VOL.44

VOL.44 Web3 のカバーイメージ

Web3

所有と信頼のゆくえ

2022.03.14 発売

¥1200

CONTENTS

インターネットの黎明期から続く、所有と自由をその手に取り戻そうとするクリプト(暗号)の闘いは、ブロックチェーン技術を基盤にした分散型自律システムに受け継がれて連綿と続いている。今号の「Web3」特集は、その最前線からの戦況報告だ。Web3とは「ひとつのシステム」というより、望むべき次の社会の実装を仕掛ける「多様なプレイヤーが織りなすヴィジョン」であり、未来への態度なのだ。Web3の提唱者ギャヴィン・ウッドはそれを、「Less Trust, More Truth」という言葉で定義する。 Web3の真実に「所有」と「信頼」のゆくえから迫る総力特集!

ギャヴィン・ウッド、武邑光裕、北澤 直、ジェシー・ウォールデン、starRo、落合渉悟、北川拓也、スコット・コミナーズ、ジャド・エスバー、コムギ、津久井五月、水野祐、豊田啓介、倉田哲郎、川田十夢ほかが登場。


14

TO BOLDLY GO WHERE NO ONE HAS GONE BEFORE

行く手に待つのは、何色のフロンティア!?

通時性を弱体化させ、共時性を爆発させたのがWeb2.0だとするならば、いったいWeb3は何を加速させるエンジンになるのだろうか。もしそれが「プロトコルによる再創造」なのだとしたら、これから先、どのような世界が待っているのだろうか。

24

LESS TRUST, MORE TRUTH

信頼(信仰)に代わる真実を
ギャヴィン・ウッドが描く、自由へと続く航路

イーサリアムの共同創設者であり、世界的なブロックチェーン開発企業を運営するギャヴィン・ウッド。彼こそが「Web3」の提唱者にほかならない。Web3を支える分散型のテクノロジーこそ、いまの社会を取り巻く独占的支配から世界を解放する“一縷の望み”だと考えるそのヴィジョンの神髄に迫った。

34

CRYPTO MANDALA

“クリプト”をめぐる4つの概念図

法定通貨経済圏との分離、DeFi(分散型金融)の登場、トークンという概念の確立……と確実にステップを刻み、NFTのブレイクによっていよいよマスアダプション期を迎えた暗号通貨の経済圏。いま一度その概要をキチンと把握するべく、Web3リサーチャーのコムギが「クリプトのツボ」を解説する!

40

Harmonizing with the Real World

野球カードとNFT

かつて大きなハッキング事件が起きた。いまだ投機的なスキームだと思われているフシもある。日本におけるクリプトエコノミーの立ち位置は、まだまだ盤石とは言い難い。だからこそ自分たちにはできることがあると、Coinbase代表取締役の北澤直は考えている。その目に映るクリプトの役割、そして可能性とは?

46

MUSIC NFTs 101 FOR ARTISTS

「音楽の未来」を読み解くための3つのレッスン
ジェシー・ウォールデン/starRo

日夜登場するWeb3時代のツール群は、ミュージシャンにとって“武器”になるのか? それとも、プラットフォームによる搾取の歴史は繰り返されるのか? 常に先端テクノロジーの実験場であり続けた「音楽業界」はWeb3によってその勢力図が塗り替えられるかもしれない。音楽業界の新しいランドスケープと、その未来を読み解くための3つのレッスン。

56

DAO FOR NATIONS

22世紀の民主制
落合渉悟

ピーター・ティールいわく「自由と民主主義は両立しない」らしい。そうした生粋のリバタリアンに倣って、国家から脱出するのではなく、この民主主義をブロックチェーンによって修復できないだろうか? 自治体機能が縮小していく未来を前にして、ぼくらは「DAO」というツールに希望を託す。

68

TAKEMURA JUKU

特別講義! Web3の課題と個人主義の再解釈

2015年からベルリンで7年間暮らし、その間にGDPR(EU一般データ保護規則)の発効・適用を体験するなど、ヨーロッパ流「個人主義」の本質を肌身で知るメディア美学者の武邑光裕。彼の目に、現在のWeb3を取り巻く狂騒はどう映っているのだろうか。武邑が2013年から主宰する私塾「武邑塾」が、『WIRED』日本版にて特別開講!

75

Web3 GLOSSARY A to Z

精選“ワ式”新用語集
変貌する世界を見据える100のキーワード

Web3の全体像を掴むには、新出のキーワードを押さえておく必要がある。今回、『WIRED』日本版編集部が100のキーワードをピックアップ。新たな世界を支える言葉の拡がりを知れば、Web3の向かう先を知る手がかりにもなるかもしれない。

83

THE ESCAPIST FANTASY

遊びと労働のゆくえ
資本主義がのみ込むNFTゲーム

ブロックチェーンを基盤に、ゲームと金融をかけ合わせたGameFiの市場が急拡大中だ。なかでも「Play to Earn(プレイして稼ぐ)」型のゲームは、プレイヤーに資本主義の純粋な悦びを与える一方で地球規模での新たな労働移動を生んでいる。この潮流の行き着く先は、希望か、あるいは幻想か。

92

ACCELERATOR FOR THE WELLBEING SOCIETY

人類のウェルビーイングにはWeb3が必要だ
北川拓也 × スコット・コミナーズ × ジャド・エスバー

これまで「幸福」が客観的な指標でしか測られてこなかったとすれば、Web3によって、あなたの主観的なウェルビーイングの価値がやっと社会に実装される時代が到来するかもしれない ──そう語る北川拓也がハーヴァード大の同窓で「Web3」の気鋭の論客ふたりを迎え、Web3×ウェルビーイングの可能性を大いに語る!

98

FETISH

生活に未来を実装せよ

やがてWeb3は到来する。さて、ライフスタイルはいかに。よりベターな日常を望むなら、衣食住にも変革の意思が必要だ。キイワードは例えば#secure #identify #well-being。生活をイノヴェートするためのショッピングマニュアル。

115

HOTFIX

ホットフィックス
津久井五月

現実世界の物理法則を緻密にシミュレートした最初で最後の仮想世界ニュー・バベル。20年前に起きた原因不明の災禍により、現在は半ば廃棄されたその世界を調査しているコンスタント・エヌは、ある日、アスガーという人物と出会う。彼はずっとニュー・バベルに留まり、ギーという人物を探しているという。アスガーは言う。「ギーは絶対に信用ならないやつなんだ。必ず見つけ出してやる」と──。俊英・津久井五月が未来のメタヴァース空間を舞台に「信頼」と「不信」を描いた短編SF!

132

AI ASSISTS HUMANITY

スーパーバグをやっつけろ!
人工知能は「ヒト由来の抗生物質」を見つけられるのか?

細菌が薬剤耐性を進化させることで、抗生物質の有効性が徐々に低下している。2050年までに年間1,000万人がそのために死亡するとの推定もあるなか、ある発見が注目された。人体そのものが生み出すペプチドを人工知能を使って調べ上げ、感染症に対抗すべく獲得した驚きの進化を突き止めたのだ。

142

NEW TRUST, NEW SOCIAL CONTRACT

水野祐が考える新しい社会契約
〔あるいはそれに代わる何か〕
第9回 NFTの「準所有」と著作権の終わり(の始まり)

法律や契約とは一見、何の関係もないように思える個別の事象から「社会契約」あるいはそのオルタナティヴを思索する、法律家・水野祐による連載。NFTにおける「所有」の議論からは、クリエイターの「創作による収入」と「作品の公共性」を両立させる可能性と、著作権の終わりが見えてくる。

144

すすめ!! VIRTUAL CITIES Inc.(仮)

豊田啓介 × 倉田哲郎
第7回 匿名の空間と公共の必要性

モノと情報が重なる“共有基盤=コモングラウンド”の可能性を追求する建築家・豊田啓介と、大阪府箕面市の市長を3期にわたり務めた倉田哲郎。この両名が、日本のスマートシティ戦略にもの申すべく張った「共同戦線」に密着する集中連載の第7弾!

148

Way Passed Future

川田十夢の「とっくの未来」
第21回 能と拡張現実

文学が記述した「ジャンル分けされる前の未来」の痕跡を見いだし「いま」と接続することで、文学とテクノロジーを新たなパースペクティヴで捉える本連載。今回は、近代を彩った文学者たちの「能」に対する思いをひもときながら、今日、能がもつ幽玄を最新技術で拡張する意義を考えてみたい。