長澤まさみ「年齢を重ねるにつれて、『まあ、いいか』と思えるように」大人になって変化したこと

長澤まさみ「年齢を重ねるにつれて、『まあ、いいか』と思えるように」大人になって変化したこと

#ドラマインタビュー
#長澤まさみ
INTERVIEW
2023.3.24

二十数年というキャリアを積み重ね、輝かしい評価を何度も手にしてきた。ちょうど30代の折返しを迎えている長澤まさみさんは、今もなお挑戦を止めない。一人の働く女性として軸としているもの、その心のあり方とは――。

淡々と頑張るほうが自分の性格的には向いている

――長澤さんが携わる作品は、年齢を重ねるごとに多岐にわたっているような印象を受けます。今、仕事をする上で一番大切な“軸”としているものは?

淡々とやる、ことでしょうか。例えば、今回のコントドラマ『松尾スズキと30分強の女優』にしても、現場の空気に飲まれて楽しくなってしまうと、後からちょっと落ち込むことが多いんです。淡々と頑張るほうが自分の性格的には向いていて、ちょっと素っ気なく感じられてしまうかもしれないけど、いい芝居ができた方がみんなのためになる。以前は、楽しいと思っているのに、「楽しくなさそう」ってよく言われてました(笑)。でも、自分にちゃんと集中して、作品がいいものになることの方が私は幸せ。だから、現場のムードや欲に負けないように、“淡々と”というのが私の軸ですね。

――嫌な気持ちにさせないけれど、かといって無理して“いい人”になろうとしない、と。

もちろん最低限の挨拶と礼儀はしっかりした上で、ですけどね。「おはようごさいます」「お疲れさまです」といった、挨拶の言葉って本当に気持ちがいいものだと思っていて、それさえちゃんと言えたなら、あとはもう自分の仕事に注力する。リラックスしてお芝居に向き合うために、大切なことだと思います。

同じものを提供したくはない。ちょっとしたアップデートを加味する

――停滞せずにお仕事を続けられる秘訣はありますか?

作品に関して言えば、たまたまやりたいと思う作品をたくさんいただけているので、ありがたいなって。その日々が続いていて、たまに大変になっているときもありますけどね(笑)。自分の中で、鮮度高くとか新鮮でありたいとか、そういうつもりは全然ないんです。ただ、見てくださる人たちには、「新しくて、いいものに出会った」と思ってもらいたい気持ちはあるかもしれません。同じものを提供したくはないな、と。

――俳優さんに限らず、同じ仕事を続けていると、どうしても似たような仕事が訪れたり、二度目に出くわすことも避けられなかったりします。

「前回こうしたから同じようにしたら問題がない」というのは、ひとつの経験値や自信として持っていてもいいと思うけれど、同じ状況でもプラスアルファなにか違う挑戦をしたほうが自分の人生が楽しくなる。それは、本当に些細なことでいいと思っていて、コミュニケーションを工夫するとか、言葉遣いを変えてみるとか、ちょっとしたアップデートを加味する。同じことを続けることは、同じことを繰り返すことでは決してなくて、同じことをより新しくしていく。そうやって仕事をする方が楽しいですよね。

――それは仕事以外にも通じる考え方かもしれません。

趣味だったり、興味の持ち方にも影響してくる大事な心のあり方でもあって、自分の知識が増えると同じ物事を目の前にしても、見方が変わる。だからこそ成長は大事だと思うし、「社会に出たらゴール」というわけではないといつも思います。自分の現在地からどんな進化をするか、脳を使わないと、どんどん何も考えない人になってしまう。脳もそうだし、体も心も使ってあげないと衰えるばかり。使って成長させることの大事さは、大人になるにつれてつくづく感じます。私が今言ったことは、どれも普通のことばかりなんですが、でもその普通のことが難しいんですよね。

大人になると“余白”を持つことができるようになる

――脳と体、感情を動かし続ける中で、少し疲れを感じてしまったときは、どんな風にリセットしていますか?

映画や舞台を観に行ったりすると回復しますね。いい作品を見たり、触れたりできると、それだけで心の疲れが取れるんですよね。

――“好き”と“仕事”が同じ領域にあっても板挟みにはならないですか?

演じる役は自分とは違う人なので気にならないですね。自分の作品をじっくり見るタイプだったら、たぶん板挟みになってしまう気がします。私は自分の作品を見るときは“確認作業”で、だから大丈夫なのかなと思います。

――お仕事に対して朗らかでフラットな姿勢は、大人になるにつれて手にしたものでしょうか。

年齢を重ねるにつれて、もうどう見られたって「まあ、いいか」と思えるようになりました。人間って、日々受け入れられることが増えていくもの。若いときからそれができていればよかったな、と今も思います。若いと自己主張だったり、自分の理想像に縛られて、いいものと悪いものの判断が白黒はっきりしてると思うけれど、大人になると「あ、もしかしたらこっちの方がいいかも」と“余白”を持つことができるようになる。誰かの意見も柔軟に受け入れられるようになれたのは、大人になる一番の特権かなと思ったりします。

長澤まさみ/Masami Nagasawa

1987年6月3日生まれ、静岡県出身。2000年、デビュー。主な出演作に、映画『海街diary』『MOTHER マザー』『マスカレード・ナイト』、『コンフィデンスマンJP』シリーズなど多数。直近では、映画『シン・ウルトラマン』『百花』、ドラマ『エルピス-希望、あるいは災い-』が大きな話題に。3月24日より映画『ロストケア』が公開予定。

WOWOWオリジナルドラマ『松尾スズキと30分強の女優』

大人計画主宰、シアターコクーンの芸術監督、コントの名手・松尾スズキが毎回ひとりの女優と繰り広げる至極のWOWOWオリジナルコント。ドラマコントシリーズ第3弾となる本作は、松たか子、長澤まさみが登場。長澤さんが出演する「長澤まさみの乱」はWOWOWプライムで3月25日(土)22:15~放送・配信。

撮影/門脇遼太朗 スタイリスト/影山蓉子(eight peace) ヘアメイク/スズキミナコ 取材・文/長嶺葉月 構成/岩崎 幸

【衣装】ニットトップ ¥232100、スカート ¥214500、パンプス ¥156200/メゾン マルジェラ(マルジェラ ジャパン クライアントサービス)

マルジェラ ジャパン クライアントサービス TEL:0120-934-779

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