若葉竜也「連続ドラマは向いていないと思っていた」嘘を嫌う俳優の信念と“意外と普通”な一面

若葉竜也「連続ドラマは向いていないと思っていた」嘘を嫌う俳優の信念と“意外と普通”な一面

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INTERVIEW
2024.4.12

ラブコメ、青春群像劇、シリアスな事件を描く社会派ドラマ・・・、どんな題材であっても、結局のところ視聴者が“ノれる”のは俳優の本気度が伝わる作品だ。その点で期待されているのが、4月15日放送スタートのドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』。主演の杉咲花は10代の頃から数々の映画賞を受賞してきた実力派であることに加えて、これまで彼女と3作も共演してきた若葉竜也がキャストに名を連ねているのが見逃せないポイントだ。

2016年の映画『葛城事件』での鬼気迫る芝居で注目を集め、数々の名作映画で実力を示してきた俳優が、「これまで避けてきた」と語る民放の連続ドラマに出演を決めた理由とは? 俳優としての信念や謎めいた素顔に迫る。

「妥協せずに挑める環境に感謝しています」

若葉 もともと民放の連続ドラマは自分には向いていないと思っていて、出演することを控えていたので、今回も最初に声をかけていただいた段階では迷いがありました。その後、プロデューサーを務める関西テレビ放送の米田孝さんが、大阪から新幹線に乗ってわざわざ僕の家の近所まで会いに来てくださって。そのときの会話を通して『この人のために頑張りたい』と思えたことが、僕にとって大きな動機となりました。

若葉 『アンメット』は基幹病院の脳外科が舞台の物語ですが、難病の患者さんを手術する医師のスゴ腕っぷりに光を当てるような作品ではなくて。患者さんの人生は術後も続いていくし、後遺症と共に歩んでいくことも。そこを丁寧に描きたいと米田さんは言っていて、それを決意したのは、ご自身のお母さんに脳腫瘍が見つかったことも影響しているそうです。俳優として、僕はそういう強い気持ちには反応していきたいと思っています。

若葉 いろいろありますが、普段は連続ドラマを見ないので、自分が見ない媒体に出たいと思わなかったのが正直な気持ちです。せっかくオファーをいただいても、スケジュールの都合でお受けできないケースもありました。そして、連続ドラマはどうしてもスピード優先で制作が進むので、葛藤が生まれる瞬間もあると、俳優仲間から聞いたことがあって。そこが自分のスタンスには合わないだろうなと思っていました。

若葉 そうですね。僕がこれまで携わってきた多くの映画と同じように、台本の準備段階から打ち合わせに参加させてもらっています。監督やプロデューサーと一緒に、本当に大切なこと、自分たちが表現するべきことを議論して、第一話の数ページ分の台本がカタチになるまでにたくさんの時間を費やしました。

今日の取材(2月中旬)の時点で撮影が始まっていないのですが、一般的なドラマだったら数話分の撮影が終わっている時期だとか。妥協せずに挑める環境を作っていただいていることに感謝しつつ、少しだけ不安も感じています。『ちゃんと放送日に間に合うかな?』って。

若葉 人の命、つまり患者さんの人生に関わる医師の仕事を続けるのは、やっぱり並大抵のことじゃないと思いました。僕の同級生に外科医がいて、彼にも話を聞いてみたのですが、まず外科手術という行為は絶対的に技術力が問われるものだと言っていました。手術前の焦りや不安、患者さんを助けたいという私情が入り込むことはあり得なくて、ひたすら冷静に目の前の問題に対応する。

医師としての価値観や信念が問われるのは、むしろ手術が成功した後。患者さんの未来を考える時間に、いちばん精神的なエネルギーを使うそうです。原作漫画にも、人間がうごめく様子がしっかりと描かれている。だからこそ、敏腕外科医が技術を自慢するだけで終わるドラマにはしたくないですね。

「面白くなかったものを面白かった」とは言いたくない

若葉 少ないというか皆無ですよね(笑)。そもそもバラエティ番組の出演に興味がないし、自分には向いていないと思っています。僕は自分が思っていることを正直に喋りたいし、美味しくなかったものを「美味しかった」とか、面白くなかったものを「面白かった」とは言いたくないんですよね。

カメラの前で平気で嘘をつけるようになって、それに慣れれば慣れるほど、本当に感動を伝えたい瞬間の言動にも嘘が混じるようになってしまうので。それは絶対にしたくないと思っているから、僕がバラエティ番組に出ても誰も得をしないんですよ。

番組が求めることに応えられる気がしません。いずれ出ることがあるとしても嘘をつくことはないので安心してください(笑)。もし何かを強要されるのであれば即座に帰宅します。


若葉 もう30代半ばなので、好きなものを好きなように着て「これが俺だぜ」みたいな演出をしたい願望はありません。そこで自己主張するよりも、余計な情報を削ぎ落とした服で人前に立っているほうがシンプルでいいですよね。そういう意味でも、黒を選ぶことが多いですね。普段は動きやすさを重視しますが、今日みたいな取材の日は普通に襟付きのシャツを着ますし。普通ですよ。

若葉 (笑)胸を張って言えるようなことはしていないですね。ソファーでゴロゴロしながらYouTubeでゲーム実況の動画を見て、気づいたら22時になっていた……みたいな感じで。一人暮らしですが5人がけのソファを使っているので、立ち上がる気力が湧かないくらい快適なんですよ。

「『意外によく笑うよね』と言われます」


若葉 「意外によく笑うよね」って言われます。何でもかんでも斜に構えてムスッとしているタイプではありません。見た目や喋り方の印象で「尖っている」と思われがちですが、敵を作りたいわけじゃないし。本当に普通の人間だと思います。


長い付き合いなので、甘えちゃってる部分があるのかも。たまに用事があって僕のほうからマネージャーに電話をするとすごく焦っています。

若葉 マメに連絡する感じではないかな。回りくどいアプローチもしないし、ストレートに好意を示すタイプだと思います。ただ、駆け引きができないからこそ、どうやら相手の気持ちに鈍感なところがあるみたいで、乙女心を汲み取れなくて怒られた経験が何度もあります。それで落ち込んだり悩むこともありますし、本当に、ごく普通です。

若葉 勧善懲悪を徹底する分かりやすいヒーローではないですよね。いつも疲れているように見えるのが、僕自身との共通点だと思います(笑)。もちろん僕の中では彼の魅力的な部分が見えていますが、それを言語化して提示するのは避けたいですね。

視聴者の方々の視野を狭めてしまう可能性もあるので。三瓶に限らず、作品全体を通して自由な観点で「あ、ここいいな」って思うところを探していただけたら嬉しいです。

役者がよく言う「役作り」とかもやったことないですよ。現場で感じたことに素直に反応するだけです。むしろキャラクター化してこんな役だからこんな表現をしよう!って感覚すら邪魔ですね。ただ、外科医なので手術のシーンもあり、そこに向けてクランクインの前から主演の杉咲花さんと一緒に縫合の練習をしています。

数ヶ月の努力でサマになるわけではないですが、医療従事者の方々が見ても違和感がないように、最大限の注意を払いながら撮影に挑みたいと思っています。

PROFILE

1989年6月10日生まれ。東京都出身。2016年、映画『葛城事件』で第8回 TAMA映画賞・最優秀新進男優賞を受賞。映画『愛がなんだ』や『街の上で』などでさらに評価を高め、2024年主演映画「ペナルティループ」が公開中。

INFORMATION

『アンメット ある脳外科医の日記』

原作は元・脳外科医の原作者が描く同名漫画。主人公の川内ミヤビ(杉咲花)は将来を嘱望された脳外科医だったが、1年半前、不慮の事故で脳を損傷。過去2年間の記憶がすっぽり抜け落ちているだけでなく、新しい記憶も1日以上留めておくことができないという重い記憶障害を患っている。看護師の補助的な仕事はできるが、医療行為は一切できない。そんな中、ミヤビは、変り者の脳外科医・三瓶友治(若葉竜也)との出会いをきっかけに、再び脳外科医としての道を歩むことに。悩み・葛藤しながらも、医師として懸命に患者を救っていく。2024年4月15日より、毎週月曜22:00放送スタート。


Photo:Motohiko Hasui  Styling:Toshio Takeda(MILD) Har&Make-up:Fujiu Jimi  Interview:Satoshi Asahara

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