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第53回 ─ 椿屋四重奏ワンマンショー〈くれない心中〉@下北沢CLUB Que 5月21日(金)2004年

連載
ライヴ&イベントレポ 
公開
2004/06/03   17:00
更新
2006/01/19   18:37
テキスト
文/久保田泰平

それまでぐずついていた天気も、午後からは晴天に恵まれ、椿屋四重奏の初ワンマン・ライヴ(2デイズ!)初日を祝うかのような陽気となった。そんな陽気にも煽られてか、会場のなかは開演前から熱気ムンムン。


 ……とかなんとか、しらじらしい前置きはさておきまして、隅々までぎっしりと埋め尽くされた下北沢・CLUB Que、その様子を目の当たりにして、椿屋四重奏への並みならぬ期待感は我々が考えていた以上のものだと、まずは実感させられた次第。よくもまあ、集まったもんですな。
 
 そんなこんなで、ねっとりとしたギターの調べ──サンタナのナンバーをSEに椿屋四重奏の3人が登場。黄色い歓声が飛ぶ。下北沢で初ワンマンというレヴェルのバンドのお客さんは、あたりまえのように耳の早い女子ファンが多いのですが、いわゆる下北沢界隈をベースにするギター・バンドのお客さんとくらべて、ちょっぴり小綺麗な娘さんたちが目につくような気も……と、それはともかく、1曲目は最新アルバム『深紅なる肖像』同様“ぬけがら”から。丁寧に爪弾かれるギターの一音一音に、会場には水を打ったような静けさが。そして、その静寂を切り裂くかのように、“終列車”の重たいリフ、続いての“成れの果て”というアルバム同様の流れで、お客さんのテンションはググーッと上がる。なんかこう、彼らの堂々たる佇まいやドラマティックでスケールのデカい音、そこから放たれる目に見えない空気みたいなものが、もはやキャパ300人そこそこの同会場では窮屈過ぎるぐらいの質量で迫ってきます。なもんだから、初ワンマン初日のステージが始まったばかりだというのに「これはSHIBUYA-AXで観たいもんだな」などとブツブツ考えてみたり……。

 それにしても、お客さんはあまり動かない。決してノッていないわけではなく、その様は〈釘付け〉といった表現が正しい感じでしょうか。足腰があまり丈夫ではない(恥)私にとって、同じ体勢で観続けるのは楽なものではないのですが、ステージ中盤で聴かせてくれた“朱ヰ鳥”(ヴォーカル/ギターの中田裕二がごく初期に書いた曲だとか)の弾き語りなど、ヴァリエーションに富んだ楽曲が多いこともあり、気分的に楽。“導火線”“舌足らず”“空中分解”“小春日和”と続く後半戦に入ったあたりでは、地味に身体を揺すりながら、尋常ならぬ熱さを己の胸のなかに感じておりました。無論、それは…… “かたはらに”“風の何処へ”と、2曲も振る舞ったアンコールが終わっても、さらなるアンコールの声を張り上げていたみんなとて同じ気持ちだったのではないでしょうか。

 それにしても、堂々たる初ワンマン。もうちょっと大きいハコでワンマンを観れる日も、そう遠くはないでしょう。