物流大手が「脱・多重下請け」へタッグを組んだ セイノー傘下「ハコベル」に出資が相次ぐ事情

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ハコベルはこうした業界の仕組みを効率化するために誕生した。荷主はネット上で仕事を依頼し、運送会社とマッチングする。案件の9割は荷主が直接発注しているため、多重下請けを避けられる。

物流業界のイメージ図と運べるとの比較

ハコベルを利用することで荷主は荷物量に合わせて必要なだけ車両を確保できるようになり、物流コストを削減できる。運送会社は空き時間に仕事を受けて稼働率を高められる。ネット上で手続きが完結する点も特徴だ。

荷主と運送会社の双方にメリットのあるサービスだが、以前は知名度の低さから、顧客開拓は思うように進まなかった。そこでセイノー傘下に入り、協力して営業を進めてきた経緯がある。

今回、資本参加を決めた3社はBtoBビジネスを得意とする。福山通運は複数の荷主の荷物を全国ネットワークで運ぶ「路線トラック」の大手で、セイノーとは共同運行を行うなど協力関係にある。日本ロジテムは3PL(物流の一括受託)などを展開、ハコベルのサービスも積極的に活用してきた。

6次下請けまで発生

その中で山九は特殊な企業だ。港湾の荷役・運送から3PL、顧客の工場内での物流など幅広く展開する。同社がハコベルへの投資を決めたのは、自ら認識していた課題にぴたりと合うサービスだったからだという。

山九は子会社を軸に輸送を展開してきたが、一部では協力会社を介した6次下請けが発生するなど、全容を把握できていない面もあった。輸送の品質を担保するためにも、多重構造の解消は課題の一つだった。

山九は倉庫も比較的、自前主義でやってきた。写真は関西最大級の危険物倉庫群「関西ケミカルセンター」(写真:山九)

また、山九は輸送に関連したシステムの開発を計画していたが、ハコベルの輸送管理システムは現場のドライバーでも簡単に使える仕組みや、わかりやすさなどが魅力だった。カスタマイズもできるため、自社で構築するよりも早く、コストを抑えられることも決め手となった。

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