ライザップ社外取締役2人はなぜ辞任したのか 経営再建の最終段階を前に「波乱」の兆し

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まさに真相はやぶの中だが、コロナショックとは関係なく、「対応すべき経営判断」をめぐって、瀬戸社長と社外取締役2人の間で意見の相違が起きていた可能性は指摘できる。

『ライザップ、新型肺炎で「経営再建」に漂う暗雲』で報じたように、現在の同社はボディメイクジムやゴルフスクールなどの本業が芳しくなく、銀行借り入れの返済原資となるキャッシュの創出力が鈍っている。サンケイリビング新聞社など未上場子会社での赤字も続いている。

そのため不振事業や赤字子会社の整理、さらには子会社が保有する有価証券などの換金売りを銀行から迫られている。2人の社外取締役はそれらの早期売却を促していたとみられる一方、瀬戸社長は赤字子会社を売るにしても売却益を出すことに固執していたようだ。

中井戸氏の「三くだり半」をどう受け止めるか

振り返れば、2019年6月の中井戸氏と望月氏の就任時、入れ替わるように在任1年で取締役を退任したのが元カルビー会長兼CEOの松本晃氏だった。

元カルビー会長兼CEOの松本晃取締役(右)は、ライザップの問題点を看破していた。写真は2019年5月の決算会見(撮影:尾形文繁)

松本氏は、ライザップの買収戦略の問題点を看破し新規買収をなお進めようとしていた瀬戸社長にストップをかけた功績がある。

社内取締役にもかかわらず評論家然とした態度だった点については賛否両論あるが、ライザップの経営から一定の距離感を保っていたからこそ、取締役退任後にライザップの特別顧問に納まり、「別れた後もよい関係」をアピールできた。

一方、同じ経営者出身の中井戸氏は、社外取締役ではあったものの「ガバナンスの監督機能を生かすには業務の執行はしなくても、その会社の業務を肌感覚で理解していないといけない」という持論を持っていた。そこで週3回は出社して取締役会議長も務めるなど、「準常勤」の立場でライザップに関わり、経営中枢の実態を見た。

その中井戸氏が今回、ライザップに事実上の「三くだり半」を突きつけた。この事実はライザップにとって決して軽くはない影響を与えるはずだ。

緒方 欽一 東洋経済 記者

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おがた きんいち / Kinichi Ogata

「東洋経済ニュース編集部」の編集者兼記者。消費者金融業界の業界紙、『週刊エコノミスト』編集部を経て現職。「危ない金融商品」や「危うい投資」といったテーマを継続的に取材。好物はお好み焼きと丸ぼうろとなし。

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