2013年1月26日土曜日

(日本映画・男優編)
吉田義夫(1911~1986)
私が中村錦之助や東千代ノ介の東映時代劇に夢中だった
子供の頃、その敵役を一手に引き受けた悪役俳優達が居た。
彼らは交番の前に張られた指名手配犯の様に私には思えた。
その筆頭に上げられるのが、此の吉田義夫だ。
その悪い目付きで歌舞伎の見栄を張る様に錦ちゃんや千代ノ介を
嬲(いたぶ)る場面に彼を心底憎らしいと思ったものだ。
しかし彼は俳優に成る以前の戦前、京都市立芸術大学を出て
法隆寺の修復をしていたと云う変わり種。
戦後いくつかの劇団を経て東映の俳優に成ったという。
先に書いた様に、もっぱら悪役専門
東映時代劇全盛期の屋台骨を支えた1人だった。
彼は只の役柄で悪人を演じていただけなのに実生活でも憎まれ、
タクシーの乗車拒否に有った事もあるらしい。
晩年は好きな油絵を描いてのんびり過ごしていたようだが
山田洋次の「寅さん」シリーズ冒頭の夢のシーンの悪役で
起用され、笑わせたのは、まだ記憶に新しい。


進藤 英太郎(1899~1977)
上の吉田義夫より押し出しが強いので彼の上を行く悪を演じていたのが
此の進藤 英太郎。
彼の経歴が又,波瀾万丈。
戦前の九州から北海道を行ったり来たり悪い事を・・・じゃない
  商才に長けていたらしく結構稼いでいたらしいが
子供の頃からの芝居好きが高じて劇団入り
幾つかの劇団を渡り歩き映画に出演する様に。
溝口健二の「浪速悲歌」「祇園の姉妹」での脇役として評価を得る。
とにかく溝口の作品の常連として
または黒澤明や成瀬巳喜男の名作に足跡を残しているが
その後、東映の専属として敵役専門で活躍する。
私が彼を観たのも此の頃だ。
本当に憎にくしい演技はリアルで”あんな悪い人の娘では”と
娘の縁談がパーになったと嘆いていた。
それでもテレビでは「破れ太鼓」、東宝の「クレイジーもの」で
癇癪持ちのコミカルな演技を披露し
悪役からのイメージ・チェンジを計り、成功した
中々の商売人である。


月形龍之介(1902~1970)
上の二人より更に悪知恵が働く悪の総本山みたいな役は
この月形龍之介が一手に引き受けていた感がある。
ドスの効いた、その声に貫禄が有ったわけだが
それもそのはず彼は戦前のサイレント時代から
チャンバラ映画に出演し、坂妻こと阪東妻三郎との対決で
迫力有る演技を見せていた。
黒澤明の初期の作品「姿三四郎」の檜垣源之助役の
狂気は印象深いし「ジャコ万と鉄」のジャコ万役も
三船敏郎の鉄を上回る獰猛な役造りが鮮烈だった。
その彼がさんざん錦ちゃんを虐めた悪役から、
突然、初代の”水戸黄門”に転身したのは驚いた。
それまで”極悪人”だと思っていた私は戸惑ったが
助さん格さん役に、錦ちゃんと千代ノ介を従え
その腰の据わった風格有る演技に納得した。
晩年”東映集団時代劇”というジャンルに分類された
工藤栄一監督の「十三人の刺客」という作品で
彼が1人で大名行列を阻む役を演じたのも
彼ならでは存在感であった。

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