカの企業を選んだ山本さんだったが「違う文化にいる人が違う環境に飛び込むとき、生まれるものや気づけるものがある。そこに起業のヒントもある」と考えたからだ。やがて日本と海外ではカンファレンスや展示会の成果が全く異なることに着目。海外のイベントでは事前マッチングを有効に行い、イベント中も有意義な話し合いが行われることが多いが、日本は名刺交換で終わってしまっている。デジタル技術を生かして、もっと人と人、企業同士のつながりを生み出すビジネスができるのではないかと商機を見いだし、EventHubを立ち上げた。

発売中の日経WOMAN1月号では、「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2023」受賞者たちの「逆境を救った言葉」や、審査員が今年の受賞者のキャリアから導き出した「やりたいことで自己実現するための4つのキーワード」のほか、「人生の景色が変わる本&映画&ドラマ」特集にて、受賞者の一部によるおすすめ本も紹介しています