――SEASON2では、何曲ぐらい作られましたか?
- やまだ
- トータルで20曲ぐらいですね。ただそれぞれの曲の長さを長めに作っていて、やっぱり心情周りの曲が多いです。“大河ドラマ的”というか、アルネイズやエイナルといったキャラクターがSEASON2から登場したことに理由があるとしたら、それは彼らの人生そのものが「ヴィンランド・サガ」の中で印象的に働いていて、物語を象徴するものの一つになっているからだなと思いました。例えば、僕の中で「アルネイズのテーマ」として書いた曲があるのですが、これはアルネイズが登場してから最後までを表す曲になっています。そのため尺は長めになっています。
――やまださんがSEASON2の楽曲を作られてるときに感じた思いは?
- やまだ
- リクエストされていた中の“心情曲”というものが今回最も難しいカテゴリーでした。「ヴィンランド・サガ」においては、単に「悲しい」「嬉しい」といった表面的な心情では浅すぎてしまう気がしたので、そういうことに対してではなく、もっと「生きるとは何だろう」といったことを考えていくのがSEASON2だと思いました。僕はあまり理詰めで書いていくことはしないんです。「アルネイズのテーマ」は、結果としてとても美しい音楽になったのですが、彼女は生きるとか死ぬとかよりも大事な何かを表現したのではないか、と僕が感じたからだと思います。感性に従って自動的に曲を書き進めていくので、出来上がった後に振り返って分析すると、彼女はやっぱりすごく美しいものを運んできたんだなというのが僕の目線としてあります。
- 籔田
- 僕も心情に当てつつも実際はすごく客観的なんです。心情を「どの視点から見るか」が大事で、心情そのものを表現するようなことは音楽の演出では必要ないと思っています。それは画で明確に説明できるからです。僕が音楽で表したいのは、心情や現象を超越したところの何かなんです。先ほど、やまださんからアルネイズの音楽が美しくなったという話がありましたが、アルネイズがどういう状況に置かれて、どういうふうに生きようとしたのかという、人生に対する彼女の向き合い方が魂の美しさになっているのだと感じています。良い選択も悪い選択も含めて、生きる上で彼女が使ったエネルギーそのものがやっぱり美しかったのだと捉えたい思いがあります。彼女に限った話ではなく、SEASON2では「生きている」ということ自体の美しさを感じさせたいと思っています。
――SEASON1の頃から、やまださんは劇伴のなかにボーカル曲を書かれてきました。これはどんな役割を担っていますか。また、SEASON2ではいかがでしょう?
- やまだ
- SEASON1のときは、観る方に「これから壮大な物語が始まる」と期待を抱かせるファンタジーの定番としてトレーラーでも使っていただいていました。SEASON1ではソロボーカルでしたが、SEASON2では合唱を使っています。クラシック音楽はもともと合唱から始まっていて神に祈る役割を持っていたので、合唱パートを出すとそれは神を表現しているという意味にもなります。「ヴィンランド・サガ」は北欧神話とキリスト教の話でもあるので、その意味でSEASON2では合唱を取り入れることで神的な要素も持たせています。今回の音楽はハンガリーで収録したのですが、ハンガリーの合唱団が実際にハンガリー語で歌ってくれています。
――今の段階で視聴者が見ることができるSEASON2の映像はトレーラーですが、そこで使用されている曲はどのように作られたのでしょうか?
- やまだ
- トレーラーの楽曲は籔田監督からの追加オーダーで制作しました。こちらはベースはスペイン語ですが、それを崩した造語で歌ってもらっています。女性ボーカルを入れることで、やはり音楽性に強みが増します。楽器よりも人の声のほうが、より近く訴えるものがあるので、その距離感の調整を担ってくれています。