菅野美穂「もう全然だめだ、と放り出したくなったとしても、途中で絶対に糸を切ってはいけない」役作りを通して感じた、人生と刺繍との共通点

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突然、要介護状態となった夫、そして長年連れ添っていたのに“思いもよらない別の顔”を突きつけられたら――。2023年「手塚治虫文化賞」マンガ大賞を受賞した、入江喜和氏『ゆりあ先生の赤い糸』(講談社)がTVドラマ化。“穏やかな幸せ”を味わってきた平凡な主婦・伊沢ゆりあを演じるのは、菅野美穂さん。そんな菅野さんに本作や役への思い、そしてご自身のことまでお話を伺いました。

誰にとっても他人ごとではない問題が描かれている

――『ゆりあ先生の赤い糸』は、夫・吾良(田中哲司)が若い男性と浮気していたことが発覚するところから始まります。夫婦だけでなく介護の問題も通じて、生きる覚悟のようなものが描かれていきますね。

私が演じるゆりあさんは50歳で、共感しやすい世代ではあるのですが、何もかもを自分で引き受けて立ち向かう、武士のような勇ましさと潔さのある人物。夫の彼氏が男性だったというだけでも動揺しそうなのに、意識不明になった夫を自宅で介護しなくちゃいけなくなって、さらには女性の浮気相手もいたかもしれない疑惑も浮上して……そのすべてに真正面から向き合う姿に、私ならとても気持ちが追いつかないだろうと思いながらも、憧れました。

――とにかく、全部を背負ってしまう女性ですよね。

彼女の堂々とした気迫が私には足りていない気がするし、原作の設定に比べると身長も足りないのですが、そのあたりは、演技でどうカバーしていくか思案のしどころですね。ただ、「自分で決めたことを途中で放り出せるかよ」という彼女の意地は、わかるような気もするんです。裏切られたことは悲しいし、次から次へと大変なことばかりが襲い掛かってくるのもしんどい。それでも、夫……吾良(ごろう)さんとこれまで積み重ねてきた時間を思うと簡単には切り捨てられず、薄情にもなりたくない。それは多くの人が共感するところではないでしょうか。

――情のしがらみが生まれることこそが、家族の問題のややこしさですからね……。

「8050問題」というのも最近よく聞きますし、誰にとっても他人ごとではない問題がたくさん描かれていると思います。原作の絵柄はどちらかというとほっこりしているのに、物語はエッジがきいていて、女性がいかに自立して生きるかという話にも繋がり、心揺さぶられる人も多いんじゃないでしょうか。

――鈴鹿央士さん演じる稟久は、吾良が倒れたときホテルに一緒にいた密会相手。松岡茉優さん演じるみちるは、吾良をパパと呼び、隠し子かもしれない娘を連れた女性ですね。

もうそれだけでハードな状況だし、相手が男性であろうと女性であろうと、ショックなことには変わりないですが、同性のみちるさん相手のほうが、自分と比較しやすい分、至らなさを振り返って後悔もしてしまう気がします。長い結婚生活のなかで、自分も相手をぞんざいに扱ってきたのではないか、浮気したのは自分も悪かったからなのではないかと……。自分とは違う甘い雰囲気をまとう女性との浮気は、なおさらショックでしょうし、結果的に強い嫉妬にも繋がってしまうのではないかな、と。

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「途中で絶対に糸を切ってはいけない」刺繡と人生は似ている気がする

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