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最終更新日:2022/6/6

令和4年度の税制改正大綱|改正点から見る今回のポイントは?

税理士 鳥川拓哉

この記事の執筆者 税理士 鳥川拓哉

ベンチャーサポート税理士法人 税理士。
大学を卒業後、他業種で働きながら税理士を志し科目を取得。
その後大手税理士法人を経験し、現在に至る。

PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-tori

令和4年度の税制改正大綱

この記事でわかること

  • 令和4年度税制改正大綱の特徴や基本的な考え方を知ることができる
  • 法人や個人事業主の経営に関する税制の改正点を知ることができる
  • 個人の暮らしに直結する税制の改正点について知ることができる

日本国内で経済活動をしている法人や個人は、その利益に応じて税金を負担する必要があります。

税制のルールや内容は永久に変わらないものではなく、その時々の経済状況に合わせて変化していくものです。

そのため、毎年12月に税制改正大綱が公表され、今後どのような税制改正が行われるのかが公表されます。

そこで、令和3年12月に公表された令和4年度の税制改正大綱の内容について解説していきます。

令和4年度税制改正の特徴

令和4年度の税制改正大綱が令和3年12月10日に公表されました。

また、令和4年度の税制改正大綱にはどのような特徴があるのでしょうか。

税制改正の大綱とは?

税制改正大綱は、翌年度以降の税制のルールの変更点や新しい制度の内容をまとめた書類です。

毎年12月中に与党の税制調査会が中心となって税制改正の方針を定め、税制改正大綱を作成しています。

12月中に公表された税制改正大綱に沿って、その翌年1月には国会に税制改正法案が提出されます。

そして、3月末までに国会で成立すれば、翌年度の始まりとなる4月から新たな税制が導入されることとなるのです。

つまり、12月に公表される税制改正大綱は、今後導入される法律や改正点のたたき台となるものです。

与党がまとめた税制改正大綱は、そのまま導入される可能性が高いため、今後の税制を知る上で非常に重要なものとなります。

令和4年度税制改正の特徴とは?

令和4年度の税制改正大綱では、新型コロナウイルス感染症に対応し、未来を見据えた取り組みを行うことを基本としています。

そのため「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」が大きなコンセプトとなっているのです。

成長と分配の好循環として、積極的な賃上げを促すための制度やオープンイノベーションを促進する制度が盛り込まれています。

また、未来への投資に向けて経済界への期待を示すとともに、地方の活性化などにも取り組むことを表明しています。

さらに、経済社会の構造変化をふまえて個人所得課税のあり方、及び相続税や贈与税も見直すことが明らかになっています。

納税環境の整備やデジタル化の進展に対応することも明らかにされました。

特に重視された賃上げに関しては、企業が負担する税額が軽減されるような制度が導入されます。

また、スタートアップ企業を支援するため、オープンイノベーションを促す制度が拡充されます。

個人課税関連では、住宅ローン控除制度の見直しが行われることとなりました。

さらに、住宅取得等資金の贈与税の非課税制度についても、限度額などの見直しが行われます。

では、さらに詳細にそれぞれの改正点について解説します。

法人(個人事業含む)の税・経営に関する主な改正点

法人や個人事業主の方が事業を行って所得が発生すると、多くの税金が発生します。

ただ、国が税制を定める中で、事業者が事業を継続しやすくなるように多くの特例を定めています

また、社会情勢や事業者からの要望に合わせて制度の見直しが行われ、より使いやすい制度になるような改正が行われます。

また逆に、不公平な状態になっていると考えられる制度については、その見直しが行われることとなります。

大企業での雇用・従業員の賃金に係る人材確保等促進税制の改正

資本金の額が1億円を超える大企業が対象となる人材確保等促進税制は、大企業での新規雇用や従業員の賃上げを促す制度として導入されています。

令和4年4月1日から令和6年3月31日に開始する事業年度については、これまでとは要件や控除額の計算方法が変わります。

改正前改正後
適用要件新規雇用者給与等支給額が前年度より2%以上増加している継続雇用者給与等支給額が前年度より3%以上増加している
控除額の計算方法控除対象新規雇用者給与等支給額×15%控除対象雇用者給与等支給増加額×15%
上乗せ教育訓練費の額が前年度より20%以上増加している場合には、税額控除率を5%加算する
  • 継続雇用者給与等支給額の増加割合が4%以上の場合は、税額控除率を10%加算する
  • 教育訓練費の額が前年度より20%以上増加している場合には、税額控除率を5%加算する

現行制度は、新規雇用者に対する給与等支給額が要件や控除額の計算に用いられていました。

改正後は、新規雇用者に限らず継続して雇用されている人に対する給与等支給額が増加しているかどうかがポイントとなります。

給与額の増加を目指す所得拡大促進税制の改正

資本金の額が1億円以下の法人が対象となる所得拡大促進税制は、給与等の額が増加することをねらいとして設けられています。

令和4年4月1日から令和6年3月31日に開始する事業年度について、一部改正が行われます。

改正前改正後
上乗せ

雇用者給与等支給額の増加割合が2.5%以上かつ以下の①または②を満たす場合、税額控除率を10%加算する

  • ①教育訓練費の額が前年度より10%以上増加している
  • ②経営力向上計画の認定を受けて、かつ証明されている
  • ①雇用者給与等支給額の増加割合が2.5%以上の場合は、税額控除率を15%加算する
  • ②教育訓練費の額が前年度より10%以上増加している場合には、税額控除率を10%加算する

改正前は、雇用者給与等支給額と教育訓練費の両方が増加していなければ、適用が受けられませんでした。

しかし、改正後はいずれか一方だけが増加した場合でも適用できるようになります。

みなし配当の計算の見直し

会社が資本の払い戻しを行う際に、みなし配当の額を計算する必要があります。

この計算を行う際に基礎となるのが、払戻等対応資本金額等と減資資本金額です。

これらの金額について、資本の払い戻しにより減少した資本剰余金の額を上限とする取扱いが設けられました。

また、種類株式を発行する法人が資本の払い戻しを行う際にも、みなし配当の計算を行います。

この時に計算される払戻等対応資本金額等及び減資資本金額は、各種類資本金額を基礎として計算することとなりました。

少額減価償却資産、一括償却資産における貸付用資産の適用除外

取得価額10万円未満の少額資産や取得価額20万円未満の一括償却資産について、貸付用の資産を対象から除外します

また、中小企業者等の取得価額30万円未満の少額資産の特例についても、貸付用資産は対象から除外することとなりました。

オープンイノベーション促進税制の要件拡充

特別新事業開拓事業者に対して特定事業活動として出資をした場合について、2点見直しが行われます。

改正前改正後
設立の日以後の期間に係る要件10年未満売上高に占める研究開発費の割合が10%以上の赤字会社については15年未満となる
特定株式の保有見込期間要件5年保有見込期間の下限及び取崩事由に該当することとなった場合の益金算入期間が3年となる

現在より要件が緩和され、オープンイノベーション税制の対象となるケースが増えることとなります。

個人の税・暮らしに関する主な改正点

個人に所得が発生すると所得税の課税対象となり、税金を納めなければなりません。

また、相続や贈与により財産の移転があると、財産を受け取った人に相続税や贈与税が発生します。

税負担を軽減するために多くの特例も設けられており、それらが様々な情勢を勘案して見直されることになりました。

住宅ローン控除の4年間延長と控除率の引き下げ

住宅ローン控除は、マイホームを購入する人の多くに関係する制度です。

所得税や住民税の額を大幅に減額してくれるため、納税者にとっては大きなメリットがあります。

当初、令和3年12月31日までで終了する予定でしたが、それが4年間延長されることとなりました。

一方で、近年の超低金利時代という状況をふまえて、控除率などの見直しが行われます。

改正前改正後
控除率1%0.7%
所得制限3,000万円まで2,000万円まで
中古住宅の場合の築年数戸建の場合20年以内、マンションの場合25年以内であれば適用可築年数による要件廃止(耐震基準に適合することが必要)

この他、新築等した住宅の種類によって借入限度額が変更されます。

子会社等からの配当について源泉所得税を廃止

配当金を受け取る場合、配当する会社が上場会社であれば15.315%、非上場会社であれば20.42%の源泉所得税が徴収されます。

しかし、一定の株式を保有する子会社からの配当については、源泉所得税の徴収が廃止されます

源泉徴収が廃止となるのは、以下のような子会社から配当金を受け取る場合です。

  • 100%株式を保有している完全子会社
  • 株式の保有割合が3分の1を超える子会社

配当が総合課税となる大口株主の範囲拡大

上場会社から受け取る配当金について、配当金を受け取った人は源泉分離課税が適用できます。

ただ、上場会社の発行済株式の3%以上を直接保有する人は、源泉分離課税が選択できません

非上場会社からの配当金と同じように、配当金の受取時には20.42%の源泉所得税が差し引かれます。

また、総合課税が適用され、確定申告をしなければなりません。

この大口株主の範囲が見直され、新たに「支配関係にある同族会社」が株式を保有する場合、3%の判定に含めます

改正前改正後
大口株主発行済株式の3%以上を直接保有する人支配関係にある同族会社の保有分を含めて発行済株式の3%以上を保有する人

改正前に比べて大口株主の範囲が広がり、確定申告しなければならない人が増えることとなります。

上場株式等に係る住民税・所得税の課税方式の改正

個人の方が配当金を受け取る場合、所得税の他に住民税が源泉徴収されます。

この住民税の課税方式について、以前は所得税と同じ課税方式でなくてもいいこととされていました。

しかし、住民税だけ配当金の申告不要を選択した結果、国民健康保険料や医療費の窓口負担が少なくなる問題が指摘されていました。

そこで、令和6年分以後は、所得税と住民税の課税方式を一致させることとされました。

納税地変更の届出書が不要に

個人の方が確定申告する際は、自身の住民票がある場所か、事務所のある場所で申告を行います。

この住所地または事務所等の所在地を納税地といいます。

これまでは引っ越しや事務所の移転などで納税地を変更すると、税務署に届出書を提出する必要がありましたが、令和5年以降は納税地変更に伴う届出書の提出が不要となります。

その他の改正点

ここまで紹介してきた税法の他、税制全般に関わる改正がいくつかあります。

その他の改正点について、解説していきます。

税務調査時の隠蔽仮装行為があった確定申告書の取扱い

隠蔽仮装行為が行われた確定申告書が提出された場合や、確定申告書の提出がない場合は、損金計上が大幅に制限されます。

具体的には、証拠書類が準備できない費用については、損金算入ができなくなるといった内容が想定されています。

電子帳簿保存法の整備

2021年度の税制改正により、2022年1月1日以後に行う電子取引について、その情報を書面に出力しての保存は不可能となりました。

そして、検索機能を確保した上で、一定の形式により電磁的記録を保存しなければならないこととされたのです。

ただ、準備期間が短く事業者の対応が間に合わない上、青色申告の承認取り消しが懸念される状況となり、大きな混乱が生じました。

そこで、2022年度の税制改正大綱では、2023年12月31日までは電磁的記録の保存が猶予されることとなりました

ただ、2024年以降は電磁的記録の保存が義務付けられるため、それに向けた準備が必要となります。

インボイス制度(適格請求書等保存方式)の導入

2023年10月1日からインボイス制度が開始される予定となっており、免税事業者が対応を求められています。

免税事業者が適格請求書発行事業者に登録する経過措置の取扱いは、2023年10月1日の属する課税期間に限定されていました。

しかし、これでは免税事業者は柔軟な対応が難しくなってしまいます。

そこで、2029年9月30日までの間に適格請求書発行事業者の登録をすれば、即座に適格請求書発行事業者になれることとされます。

財産債務調書制度の見直し

これまで、所得金額が2,000万円超かつ財産の合計額が3億円以上等の要件に該当する場合、財産債務調書の提出が義務化されています。

ただ、財産を多く持っていても所得金額が基準に満たない場合、財産債務調書の提出をしなくてもいい人がいます。

そこで、これまでの基準に加えて、財産の額が10億円以上の人は所得に関係なく、財産債務調書を提出することとされました

税理士制度の見直し

税理士事務所に該当するかどうかの判定を、従来は設備や使用人の有無といった物理的な判定に頼っていました。

しかし、リモートワークなどの柔軟な働き方が増えてきたため、これまでのような物理的な判定を行わないように変更されます。

また、税理士試験の会計科目について受験資格が不要とされ、高校生や大学1、2年生でも受験が可能となります。

まとめ

税制改正大綱は、今後新たに導入される税制の内容を示し、あるいは変更される制度の内容を明らかにしています。

今後どのような税制になるかは、単に税負担の増減を示すだけではなく、国としてどのようなことを重視しているかを表します。

今回の税制改正大綱では、コロナを乗り越えて発展していくこと、そして成長と分配を目指すことが明らかにされています

今後、実際にどのような要件が定められるのか、細かな点に注意していく必要があるといえるでしょう。

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