学生が読んだ!瀬那和章『パンダより恋が苦手な私たち』

文字数 1,376文字

現役の大学生が本を読んで、率直な感想を語ります!

今回は瀬那和章さんの『パンダより恋が苦手な私たち』です。


どんなお話かは、漫画で読む『パンダより恋が苦手な私たち』でチェック!


そして12月15日には『パンダより恋が苦手な私たち②』が発売!お楽しみに!

パンダより恋が苦手な私たち 感想 /A.U



まず、表紙にときめいた。イラストがすごく好み、ジャケ買い必至だ!

いや、だけどこんな可愛い表紙なら、中身はベタで甘々な恋愛小説かもしれない。変人に恋をするなんてよくあるテーマだ。一瞬でもそう思った私が間違っていた。読んでみると、恋愛小説の枠に収まらない新感覚の小説だった。


主人公の一葉が編集者として担当する恋愛コラムは、SNSで募った恋愛相談に野生動物の求愛行動からヒントを得てアドバイスするという内容だ。これがなかなか面白い。相談自体はどこかで聞いたことのあるものばかりなのに、野生動物に絡めたアドバイスは意外にもずっと深いものに感じ、思わず「たしかに!」と納得してしまう。


でも、人間にしかない(かもしれない)ものもある。それは悩みや葛藤だ。主要キャラクターの一葉、椎堂先生、アリアだけでなく、一葉の姉、上司、友人も含めてみんな心の中に何かを抱えている。恋愛のことでも仕事のことでも、自分の持っているものと求められるものを比較して、考えてしまう。作中では、しっかり者の姉も、頼れる上司も、自分を持ってる友人も、弱い部分を見せる。動物は自分がモテない個体であっても、悩むことはないかもしれない。けれど人間は、その人自身の持つ性格や特徴、コンプレックスを嫌でもはっきりと自覚してしまうのだ。でもそこが面白いと、私は思う。だから、その「弱さ」までもがしっかり描かれた本作の登場人物は、みんな人間的で魅力的だ。共感もできるし、応援したくなる。


ちなみに、1番のお気に入りポイントは、一葉の語り口調だ。さらっとしていてちょっと荒っぽく、なんだか親友のおしゃべりを横で聞いているような気持ちになる。リズムも良くて読みやすい!


変人に、恋をした!

仕事のやる気ゼロ、歴代彼氏は1人だけ。
編集者・一葉は恋愛コラムを書くはめになり、「専門家」に取材を申し込むが――!?


雑誌編集者・一葉は悩んでいた。
憧れのモデルに恋愛コラムの連載を依頼するも、原稿を代筆する羽目になったのだ。
交際経験が少なく自信がない一葉は、
「恋愛を研究するスペシャリスト」の噂を聞いて大学を訪れる。
だが、そこで出会ったイケメンはとんでもない変人で!?
恋のヒントが詰まったシリーズ第1作!

☆登場人物紹介☆
柴田一葉:カルチャー雑誌の編集者。ファッション誌志望で、今の仕事にやる気が出ない。
椎堂 司:大学教員。「野生動物の求愛行動」にしか興味がない変わり者。イケメン。
灰沢アリア:伝説のスーパーモデル。女王様気質で、周囲をたびたび振り回す。

瀬那 和章(セナ カズアキ)

1983年兵庫県生まれ。2007年に第14回電撃小説大賞銀賞を受賞し、『under 異界ノスタルジア』でデビュー。真っ直ぐで透明感のある文章、高い構成力が魅力の注目作家。他の著作に、「花魁さんと書道ガール」シリーズ、『雪には雪のなりたい白さがある』『フルーツパーラーにはない果物』『今日も君は、約束の旅に出る』『わたしたち、何者にもなれなかった』などがある。

登場人物紹介

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