お彼岸のお供え物は花やおはぎが定番ですが、団子を供える家庭もあるでしょう。しかしお彼岸に団子をお供えする意味を、知らない人は多いのではないでしょうか。この記事ではお彼岸にお供え物として団子を用いる意味や、団子の数に込められた願いなどを解説します。

お彼岸とは

大輪の花を咲かせたヒガンバナ

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お彼岸にはお墓参りをするなどして、故人をしのぶ人が多いでしょう。お彼岸は仏教に由来すると考えて、インドや中国から伝来した慣習だと思うかもしれませんが、実はお彼岸は日本独自の仏教行事です。

仏教において、私たちが生きる欲や煩悩に満ちた世界を「此岸(しがん)」と呼びます。ご先祖様がいる世界、煩悩を脱した悟りの世界が「彼岸(ひがん)」です。此岸にいる私たちは善行を積むことで、彼岸へ渡れるとされてきました。お彼岸は、此岸と彼岸がもっとも近づく期間とされており、「六波羅蜜(ろくはらみつ)」と呼ばれる修行を実践して、より彼岸に近づく期間とされていたのです。

しかし現代のお彼岸は、お墓参りなどを通してご先祖様を供養する期間ととらえられています。お墓参りといったお彼岸の慣習が定着した理由はいくつかありますが、お彼岸はこの世とあの世がもっとも近づくときであり、故人へ思いが通じやすいためと考えられています。

春彼岸と秋彼岸とは

お彼岸は春と秋の年2回あり、それぞれ春分の日と秋分の日を中心とした前後3日間、合計7日間とされています。

春のお彼岸は、毎年3月20日ごろの春分の日前後の期間です。春分の日は国民の祝日に定められており、「国民の祝日に関する法律」によって「自然をたたえ、生物をいつくしむ」日と定義されています。一方、秋のお彼岸は毎年9月23日ごろにある秋分の日前後の期間です。秋分の日も国民の祝日とされており、「祖先を敬い、亡くなった人々をしのぶ」日と意味付けられています。

春分の日は長く厳しい冬が終わり、春が訪れる日でもあります。自然への感謝と、生命の繁栄への願いが込められた日といえるでしょう。一方、秋分の日は夏が終わり、秋の到来を告げる日であり、米などの農産物が収穫される時期でもあります。秋のお彼岸は、秋の実りへの感謝をご先祖様に伝える行事とも考えられるでしょう。

春のお彼岸と秋のお彼岸の違いは、お供え物にも見られます。お彼岸の定番のお供え物といえば、おはぎとぼたもちです。これらは、お供えされる時期が異なります。春は季節の花である牡丹の大輪の花にちなみ、大きくて丸い形の「ぼたもち」が作られます。秋のお彼岸では秋の七草のひとつ、萩の細長い花に見立てた俵形の「おはぎ」がお供えされるのです。

お彼岸には、花をお供えする人も多くいます。お供え物にできる花に明確な定義はなく、季節の花を用いるのが一般的です。春のお彼岸では、ぼたもちの名前の由来でもある牡丹のほかに、マーガレット・ストック・スイートピーなどが見られます。秋のお彼岸でお供えされる花は、菊・リンドウ・キキョウなどが多いでしょう。

なぜお彼岸に団子をお供えするのか

お皿に盛り付けられた二本の三色団子

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お彼岸にはおはぎやぼたもち、花のほかに、団子をお供えすることがあります。お彼岸の団子は白くて丸く、複数個を積み上げてお供え物とすることがほとんどです。お彼岸に団子をお供えする理由は、いくつかあります。

多くの場合、団子はお彼岸の初日や最終日に供えます。初日に供える団子には、あの世からの長い旅路を帰ってきたご先祖様を癒すため、最終日の団子には、あの世へと戻っていくご先祖様に団子をお土産にしてもらう意味があるとされています。

またお供えした食べ物は傷んでしまう前にお下げして、食べてもかまいません。お供え物を食べればご先祖様と食事を分け合うことになり、ご先祖様とのつながりを感じるため、供養のひとつとみなされています。

このような理由からお供えされるようになったお彼岸の団子ですが、現在ではご先祖様への感謝や敬意を表す意味が強いようです。

いつ団子をお供えするのか

お彼岸に団子をお供えするタイミングは、地域によって違いが見られます。しかし一般的には、お彼岸の初日や最終日に供えることがほとんどです。

お彼岸の初日、つまり春分の日や秋分の日の3日前にお供えする団子は「入り団子」と呼ばれます。お彼岸最終日、春分の日や秋分の日の3日後にお供えするものは「明け団子」と名付けられています。どちらか1日だけ団子を供えることがあれば、この両日に供える場合もあるようです。

お彼岸の真ん中の日にあたる春分の日や秋分の日を、お彼岸のお中日(おちゅうにち)といいます。地域によっては、そのお中日に団子をお供えすることもあります。

団子の数と供え方

お彼岸にお供えする団子の個数には、それぞれに意味が込められています。ただし団子の数に明確な決まりはなく、地域や家庭によって異なるようです。ここからは一般的な団子の数とその意味、団子の供え方を紹介します。

6個

お彼岸にお供えする団子数は、6個が一般的です。6という数は、仏教において人は死後、「地獄・飢餓・畜生・修羅・人間・天上」の6つの世界のどこかに生まれ変わるとされたことに由来します。

6個の団子をお供えする場合、5個の団子を丸く円状に並べ、その真ん中に残り1個の団子をのせて2段にしてください。

7個

前述のように、人は亡くなったあと、6つの世界で輪廻転生を繰り返します。その6つの世界からひとつ飛び出し、極楽浄土に行けるようにとの願いを込めて、7個の団子をお供えするようになりました。

また仏教では、亡くなった日から7日ごとに、6つの世界のうちどこに生まれ変わるかを決める裁判がおこなわれると考えられています。その最初の日が「初七日」であり、最後の日が「四十九日」なのです。それに因んで、7個の団子を供える場合もあります。

団子が7個の場合、決まった積み方はありませんが、基本的にはピラミッド型になるように積み上げましょう。

13個

13個の団子は、極楽浄土に導いてくれる仏様が13人いるとする「十三仏信仰」に基づいています。十三仏信仰は、仏教において死者の審判をおこなう十王という存在をもとに、日本で作られた信仰です。

13個の団子をお供えする場合は、まず7個の団子で円を作ります。その上に5個の団子で円を作り、1番上に残り1個の団子をのせて作るとよいでしょう。

お供えものには、おはぎやぼたもち

湯呑みに入った緑茶と大ぶりのおはぎ

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春のお彼岸のぼたもち、秋のお彼岸のおはぎは、お供え物の定番です。粘りと弾力があるもち米と、さっぱりした口当たりのうるち米から作った餅をあんこで包む点においては、ぼたもちとおはぎは共通しています。

あんこの材料である小豆は、赤い色をしています。赤色はかつて、魔除けや不老長寿の願いが込められた色として特別とみなされていました。赤色の小豆も特別視され、小豆から作られたあんこで餅を包んだおはぎやぼたもちを、お彼岸にお供えするようになったのです。

同じように見えるおはぎとぼたもちですが、実はあんこに違いがあります。おはぎのあんこは粒あんを使用していますが、ぼたもちのあんこはこしあんなのです。

秋に収穫されたばかりの小豆は皮がまだやわらかく、炊くと皮ごと食べられます。そのため秋のお彼岸にお供えされるおはぎに用いられるのは、粒あんです。一方、収穫から時間が経つと、小豆の皮は乾燥し固くなります。収穫の翌年に食べられるぼたもちは、固い皮を取り除いたこしあんで作るのです。

お彼岸の団子はご先祖様への感謝を込めて

お彼岸にはよくおはぎやぼたもち、季節の花のお供え物が見られますが、地域によっては白くて丸い団子を積み重ねてお供え物にします。さまざまな理由から団子をお供えするようになりましたが、現在はご先祖様への感謝や敬意を表すために供えられることがほとんどです。お彼岸には団子を用意し、故人をしのんでみてはいかがでしょうか。

※商品情報や販売状況は2022年12月23日時点でのものです。
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