野党も称賛、自民「森山演説」が示す今の政治の欠点 国会議員在職25年、地方出身のたたき上げ人生

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自民党の森山裕・国対委員長
国会議員在職25年となった自民党の森山裕・選挙対策委員長(撮影:尾形文繁)

自民党の森山裕・選挙対策委員長が国会議員永年勤続の表彰で行った演説が与野党の議員らから称賛されている。ノーカット版のYouTubeも話題になっている。

働きながら学び、地方議員を経て参院、衆院の国会議員となり、党の国会対策委員長として歴代最長の在任を記録。「国の基本は地方と第1次産業」「野党の意見に耳を傾ける」という訥々とした訴えは、今の政治が失ったものは何かを教えてくれる。

森山氏は4月27日の衆院本会議で細田博之議長から勤続25年の表彰を受けた後に登壇。約6分間の短い演説をした。鹿児島市議、参院議員、衆院議員の計48年間の政治活動を支えてくれた地元の支援者にお礼を述べた後、「ほとんど家庭を顧みなかった私を支えてくれた家族に感謝を伝えたい」と語り、言葉を詰まらせた。

小中学生のころは自転車で新聞配達

森山氏は1945年4月、鹿児島大空襲の日に鹿児島県鹿屋市内の防空壕で生まれた。実家は農業と新聞配達業を営んでいた。

「小中学生のころは朝6時から眠い目をこすり、錦江湾に浮かぶ桜島に一礼し、自転車で新聞を配っていた」「中学卒業後はつらい農業はやりたくないと思い、鹿児島市内の会社に就職。会社の理解があったおかげで、働きながら夜間高校に通うことができた」という。

自民党にはもともと、森山氏のような「苦労人」「たたき上げ」がたくさんいた。田中角栄、鈴木善幸、竹下登、渡辺美智雄各氏……。それが、自民党政権が長く続いて、世襲議員が増えるようになった。

安倍晋三、石破茂、岸田文雄、林芳正、鈴木俊一、河野太郎、福田達夫、小泉進次郎各氏……。東京生活が長く、地方の実情にも疎い世襲議員が増える中で、「苦労人」の声が政治に届いていないのではないか。それが自民党の政策の行き詰まりにもつながっているのではないか――森山氏の訴えは、そんな現状を映し出している。

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