長澤まさみ「他人の“面白い”場面に遭遇しがち。若干、半笑いで生きているかもしれません」

長澤まさみ「他人の“面白い”場面に遭遇しがち。若干、半笑いで生きているかもしれません」

#ドラマインタビュー
#長澤まさみ
INTERVIEW
2023.3.22

「次はどんな作品を届けてくれるのか」、つい期待してしまう女優――。長澤まさみさんのパフォーマンスは、コミカルな表現からシリアスで社会性の強い作品、さらにはアクションと実に多彩。“硬軟”を問わず、年齢を重ねるごとに伸び伸びと行き来しているようにも映る。

今回挑んだのは、WOWOWオリジナルコントドラマ『松尾スズキと30分強の女優』。劇団・大人計画を主宰する演出家であり劇作家の松尾スズキさんとの奇想天外なコントを通して、独特だという松尾さんの“笑いの世界観”や、長澤さんが面白いに出会う日常について伺った。

「いつ呼ばれるかな?」と、ちょっと期待していた(笑)

――コントドラマ「松尾スズキと30分の女優」シリーズへの出演はひそかな念願だったそうですね。オファーを受けたときの率直な感想はいかがでしたか?

本当に嬉しかったですね。このシリーズのことはもちろん知っていたので、「いつ呼ばれるかな?」なんてちょっと期待していたくらいです(笑)。実際にオファーをいただいたときは、「呼ばれた!よかった!」と、とても嬉しかったです。過去のシリーズに出演された女優さんと共演する機会があったときに、お話を聞いてみると「楽しかったよ」とおっしゃっていて。コントドラマに対しては、難しそうという印象を持っていましたが、その難しさを含めてむしろ楽しそうだなとワクワクしました。

――松尾さんが作られる世界観やその笑いについて、長澤さんが感じる魅力とは?

台本を読んでも、実際に演じていても感じたことですが、松尾さんが紡ぐ物語は基本的にすごく普遍的なんです。キャラクター設定が独特だったり、ちょっと突拍子もなかったりして、一見ギョッとするのかもしれないけれど、紐解いていくとすごくジーンと感動する。描かれるキャラクターたちは憂いを帯びた魅力を持っていて、悲しかったり、痛かったり、なんかかわいそうだったりという人たちをフィーチャーしている。その表現やキャラクター設定がある意味“不気味ポップ”になっているから、ちょっと不思議な感覚に陥るだけで、実は本当に普通の物語が広がっているのが松尾さんの作品の魅力なんだと思います。

――突飛な設定であっても、各コントで長澤さんが演じている役がいわゆる普通の人という部分にもつながっている気もしました。

そうかもしれないですね。職業的にいったら、『恐竜最後の日』も下積み中の喫茶店のアルバイトだったり、『老紳士を捨てる』はごく普通に働いている女性ですから。

軌道修正を重ねながら、手探りで進めていった

――その一方で、『センタア飯店』でのケンカシーンをはじめ、長澤さんの振り切ったお芝居も見どころかと思います。撮影はスムーズだったのでしょうか。

軌道修正を重ねながら、といった感じでしょうか。松尾さんはご自身が出過ぎてしまうのがお好きではない方なので、ちょっと違うとなったときもボソッと呟くくらいなんです。松尾さんとお芝居するのは私なので、私だけはそこを聞き逃さないようにして「じゃあ、次はこうやってみよう」と手探りで進めていく感覚でした。

いわゆる下ネタ系も多かったりするのですが、松尾さん自身は本当にきちっとされた紳士的な人で、その方があの脚本を書いて、さらに演じられていると思うとギャップがまた素晴らしい。下品を嫌う人だからこそあの物語が成立します。むしろ私の芝居が行き過ぎて、逆に怒られているって感じです。「ちょっと、ちゃんとやって!」みたいな(笑)。

――長澤さんがコントに挑むときは、なにか心構えみたいなものはありますか?

心構えなんてまったくないですよ(笑)。「今度、コントやるよ!」「はい、やります!」って感じです。降って湧いたようなオファーなので、このタイミングで訪れたか!と思うくらいです。ドラマや映画といった作品は、事務所の方と道筋を立てながら選択することが多いですが、今回の作品はタイミングに恵まれました。松尾さんとお仕事をするのが大好きなので、声をかけていただいたなら「私でよければ、お邪魔します」と。

たまたま“面白い”場面に遭遇しがち

――長澤さんの周りには面白い人がたくさんいらっしゃいそうですね。

みんな面白いですよ。いい意味で「変な人ばっかりだな」と、いつも楽しいです。作品のイメージもあって、周りの方から面白いねと言っていただけることが多いですが、むしろ私の周りにいる女優さんたちのほうがずっと面白い。コメディ作品に出演されていなくても面白い方はたくさんいらっしゃいます。

――ちなみに長澤さんは、“面白さ”とはどういった部分に感じがちですか?

私はシュール系が好きですね。誰かがボソっとつぶやいた一言が面白いとか、人が見ていないところで何か下手こいてたりする人を見るのが、可愛いし、面白いしで「クククっ」と笑っちゃいます。見つけようとしているわけじゃなく、たまたまそっちを向いたら目撃してしまう。アンテナが働いているのかわかりませんが、察知して、パッと目が合ってしまうような。何の気なしに見た方向で面白いことが起こっているということがよくあります。だから普段、歩いているときも笑っていることがよくあるみたいで、指摘されたこともあります。いつもちょっと半笑いで生きているのかもしれません(笑)。半笑いっていっても鼻で笑う感じではなく、むっつり笑い方面です。

長澤まさみ/Masami Nagasawa

1987年6月3日生まれ、静岡県出身。2000年、デビュー。主な出演作に、映画『海街diary』『MOTHER マザー』『マスカレード・ナイト』、『コンフィデンスマンJP』シリーズなど多数。直近では、映画『シン・ウルトラマン』『百花』、ドラマ『エルピス-希望、あるいは災い-』が大きな話題に。3月24日より映画『ロストケア』が公開予定。

WOWOWオリジナルドラマ『松尾スズキと30分強の女優』

大人計画主宰、シアターコクーンの芸術監督、コントの名手・松尾スズキが毎回ひとりの女優と繰り広げる至極のWOWOWオリジナルコント。ドラマコントシリーズ第3弾となる本作は、松たか子、長澤まさみが登場。長澤さんが出演する「長澤まさみの乱」はWOWOWプライムで3月25日(土)22:15~放送・配信。

撮影/門脇遼太朗 スタイリスト/影山蓉子(eight peace) ヘアメイク/スズキミナコ 取材・文/長嶺葉月 構成/岩崎 幸

【衣装】ニットトップ ¥232100、スカート ¥214500、パンプス ¥156200/メゾン マルジェラ(マルジェラ ジャパン クライアントサービス)

マルジェラ ジャパン クライアントサービス TEL:0120-934-779

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