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富山「リバーリトリート雅樂倶」サステナブルな漢方で蒸される極上スパ体験〜旅で潤う vol.15

富山「リバーリトリート雅樂倶」サステナブルな漢方で蒸される極上スパ体験〜旅で潤う vol.15

LIFE STYLE DEPORTARE

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富山市内を流れる神通川と雄大な山並みからなる美しい神通峡。その畔の春日温泉郷に佇(たたず)むのがリトリート(隠れ家)にこだわって造られたホテル「リバーリトリート雅樂倶(がらく)」です。

大浴場には野趣あふれる赤石の設えの露天風呂。宿泊者専用のスパには、ドライサウナとミストサウナ(女性風呂のみ)や炭酸泉の水風呂が併設されています。

今年リニューアルオープンしたスイートルームにはプライベートサウナも備わり、1つのホテルで三様のサウナが楽しめる贅沢さ。薬草を使ったスチームバスで蒸されるオリジナルスパとの親和性も高く、漢方オイルのトリートメントで極上の癒しを体験できます。

「体の芯から温まるスチームバスはスリランカから直輸入。薬草のトウキは地元の農家さんたちが摘んで乾燥させたものです。通常トウキは根っこのみ使い、葉の部分は捨ててしまうことが多いのですが、捨てずに活用しています。輸入品が多いなか、国産の漢方は非常に希少です。薬の町”富山の伝統が受け継がれています」

と、支配人の義本真也さん。廃棄物を活用するサステナブルな取り組みは客室の壁や床、照明器具の材料などそこかしこに。

洗練された空間のなかに人の手のぬくもりが随所に感じられる。そんな人にも環境にも優しいホテルとの出会いに感謝です。

美術館のようなリバーサイドホテル
サステナビリティとラグジュアリーを追求

富山きときと空港から車で約20分。街の喧騒から離れ、豊かな自然を望むラグジュアリーホテル「リバーリトリート雅樂倶」の創業は2000年、新館アネックスの設立から18年を迎えた。

「新館は、建築家の内藤廣さんの設計で、“数寄屋の繊細さとアジアの土臭さ”をコンセプトにしています。メインロビーのプレキャストコンクリートのブロックを積み上げた校倉造りの壁など、新しい工法を取り入れていただきました」(義本さん・以下同)

館内には現代作家によるアート作品を展示。ガラスや陶器、金属、巨大なオブジェなど所蔵の豊富さには驚かされる。

「客室の中庭に展示されている作品は、作家の方々が実際にホテルに滞在し、制作したものです。ほかでは見られない現代アートをご覧いただけます」

客室は、ジャグジーバスや温泉風呂などが付いたスイートルームをはじめ、モダンな空間が広がるデラックスルーム、イギリス、デンマークなどの名前が付いたスタンダードルームからなる23部屋。

「客室は全て異なる趣を持ち、一つとして同じ部屋がないのが大きな特徴です。お客様に“驚き”をご提供し、毎回、来ていただくたびに新鮮な気持ちで楽しんでいただきたいという思いがございます。スタンダードルームのなかでは、天蓋ベッドのある208号室『ギリシャ』が女性に人気です」

創業以来いろいろ手を加えていくなかで、個性的な客室が誕生していったという。

「会議室をリノベーションしたモダンスイート308号室『影向(ようごう)』は、無機質な印象を残しつつ、スタイリッシュな洋室へと一新。また、ホテル内にある2つの茶室は、もともとは倉庫だったところを改修し、内藤さんに設計していただきました。立礼式の茶室『巍邦軒(ぎほうけん)』は、壁に岩肌のような剥き出しのコンクリートを施した斬新なデザインが非常に印象的です。モダンな雰囲気をのなかで腰掛けながらカジュアルに楽しんでいただけると思います」

さらに、今年3月には、“サステナビリティ×ラグジュアリー”をテーマに、環境に配慮した客室がリニューアルオープンした。本来であれば、捨てられるはずの廃棄物に新たな技法やデザインを加え、新たな製品を生み出す「アップサイクル」手法が取り入れられた。

「客室の壁と天井は、神通川の砂利を使用した左官で版築壁をつくって和紙を貼りました。床に使ったタイルは、富山県立山町で430年の歴史がある『越中瀬戸焼』の窯元で器を作るときに出た端材を練り込んだテラゾータイルです。陶芸家・釋永陽(しゃくながよう)さんの越中瀬戸焼のマグカップは客室でも使われています」

床に敷かれるカーペットの材料は使われなくなった漁網を使用。神通川の水面のような光を演出する照明には、建材用板ガラスの端材を活用した再生ガラスを材料にしている。和紙職人の川原隆邦さんやガラス作家の佐々木俊仁さんも富山県内に在住する若手クリエイターだ。

また、家具のアップサイクルも行われた。創業以来使用してきた家具や倉庫に眠っていた家具を塗り直したり、布を貼り直したりして化粧直し。

「ベッドカバーなどの生地や、少しほつれてしまっただけで出せなくなってしまったテキスタイルなどはティッシュカバーとしてよみがえりました。黒部市のインテリア・アパレルブランド『WRAP』がベッドスプレッドをアップサイクルしてくださって、防水効果もあるので実用性も高いです」

地元の食材を使い富山のかあちゃんの知恵を取り入れた独創的な料理

リバーリトリート雅樂倶のサステナブルな取り組みは、レストランで提供される料理にも。

ホテル内のフレンチレストラン「Trésonnier(トレゾニエ)」では、地産地消を目指し、田中シェフ自ら自社農園で無農薬・有機栽培で野菜を育ててきた。収穫した野菜を使った料理を提供するだけでなく、調理のときに出る魚の内臓などの生ごみを発酵させて肥料として畑に撒き、食の循環を作り出しているという。

「シェフの思いとして、お客様に美味しいだけでなく、体が健康になっていただける料理をご提供したいというのが基本で、それには、自分の子供にも食べさせられるような安全な野菜や食材を使いたいというところから、自分で畑をやることになりました。ところが、簡単には野菜は育ちません。何が必要かを考えたら、やはり肥料だろうということで、今度は自分で堆肥を作り始めたんです。その甲斐あって、今では野菜が大きく育ち、味も濃厚で旨みの強い野菜が収穫できるようになりました」

コース料理には、自社農園の採れたての野菜や富山湾で育った旬の魚介、そしてジビエや山菜、キノコなど富山産の食材がふんだんに使われている。

「冬でも旬の味を楽しめるように山菜を塩漬けにしたり、魚を熟成させたり、“富山のかあちゃんの知恵袋”的な製法に挑戦しているところも田中シェフの特徴です。江戸時代、飛騨街道は富山で獲れた越中ブリが大量に運ばれていたことから『ブリ街道』と呼ばれていました。コモと呼ばれる藁(わら)で巻いてゆっくり乾燥させることで熟成され、旨みが凝縮します。そうした昔から受け継がれてきた製法をフレンチに落とし込んでいるので、味もどこか優しいと評判です」

今年の冬は、ズワイガニや香箱ガニを中心とした「富山の蟹コース」を提供する予定だという(漁獲状況によりモクズガニや毛ガニも使用)。

また、館内には最上級の日本食がいただけるレストラン「樂味」もあり、宿泊時の食事は和洋お好みで選択可能だ。A5ランクの飛騨牛や北陸産の紅本ズワイガニなど旬の最高食材とこだわり抜いた器の饗宴を堪能できる。

笹野美紀恵

サウナトータルプロデューサー。実家は、“サウナの聖地”と称される「サウナしきじ」。サウナ・温浴施設プロデュースのほか医療機関と連携し、新しいウェルネスの形を提案している。

リバーリトリート雅樂倶

富山県富山市春日56-2
TEL:076-467-5550
https://www.garaku.co.jp

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写真:シマタエコ 取材・文:笹野美紀恵 編集:服部広子