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2018年03月14日

鬼龍院翔(ゴールデンボンバー)インタビュー 『満たされない想いが、僕の原動力』【俺達の仕事論vol.28】

V系 インタビュー 鬼龍院翔 ゴールデンボンバー 金爆

日夜、洗練されたメロディやリズムでファンを魅惑し続けるヴィジュアル系バンドのアーティストたち。いまは表舞台で活躍する彼らだが、そこに至るまでには様々な苦労体験や成長エピソードがある。この連載では、そんな彼らが日頃語らない過去の出来事やバイト体験について掘り下げます。

「女々しくて」のヒット、4年連続紅白歌合戦出場と、今や国民的ヴィジュアル系エアーバンドであるゴールデンボンバー。そのボーカリストであり、全ての楽曲を作詞・作曲する鬼龍院翔さんにご登場いただき、アルバイトの経験について伺いました。

 

物心ついたときからお笑い芸人になりたいと思っていた

V系 インタビュー 鬼龍院翔 ゴールデンボンバー 金爆――最新作の『キラーチューンしかねえよ』というタイトルの通り、名曲をたくさん生み続けている鬼龍院さんですが、子どものころはどんな夢を抱いていたのでしょうか?

僕は物心ついたときから、いつかお笑い芸人になりたいと思っていたんですよ。だから、中1のころにMALICE MIZER(GAKCTが在籍していたヴィジュアル系バンド)さんに出会って音楽を好きになり、高校では3年間バンドを組んでみたりもしつつも、卒業してすぐにお笑いの養成学校(東京NSC第9期生)に入ったんですね。でも、ハリセンボンや、しずるも居たりして周りの笑いのレベルが高すぎたし、自分がやりたいことではお笑いの世界で売れることができないということを1年で感じまして……。

――そこで、もうひとつの好きなことである音楽の道へ進もうと決意したわけですか?

そうです。お笑いの道に可能性を見出せなくなったから、ちょっと心の片隅に残っていた音楽をやるかっていうくらいで、最初は本腰を入れていなかったんですけどね。途中からスイッチが入って、そこからは死にもの狂いでした。

 

失恋をして、どうせだったらめちゃめちゃ暴れようと思った

V系 インタビュー 鬼龍院翔 ゴールデンボンバー 金爆――スイッチが入ったきっかけというのは?

失恋をして、もうすべて人生を終わらせてしまいたいと思ったんですよ。でも、どうせだったらめちゃめちゃ暴れてからにしようと思って、曲もネタも全然ないのに、月に9本くらいライブを入れて。お客さんが引いてしまうかなとかそんなことはおかまいなしで、とにかく驚かせられるならなんでもいい、目立てればなんでもいい、自分自身が生きているということを強く感じられればなんでもいいっていう、今思えばだいぶおかしい状態でした(苦笑)。

――とにかく、生きている証を強く刻むんだと。とはいえ、バンドを始めたてのころは、当然バンドだけでは食べられないですよね。

もう、赤字です。ライブをするたびに2万円くらい吹っ飛んでいってしまうので。

――バイトをしながらバンド活動をされていたと思うのですが……さかのぼると、そもそも最初にバイトをしたのはいつごろなのでしょうか?

高1の秋ですね。文化祭にバンドで出て、僕はギターを担当したんですけど、もっと目立つためにバイオリンを手に入れたくて親の知り合いがやっている近所の日本料理屋さんで皿洗いのバイトを始めたんです。ただ、向いていなかったのかずっと叱られ続けて……。その仕事は時給も安かったので、欲しかった7万円のサイレントバイオリンが買える目途が立ったので、2ヵ月で、そこは辞めちゃいました。

その次にバイトしたコンビニは、仕事がものすごくラクで、しかも時給が皿洗いより全然高かったんです。皿洗いのバイトのときの苦しさを思うと、バイト選びは慎重になったほうがいいなということは痛感しました(笑)。その後、バンドをやりながらバイトをしたのが、小規模チェーンのレンタルビデオ店です。朝5時から朝9時までのひとり勤務の時間、めちゃめちゃ楽しかったですね。カウンターの中で、バイオリンの練習とかしていましたもん。

――そんなに堂々と!?

お客さんが来ても僕がすぐにバイオリンを置けば、別にお叱りを受けることもなく。

 

バンド活動以外の時間は全部バイトをしていました

V系 インタビュー 鬼龍院翔 ゴールデンボンバー 金爆――なお、バンドだけでは食べられず、でもバンド活動が忙しくてなかなかバイトに入れずという時期が一番苦しそうに思うのですが……。

まさにその通りです。バンド活動以外の時間は全部バイトをして、それでも哀しいくらい貧乏で。「夢を追いかける!」と啖呵を切って家を出たものの、独立してみたらバンドとバイトの両立があまりに過酷だったから、じつは一度実家に出戻ったんですよ。それってめちゃめちゃかっこ悪いし、男としてはやりたくないことなんですけどね。とりあえず、その時期の実家での居場所の悪さは、ハンパなかったです(笑)。

音楽に転向したことを言っていなかったので「こいつお笑いやるって言っておきながら、いつの間にかバンドっぽいことやっているぞ」って家族には思われていたと思います。片や結婚して両親と同居していた兄はすでに孫の顔を見せていて。初孫フィーバーの中、当時コンビニに勤めていた僕は、朝の9時くらいにコンビニ弁当を手によれよれで帰ってくるっていう(苦笑)。でも、恥に耐えてでもバンドを全力でやって、駄目だったら全て失ってもいいやとは思っていました。

 

音楽、ライブをちゃんとやるということは、これからも忘れちゃいけない

V系 インタビュー 鬼龍院翔 ゴールデンボンバー 金爆――その後、バンドの活動が軌道に乗り始めて希望が見えるようになってくると、気持ち的にも変化があったりして?

最初のころは破れかぶれで始めたことだったから、サインを考えていなくて。僕はずっと漢字でフルネームを書いていたんですけど、喜矢武(ゴールデンボンバー/ギター)さんがある時から突然、ぐにゃぐにゃっとした、いわゆるサインぽいのを書くようになったんですよ。それを見て、「こいつスターになるつもりなんだ」と衝撃を受けつつ……僕は、自分なんかがサインを求められるくらい有名になるとは思えないまま、今に至ります(笑)。

――だとすると、『NHK紅白歌合戦』にも出場してお茶の間的な人気を得た今、どんな心境なのでしょう。

たとえばステージでは、一瞬の火花が散っているような感覚で、「キャー!」という声援を浴びているというか。

――ただ、活動歴10年を越えても、初期のころからずっと熱烈に愛してくれている人もたくさんいるじゃないですか。

そういう方たちには手を合わせて拝みたいくらい感謝していますけど、総体的に見て「キャー!」の期限は短めですからね。音楽、ライブをちゃんとやるということは、これからも忘れちゃいけないなと思います。

 

バイトは自分の向き、不向きを知るいい機会。

V系 インタビュー 鬼龍院翔 ゴールデンボンバー 金爆――実際、ゴールデンボンバーは素敵な音楽、楽しいライブを届け続けてくれているわけですが、毎回の大きな期待感に対してプレッシャーは感じないのでしょうか?

ライブ会場がどんどん大きくなっていった時期は、エンターテインメントとして前回よりもすごいことをやらなきゃいけないというプレッシャーがあったんですよ。でも、もうなくなりました。それは曲に関しても然りですね。長く続けたいなら、自分にとってプラスにならない意見はゴミ箱に捨てるべきなんですよ。そう言うと、「賛同意見だけしか聞かないんですか?」って炎上しがちなんですけど、すべての評価は受け手の感情に左右されるわけですから、悪意まで全力で受け止めていられないので、僕は胸を張って、「はい、そうです」と言います。

――本来、表現者とは凛とそう在るべきなのでしょうね。そんな鬼龍院さんが、これからバイトを探そうとしている人、夢を追う人に伝えたいのは、どんなことなのでしょうか?

バイトって、お金を稼げるだけでなく、自分の向き不向きを知るいい機会だと思うんですよ。なので、やってみて自分に向いていないなと感じたら、また別のバイトを探せばいいし、変に気を遣って自分の人生の時間を無駄にする必要は、まったくないと思います。そして、夢を追うすべての人に言いたいことは、「幸せになろうと思うな」ということですね。

――名を成せば幸せになれるのではないかな、なんでも手にできるのではないかな、と思ってしまいますけれども。

いや、あのころ失ったものはもう取り戻せませんよ。僕は高校の後夜祭に出たくても出られなかったことが、ずっと悔いとして胸の中に残っていたんですけど、その後、同規模の会場でワンマンライブをできても、なんだか空しかったですから。その気持ちは、「あしたのショー」という曲にもしています。でも、なんでも手に入るように見えてなかなか思ったものが手に入らないから、活動を続けるんでしょうね。そういう満たされない想いが、僕の原動力でもあります。

 

■Profile
鬼龍院 翔(キリュウイン・ショウ)

2004年結成のヴィジュアル系エアーバンド、ゴールデンボンバーのボーカリスト。バンドの全楽曲の作詞・作曲を手がける。ゴールデンボンバーは「女々しくて」がヒットし、2012年から4年連続で紅白歌合戦に出場する。2018年3月より、さいたまスーパーアリーナ 2DAYS 含む 全国36公演のツアー「ロボヒップ」開催中。

◆ゴールデンボンバー Official Website:http://pc.goldenbomber.jp/
◆ゴールデンボンバー Official Twitter: @KinbakuTw

企画・編集:ぽっくんワールド企画 取材・文:杉江優花 撮影:田中真二

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