いろんな顔をもつ、讃岐GameN(さぬきげーめん)のコミュニティオーナー渡辺大さん

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今回は、高松市を拠点にイベントを開催するゲームクリエイターの渡辺大さんを訪ねました

ゲームクリエイターでもありながら、ゲストハウス『燈屋(とうや)』の運営もしている渡辺さん。今回インタビューの場所をお借りした『燈屋』さん、こちら「街の集い場」の名の通りに次から次へと人が来る来る!なかなかインタビューのお話が進まないほど大勢の方々が続々と集まっていました。

その日はちょうど夜に、週に一度のワンコインプラス1品持ち込みのゆる食べのみ会『行燈(あんどん)』の開催日でした。イベントもちょうどキリよい200回目で大変盛り上がっていました。

燈屋
燈屋|高松の燈りのゲストハウス 燈屋 Toya 燈屋は街の集い場です。日々、慌ただしい街の中にあって、すこしだけ深く息をすえるような。そんな場所を目指し
高松市亀井町にある燈りのゲストハウス燈屋

燈屋も讃岐GameNも活動を始めた時期はほぼ同時期だそうです。
”ゲームを作りたい”という思い、”場をつくりたい”という思い。
どちらも欲張って作り上げたという渡辺さんにその経緯・思いを伺ってきました。

目次

ゲームクリエイターを目指したきっかけ

―ご出身はどちらですか?

香川県です。松盆栽や植木で有名な鬼無(きなし)の辺りです。
18歳で香川を出るまでは、友だちとブックオフとゲーセン巡りばっかりする、、、最近の言葉で言えば陰キャってヤツだったので、今、いろんな人と一緒に街中で活動するようになるとは思いもしませんでした。人生何が起きるか分かりません。

―ゲームクリエイターになろうと思ったきっかけはなんですか?

そうですね。普段は精神科医をしているんですが、30歳になるくらいまで実はゲーム作りたいという気持ちを忘れてました(笑)
本当は子供のころからやりたいと思ってたんですけどね。

― 普段は精神科医をされているということですが、医者を目指したのにはどういったきっかけがあったのでしょうか?

大学生の時にインドに行きたい、マザーテレサの設立したカーリーガート1に行きたいという思いがあって、東南アジアの中部の方へ留学をしました。
そこでボランティアをした際に大きなカルチャーショックを受け、医者になりたいと思い、医学部を受験することにして、そこから大学に行き直しました。

―それは大きな転機になりましたね!
医学部に入って、どのくらいの段階でゲームへの情熱がふつふつとわいてきたのでしょうか?

医学部を卒業する手前の、医師国家試験の合格目前になったタイミングで思い出しました(笑)
そこで、こうしちゃいられないと思い立ち、プログラミングスクールに通うことにしました。

『一般社団法人讃岐GameN』とは

―そこで今の『讃岐GameN』に繋がってくるんだと思うのですが、
どんな思いやきっかけで『讃岐GameN』を立ち上げたのでしょうか?

そうですね。医師国家試験に合格して就職するまでの間の1カ月で、東京のスクールに通ったのですが、そこで、ゲームクリエイターを目指す同志と出会い、勇気づけられました。
私自身、一人でもくもくやるより仲間と一緒にもくもく勉強するほうが性に合ってるというのを、医学部受験の時に思っていました。
そして、香川に戻ってきてから、一緒にゲームを作る仲間を作るために讃岐GameNを立ち上げました。

―なるほど、仲間づくりのために作ったというのが一番大きいんですね!
コミュニティの大体の規模感(所属人数など)を教えてください。

所属人数、に関しては正式に数えてはいないのですが年に何度か集まった中で、一番多くて50名ほど集まることもあったので少なくとも50名以上が参加している団体といえると思います。

―結構たくさんの方がいらっしゃるんですね。
どんな活動をいつもされていらっしゃるのでしょうか?

活動内容としてはUnity勉強会やゲームジャム2を実施しています。
他にもゲームを身近に感じてもらえるよう、様々なイベントを開催しています。

―Unity勉強会はどんな雰囲気でどのくらいの頻度で行われているんですか?
例えば初心者の方が突然参加しても大丈夫なのでしょうか?

そうですね、場所はサンポート高松5階にあるオープンイノベーション拠点『Setouchi-i-Base』をお借りして月1回のペースで活動しています。
誰でもウェルカムなので来てもらう分には大歓迎ですが、現時点では講師などもいないので自分である程度は勉強してきてもらったり、知識があると助かります。ゆるもく会なのでゆるっともくもく自分の作業に取り掛かって進めていくという感じです。

―いままでどのくらいの期間活動されてきたんですか?

2018年にスタートしたのでもう5年…。6年目に突入した、くらいだと思います。

―すごい!6年も続く、となると結構長く続いてますよね。
長く続けていけている秘訣、また、運営していく上で大事にしていることなど教えてください。

メンバーが少ない時もあったんですが、その時々のメンバーのニーズに合わせて、色々と変化させてきた、というのは大事にしていることです。

あ、初年度に活動目的3書いたんですけど、これは今までずっとブレていないと思いますね。今年、社団法人化するにあたって定款をつくるときにも、この文言はほぼそのまま使いました。

この目的に少しでも近づこうと、2020年からは『最強ゲームジャム』という小学生からアマ・プロ含めて社会人が合同でゲーム制作をするワークショップを毎年開催して、世代を超えたクリエイター同士の縦の縁を作っています。

どんなテーマでもゲームは作れるということをクリエイターだけでなく、街の人たちにも体感して欲しいという思いで開催しました。

先日は商店街にある、1つの店舗をテーマにゲーム作りを行った商店街ゲームジャムを行いました。

2日間のイベントで1日目は案などを出し合ってプレゼンを行い、2日目に制作に取り掛かるというもので、こんなゲームが作れるの?という驚きやこんな人たちが香川にいたんだ、という、クリエイターと街の人たちの横の縁になればいいなと思っています。

完成した作品は11月26日に瓦町駅前の商店街で行われる『Sanuki X Game 20234』(第3回目)に展示されるので、ぜひそちらにも足を運んでみていただきたいです。

昨年のゲームイベントの様子

あの条例

―ここで、あの話を聞いてみたいと思うのですが…
『香川県ネット・ゲーム依存症対策条例』というものが2020年の4月に施行されましたよね。
11月開催予定の『Sanuki X Game 2023』はその条例がきっかけになって作られたイベントとお聞きしたんですが詳しく教えてください。

よく勘違いされるんですけど、条例がきっかけで作られたものではないですね。

もともと「商店街でゲームイベントを起こそう」という企画が2020年の1月ぐらいから動いていたところに、ゲーム条例の一連の出来事が起きました。

あの条例が生まれた背景には実際にゲームで困っている人がいるわけです。

前にも書きましたが、讃岐GameNの活動目的ってゲームづくりじゃなくて、それを通しての街づくり、社会づくりなんですよ。あの出来事から気づきを得て、僕たちも「ゲームの正の側面ばかり主張するのではダメだな。負の側面についても、自分たちできちんと向き合える機会にしていこう」というように企画のコンセプトが変わっていきました。

その気持ちが少しでも伝わればと、2回目の開催からは自分たちのスタンスを明記しました。

(Sanuki X Game 2022ホームページより)
香川県ネット・ゲーム依存症対策条例に対するスタンス
SXGは、条例に対するYESかNOかという極端な議論は望みません。依存症問題は放置してはならない問題であることは事実で、その目的は否定されるべきではありません。SXGは、イベントを通じ、ゲームのもつ本質や意義と依存症の現実との両面と向き合い、それぞれがゲームと生活のよりよい在り方を考えるきっかけになることを望んでいます。

以上のことから、
Sanuki X Gameは、エンターテイメントとしてのゲーム展示だけでなく、市民・ゲームクリエイター・医療関係者で対話する企画も設けています。

みんなで楽しい暮らしを作っていきたい

―それでは今後どうしていきたいといった展望などありますか?

どんなことでもゲームという形であそびに変えてくれるという集団がある、ということを街の皆さんに知ってもらいたいです。
もし、私たちと一緒にやりたいことがあれば遠慮なく、気軽に連絡をして欲しいと思います。

私たちみたいにモニターの外を飛び出してゲーム作りをするという活動をしてるのは全国でも珍しいんですよ。
私たちはただのゲームファンの集いをしていきたい、というのではなくて
みんなで楽しい暮らしを作っていきたいと思っています。

コミュニティとしてはゲームの外とのパイプを強く太くしていきたいと考えています。

街の人たちと繋がりを増やし広げていく中で、普段出会わない人と出会う新しい出会い、日常をただ生きていくだけではなかなか発見できないような新しい発見をこれからもしていくことで新たな連鎖が起きて見たこともない新しい
エンターテイメントを作っていけたらいいなと思っています。

また、新しい繋がりの中で制作経験を積んだ学生達が世界に羽ばたいていくことで、20年後ぐらいに
「なんかおもしろいことやってるところに、だいたい香川出身の人いるよね。」て言われるようになったら、ちょっと面白いかなと思っています。

さまざまな経験を通して見えたことをただ、しまっておくのではなく、どんどん新しいものや人と掛け合わせていき、新しい何かを常に作り続けている生粋のクリエイター渡辺大さん。
これから、どんな新しい反応を起こしていってくれるのか、今後も目が離せないですね。

お話をされた方

渡辺 大(わたなべ だい)さん

香川県を拠点にUnity勉強会やゲームイベントを開催する讃岐GameN(さぬきげーめん)のコミュニティオーナー渡辺大さん。

精神科医として働く傍ら、高松市中心部にある商店街、高松中央商店街にあるゲストハウス『燈屋』のオーナーをしている。

  1. (死を待つ人の家)マザーテレサが作った困窮や病気で亡くなってしまう方の最期を看取るための施設
    ↩︎
  2. 限られた時間の中でゲームをゼロから作って完成させるイベント ↩︎
  3. 讃岐GameNは、ゲーム制作を通して、『どのような境遇でも人は創る力に満ち、夢は叶えられる』社会を実現することを目的とする。上記の目的のもと、初心者から上級者まで参加できる学習・創作の機会を提供し、参加者ひとりひとりが小さな成功体験を積み重ね、夢に向かっていけるようになることを目指す。(e-とぴあクラブ定款) ↩︎
  4. ゲームクリエイターによる総合文化祭、瓦町駅前の商店街を舞台にして様々なオリジナルゲームが展示される ↩︎

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