facebook line x mail

地球温暖化のウソ? ホント?(2)地球温暖化は人間のせい?

top

2023/12/23 05:07 ウェザーニュース

2023年は過去最も暖かい年になることはほぼ確実で、地球温暖化の影響を身近に感じる1年でした。

地球の表面を温室効果ガスが覆っていることで、地球は生物にとって、住みよい環境になっています。しかし、その温室効果ガスが増えすぎて、地球は温暖化してきています。これが大きな問題です。

原因はいったい何でしょうか。自然現象でしょうか。それとも、人間のせいでしょうか。気候変動問題の専門家である江守正多さん(東京大学 未来ビジョン研究センター教授/国立環境研究所 上級主席研究員)に聞いてみました。

» 特集 ウェザーニュースと考える地球の未来

Q1/地球温暖化は自然現象? それとも人間が原因?

◆A/20世紀以降の地球温暖化の主な原因は人間活動です。

人間活動とは、文字どおり、人間の活動のことで、人が地球上でおこなっている活動全般のことをいいます。

家やビルを建てること、自動車や電車や飛行機に乗ること、冷蔵庫や冷暖房や照明器具を使うこと、テレビを見ること、お風呂に入ること、料理をすること、ゴミを処分することなど、これらはすべて人間活動です。

これらの活動の大部分は、従来、石炭、石油、天然ガスなどの化石燃料を燃やして得られるエネルギーを使っておこなわれてきました。その際に、重要な温室効果ガスである二酸化炭素が発生しています。

人間活動が主な原因で、温室効果ガスが増え、地球が温暖化していると、どうしていえるのでしょうか。

それは人間活動があるときとないときで、地球の気温がどのように変わるのかを比べることでわかります。

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)では、1850年から2020年までの170年間で、世界の平均気温がどのように変化したのかを調べました。

その結果は「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない。大気、海洋、雪氷圏及び生物圏において、広範囲かつ急速な変化が現れている」というものでした。
box1
掲載したグラフをご覧ください。

黒の折れ線グラフは、実際に観測された世界の平均気温の推移です。青の線は自然要因だけを考慮したシミュレーションで、橙(だいだい)の線は自然要因に人為要因(じんいよういん:人の手が加わることで起こる)を加えたシミュレーションです。これらのシミュレーションは物理の法則に基づいてコンピューターを使っておこなっています。

この3つのグラフを見ると、黒の折れ線グラフ、つまり実際の世界の平均気温の推移と、橙の線、つまり自然要因に人為要因を加えたシミュレーションがほぼ一致していることがわかります。

一方、人為要因のない、自然要因だけの場合は、1850年から2020年までの170年間、世界の平均気温はほとんど変わっていません。

このことから、地球温暖化の主な原因は人為要因、すなわち人間活動であるということができます。

Q2/「シミュレーション」という言葉が出てきましたが、どういったことでしょうか?

◆A/地球の基本情報をコンピューターに教えて、物理の法則に基づいて気候モデルを作ります。

このシミュレーションでは、地球がどんな星であるかをコンピューターに教え込みます。地球の大きさ、地球の回転、海と陸の分布や面積、地形、氷の分布、植物の分布、大気の成分、太陽から得られるエネルギー量などの地球の基本的な情報をコンピューターに落とし込むのです。

そして、物理の方程式を用いると、コンピューターの計算上で、現実の地球と同じように風が吹いたり、雲ができたり、雨が降ったりする、地球の「気候モデル」が出来上がります。

つまり、物理法則に基づいてできるモデルです。これが気候に関する、コンピューターによるシミュレーションです。

このシミュレーション研究の基礎を作ったのは、2021年にノーベル物理学賞を受賞された真鍋淑郎博士です。

シミュレーションは現実の地球と違って、条件を変えて繰り返し実験をすることができます。このシミュレーションを活用することで、人間活動の有無によって、世界の平均気温がどのように変わるかなどがわかるのです。

Q3/二酸化炭素と同じように重要な温室効果ガスである水蒸気は、人間活動とは関係ないのでは?

◆A/人間活動によって二酸化炭素(CO2)が増えると、水蒸気(H2O)も増えます。

温室効果ガスがまったくなければ、地球は今よりずっと寒くて、人間が住むには適さない星になっていたでしょう。

地球が人間などの生物にとって住みよい環境になっているのは、6割くらいは水蒸気があるためです。水蒸気のおかげで、私たちは地球に住むことができていると言っても過言ではありません。

ただし、水蒸気が増えすぎると、人間などの生物に悪影響が出ます。大気中のガスのなかでも、水蒸気は最も強力な温室効果ガスだからです。

水蒸気は人間活動によって直接的には増えません。気温が変わらなければ、人間が大気に余分に水蒸気を排出しても、水蒸気は雨になって降るなどして、増えないからです。

ところが、人間活動によって二酸化炭素が増えることで、水蒸気は間接的に増えてしまいます。これが大きな問題です。

どういうことか、その仕組みを説明しましょう。

人間活動によって、大気中の二酸化炭素濃度が増えて、その温室効果によって、地球が暖かくなります。すると、その結果として、水蒸気の量も増えるのです。
box4
中学校の理科で、飽和(ほうわ)水蒸気量について学んだことを覚えている人もいるでしょう。

飽和水蒸気量は、1m3の空気がその温度で含むことのできる水蒸気の最大の質量です。飽和水蒸気量は気温が高いほど大きくなります。つまり、気温が高いほど、空気は水蒸気を多く含むことができます。

二酸化炭素などの温室効果ガスが増えて、気温が上がると、大気中の水蒸気が増える。すると、水蒸気の温室効果でさらに気温が上がる。こうした循環ができてしまいます。

そう考えると、主に二酸化炭素が地球の温暖化を招いていることがわかるでしょう。そして、その二酸化炭素の増加の原因を主に作っているのが人間活動です。大気中の水蒸気を増やさないためにも、人間が二酸化炭素などの排出を抑えることが大切なのです。

————————
地球の気温がこの100年ほどで明らかに上昇していることは、私たちの日常生活からも実感できます。未来の地球を守るために、気候変動についてウェザーニュースといっしょに考えていきませんか?
» 特集 ウェザーニュースと考える地球の未来
» お天気ニュースをアプリで読む» お天気ニュース 記事一覧


監修/江守正多
東京大学 未来ミジョン研究センター 教授。国立環境研究所 地球システム領域 上級主席研究員