日本で人気のビッグスクーターは、米国の「ローライダー」

車高を低くした米国の改造車「ローライダー」は、日本では悪ガキ風のビッグスクーターにあたる。
日本で人気のビッグスクーターは、米国の「ローライダー」

Joe Brown

東京の靖国通りを歩いてみれば、車高を低くした「ローライダー」がいくつも目につくのに驚くことだろう。

[ローライダー(Lowrider)は、主に古いアメリカ製の自動車をカスタムした車のことで、主にチカーノや黒人ヒップホップの文化。車体を壮大に見せるために車高をギリギリまで落としており、車高の低い車を使う者、ということから「ローライダー」と呼ばれる]

どれもフル装備で、色鮮やかなツートンカラーの車体にはラメ塗装が施され、クロームパイプやワイヤーホイールで飾られていて、12インチのスピーカーからは最新のJポップ・アルバムが大音量で流れる――低速で走るこんな車と言えば、[ローライダーの典型である]Chevrolet(シボレー)ブランドの『Impala』や『Bel Air』、Cadillac(キャディラック)ブランドの『DeVille』などを想像されるだろうが、ここ日本では違う。もっと言うと、本田技研工業の『シビック(日本語版記事)』、あるいはトヨタ自動車の『カムリ』や『カローラ』ですらない。

日本でのローライダーは、スクーターなのだ。

2005年にスズキが『スカイウェイブ250 タイプS』を発売すると、続いて本田技研工業(日本語版記事)が『Fusion SE』を、ヤマハ発動機が『グランドマジェスティ400』を売り出した。これらのスクーターは後発のモデルともに、日本の路上を席巻するようになった。[Wikipediaによると、スクーターの大型化は1995年のヤマハ・マジェスティのヒットから本格的に開始。2003年には、(50cc超の)自動二輪車の出荷台数のうち6割以上がスクーターになった]

日本の熱狂的なスクーター・マニアの間では、二輪車のいろいろな意味での「低さ」の限界を押し広げる動きが広まっている。ガソリン価格が高騰(日本語版記事)する昨今、ガソリンを馬鹿食いするクラシックカーから離れていく人々をどうして責められようか。日本でのガソリンの平均小売価格は非常に高い。[日本語版注:原文では「1ガロン当たり8ドル50セント」となっているが、実勢に合わない。国内小売価格の週次調査、米国内のガソリン小売価格週次調査]。平均小売価格が1ガロン当たり3ドル前後の米国においてさえ、トヨタ『4Runner』[日本名:ハイラックスサーフ]を満タンにしようとすれば、ひと財産飛んでしまうのだから。

だが、これらのスクーターは米国では販売されていない(日本語版記事)。日本のメーカーはおそらく、米国では需要がないと考えているのだろう。こうした見解はおそらく正しい。平均的な米国人はスクーターについてまったく何も知らない。大抵の人は「スクーター」と聞けば、即座に「ケッ」と思う。そんなわれわれは「もの知らず」なのだが。

これらの悪ガキ風スクーターのほとんどは250ccエンジンを備え、3300rpmでのトルクが17Nm以上[Nm(ニュートンメートル)はトルクを表わす単位、rpmは毎分の回転数]と、どんな高速道路を走るにも十分なパワーを備えている。燃料タンク容量は13リットル前後で、長距離走行にもぴったりだ。

自動車と違って室内バックミラーがないので、そこにアクセサリーをぶら下げるわけにはいかないし[自動車の室内バックミラーに物をぶら下げるのは米国の多くの州で違法]、窓にスモークフィルムを貼って目隠しもできない。それでも、ベルベット張りのシートや木目調のパネルといったカスタムパーツで自分のスクーターを飾る楽しさの前には、躊躇する理由などないだろう。

なんと言っても、ロサンゼルスのウィッティアー・ブールバードに集まるローライダーたちのモットー「bajito y suavecito」(車高は低く、速度は遅く)を地で行くようなスクーターを乗り回す喜びには換えられないはずだ。

[日本語版:ガリレオ-江藤千夏/長谷 睦]

WIRED NEWS 原文(English)