山口智子「うちの夫婦は旅をしてもほとんど別行動。でも唯一スペインだけは、夫婦で感動を共有できる」水原希子と語る“旅に出る理由”

山口智子「うちの夫婦は旅をしてもほとんど別行動。でも唯一スペインだけは、夫婦で感動を共有できる」水原希子と語る“旅に出る理由”

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INTERVIEW
2022.12.23

山口智子×水原希子「美しく再生するために、細胞の“ときめき”だけを信じて」vol.2

それは、6年ぶりの再会だった。
ドラマの共演がきっかけで出会い、魂に近い場所で、強烈に惹かれあった2人。
2016年に雑誌で対談したときは、周囲にいるスタッフがみんな笑顔になるほど、踊ったり抱き合ったりくっついたりして、自由にコミュニケーションを取っていた。「今を思い切り楽しむ」2人の姿がそこにあった。

そうして今年、コロナ禍に2人は再会した。撮影中、2人の共振する感情はスタジオの空気までを温め、揺らし、まるで天からの祝福を浴びるように、喜び溢れるインプロビゼーション(即興)を繰り広げた。

山口さんは、「この逆境の時代をサバイブするには、本当に大切なものは何かを、自分の心に問い直すこと」と言った。例えば音楽が流れたら、ときめく心に忠実に踊り出せる希子さんは、生きる喜びを素直に表現できる人間。そこに惹かれるし尊敬すると。

大自然と繋がる細胞の声に耳を傾けること。宇宙のサイクルの大転換の波に乗り、命の輝きを再生してゆくこと――。

美しい音楽に惹かれ世界を旅し、遠く離れていても共振する2人が、それぞれの“生命力の源”を語り尽くす。

自分の人生を考えたとき、 時間は無限じゃない。もう自分の本当に好きなことしかやりたくないって思ったんです――水原希子

■希子 お会いするたびに智子さんには勇気をもらいます。自分の信じることをカタチにしていくのって、時間も労力も使うけれど、周りにどう思われるかは関係なく、信念のままに突き進む智子さんは、本当に格好いいと思う。

■智子 自分の感覚を信じるって、覚悟も勇気も必要だけど、まず自分自身が心から楽しんで、誰よりもときめいている限り、共に歩むみんなとハッピーパワーを共有していける。自分が本当に好きなものは何かを問いながら進んでいくと、笑顔へとガンガン巻き込んでいけるよ、世界をね(笑)。

プロジェクトのタイトルを「LISTEN.」にしたのも、自分の内なる声に耳を傾けることを大事にしたかったから。私は希子こそ、閉塞しがちな日本に風穴を開けて、みんなを広大な地球と結んでくれると信じてる!

■希子 え~嬉しい! そんなスケールの大きな言葉を(照)。

■智子 私にとって希子は、友であり“同志”。頻繁に会うわけではないけれど、遠く離れていても互いの存在を感じながら、ちゃんと生きよう!って思える。共に人生を歩んでいる感覚。

■希子 私も、何か人生で新しい局面にぶつかったとき、「この時智子さんだったらどうするかな」って考えます。智子さんは、30歳ごろから世界への旅を始めましたよね。

■智子 うん、30代からずっと旅から旅で、移動民族的な毎日だった(笑)。

■希子 本当に自分の好きなことに没頭されたじゃないですか。私も今31なので、すっごいわかる。自分の人生を考えたときに、時間は無限じゃないから、もう自分の本当に好きなことしかやりたくないって思ったんです。

■智子 思えば30歳頃の自分は、むちゃくちゃ不安の塊だった。世界のことをあまりに何も知らない自分がもどかしくて、自分の人生の時間の使い方というものを真剣に考えた。猛烈にいろいろなことを学びたい欲求が、心の底からむくむくと湧き上がってきて、旅立たずにはいられなかった。

■希子 でも、自分に正直になって決断して行動に移すのって、一生やれない人もいると思うんですよ。私だって、色んな情報や世間の目に見えないルールみたいなものに圧倒されて、自分の考えてることが分からなくなった時期もありました。

とくに、若い頃、思いっきり恋愛していた私は(笑)、それを冷たい目で見られたことに傷ついていた。でも、6年前に智子さんに出会ったときに、「このままでいいんだ」「好きなことをやり続けよう」って思えたんです。私が私の本能に忠実に生きることで、私と接点を持った人たちに、ポジティブなエネルギーを与えられたら、それだけで私は幸せだなって。

■智子 人生において、時間をちゃんとかけることの威力は絶大だと思う。焦ってとりあえずの答えを出すことに躍起になる必要はない。たっぷり時間をかけて、感動を積み重ねて築く自分ならではの人生は、誰にも真似できない。

■希子 以前、プライベートでスペインに行ったときに、「地球って本当に尊いんだな」と思ったことがあって。すごく些細なことなんですが、外でご飯を食べている集団が、誰一人として携帯を見てなかったんです。誰もがその日にあったことを、相手の目を見ながら、楽しそうにうわーって話してた。

これが生きてること、これがコミュニケーションなんだと感じたし、それはもう会話じゃなくて、エネルギーの交換みたいなレベルでした(笑)。その時にも、智子さんのことを思い出しました。自分も感動を共有できる人たちと一緒にモノづくりをしたり、楽しんだりしたいな。その時その時のスパークみたいなものを大事にしたいなって。

■智子 スペインに行くといつも、「人生の味わい方」を教えてもらう。人生を「食」に例えるなら、時をただ咀嚼して消化するのではなくて、味や香りや喉ごし、人生の美味をちゃんと「味わう」とことを思い出させてくれる。

■希子 一人旅だったこともよかったんです。誰にも気兼ねなくその国の空気を味わい尽くせたから。私も智子さんのように、たとえ結婚してもプラプラと一人旅に出てしまいそう(笑)。

■智子 うちの夫婦は互いの趣味が真逆で、旅をしてもほとんど別行動(笑)。でも唯一スペインの旅だけは、感動を共有できる。バルで美味しい小皿料理やお酒を囲んで、カタコトの言葉で人々と心を交わしあう温かい時間。人生を本気で楽しもうとする彼らの素直な熱意に、夫婦共々いつも刺激をもらって帰ってくる。

山口智子

1964年生まれ。1988年、NHK連続テレビ小説「純ちゃんの応援歌」で俳優デビュー。「タブル·キッチン」「29歳のクリスマス」「王様のレストラン」「ロングバケーション」など、代表作多数。2000年代より、アートのドキュメンタリーや、伝統工芸の職人の取材を通して著書発刊。

世界の音楽映像ライブラリー「LISTEN.」

水原希子

1990年生まれ。アメリカ合衆国テキサス州ダラス生まれ。女優、モデル、デザイナーとしてマルチに活躍。日本語、英語、韓国語を話すトライリンガルであり、ソーシャルメディアの中でも圧倒的な人気を誇る。女優としては、2009年「ノルウェイの森」でスクリーンデビュー。’21年に公開された映画「あの子は貴族」に門脇麦とダブル主演し、’22年、高崎映画祭にて最優秀助演女優賞を受賞した

Photo/Akinori Ito(aosora) Hair/hiro TSUKUI(Perle Management/Yamaguchi), Waka Adachi(Mizuhara) Make-up/Risako Matsushita(Perle Management/Yamaguchi), Tamayo Yamamoto(Mizuhara) Styling/Masako Ogura(Mizuhara) Text/Yoko Kikuchi 

●再構成with online編集部 ●商品情報はwith2022年5月号発売時点のものです。

※本記事は、これまで「with online」にて公開していた記事の再掲載です。年齢、肩書きは公開時のままです。また、作品情報に関しては、上映・放映・上演が終わっている可能性があります。

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