草野満代が問う「アルミニウムと持続可能性」 品質とリサイクル性の高さで、大注目の素材

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草野 満代氏、 石原 美幸氏
今、持続可能な社会に向けて、高品質でリサイクル性に優れたアルミニウムが注目されている。グローバルに事業を展開するアルミニウム総合メーカー・UACJは、2023年11月に新たに「マテリアリティ(環境・社会・経済に関わる重要課題)」を見直し、「持続可能な地球環境」と「ウェルビーイング(いきがい・幸せ・調和)」の実現を打ち出した。その狙いについて、フリーアナウンサーの草野満代氏が、同社社長の石原美幸氏に聞いた。

持続可能な世界を後押しするアルミの多面的な魅力

草野 アルミは私たちにとって非常に身近な金属の1つです。アルミが持つ特性について、改めて教えてください。

代表取締役 社長執行役員 石原 美幸氏
代表取締役
社長執行役員
石原 美幸氏

石原 アルミは地球の表層部における金属元素の中で、最も豊富に存在している物質です。メリットは「軽さ」「熱伝導率の高さ」「リサイクル性の高さ」など。例えば、自動車にアルミを使用することで、車体の重量を軽量化でき燃費向上に寄与しますし、飲料缶に使えば永続的にリサイクルすることも可能です。

中でも近年注目されているのは、リサイクル性の高さです。アルミは何度でもグレードを落とさずにリサイクルすることができるので、アルミ缶の約94%が回収・リサイクルされて、そのうち約71%が再びアルミ缶に生まれ変わっています

草野 アルミは、見えないところでも私たちの生活を支えている万能素材なんですね。回収率の高さに驚きましたが、サステナビリティが重視される今、アルミへの期待はますます高まっているのではないでしょうか。

石原 はい。アルミは発見されてから約200年しか経っておらず、ほかの金属と比べて歴史が浅い素材です。今後さらに用途が広がっていくと確信していますし、広げていきたいです。

※出典:アルミ缶リサイクル協会「2022年(令和4年)度  リサイクル率及びCAN to CAN率」

アルミを通して企業と消費者の共感を紡ぐ

草野 UACJは23年11月に「マテリアリティ」の見直しをされました。その狙いと内容について教えてください。

石原 環境や社会課題におけるステークホルダーへの向き合い方や企業に対する要請事項の変化、アフターコロナ下の社会システムの転換を踏まえて、マテリアリティの見直しを行いました。当社は、企業理念に「素材の力を引き出す技術で、持続可能で豊かな社会の実現に貢献する。」を掲げています。そのためには「持続可能な地球環境」と「ウェルビーイング(いきがい・幸せ・調和)な社会」を目指すことが重要だと考え、それを達成していくべく5つのマテリアリティを設定しました。

フリーアナウンサー 草野 満代氏
フリーアナウンサー
草野 満代氏

草野 企業としての存在意義を重視していらっしゃると感じました。近年、消費者は企業と「同じ船に乗っている同志」のような感覚を持っているからか、製造過程で環境に大きな負担をかけている商品は敬遠する傾向にあると思います。逆に、企業は利益追求だけではなく、自社の理念を伝える必要性が高まっているように感じます。

石原 おっしゃるとおり、当社の理念を伝え、そして製造過程を理解していただくことが、最終消費者にアルミを選んでいただくうえで重要になってきたと実感します。企業から「具体的に何に取り組んでいるのか、それがどのような価値をもたらすのか」を発信する必要があると思います。

草野 消費者は「限られた地球の資源を守りたい」という期待に応えてくれる企業かどうかを見ており、企業に要求する信頼感のレベルは高くなっていると思います。その観点からも、UACJのマテリアリティの見直しや対外的な情報発信は意義深いことですね。

目指すはアルミ循環の拡大とマテリアリティ関連の施策浸透

草野 UACJには多岐にわたるステークホルダーが存在していますが、サステナビリティの全体像をどのように描いていますか?

石原 当社の役割は「アルミニウムのサーキュラーエコノミーの心臓」だと考えています。アルミの原材料を加工して製品にし、世の中に送り届ける流れを「動脈」だとすると、使用されたアルミを回収し、戻す機能は「静脈」です。われわれはアルミの溶解プロセスを保有しているため、動脈と静脈をつないで心臓のポンプのようにアルミを循環させることができます。今後は、アルミ缶以外の分野にもリサイクルをさらに拡大していけるよう、社会にポジティブなインパクトを与えている方々や企業との共創を行いたいと考えています。

草野 素材を作り、さらに製品から素材に戻すということで、サーキュラーエコノミーの心臓のような存在ですね。自社でリサイクルも推進されているのはすばらしいです。

石原 これをグローバルでも実現できればと考え、日本のみならず東南アジアや北米の拠点でも体制を整えつつあります。それにより、サステナブルな世界により近づけると考えています。

草野 今後、マテリアリティに関連する施策を、社内外にどのように浸透していきたいとお考えでしょうか。

石原 まずは、社員一人ひとりがマテリアリティを理解し、実践を通して習慣化することが重要だと考えています。現在、社内でグループ企業理念の浸透を図り、私自身も各拠点で社員との「理念対話会」を実施し、そこで自分の仕事が誰の何に役に立っているかについて語り合っています。社外向けには、マテリアリティの概念を視覚化し、発信していく予定です。

草野 今回、アルミの優れた特性はもちろんのこと、UACJがその特性を生かすためにさまざまな技術を生かしながら事業を展開されていることを知りました。また、この200年でアルミの用途が拡大してきましたが、未来にはどんな発展が待っているのか、新しいアルミの姿を見るのが楽しみです。

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