ソロモン諸島ガダルカナル島ホニアラ市訪問記

さる7月7日から13日の間、南太平洋に浮かぶソロモン諸島の首都ホニアラ市を訪問してきました。同市はガダルカナル島に位置しますが、この島は第二次世界大戦の激戦地として、日本人の誰もが名を知る島でもあります。

西宮市は、西宮市の環境NPO法人こども環境活動支援協会(LEAF)が担うJICAの活動から繋がった縁から、ホニアラ市の環境保全活動を支援しており、2019年には当時のホニアラ市長らが西宮市を来訪、当市の環境施設や取り組みを視察していただきました。そして同年にはホニアラ市も環境学習都市を宣言し、2022年には、ゴミ問題に悩むホニアラ市の一助になればと、西宮市のごみ収集車を2台、同市に寄贈致しました。

そうした積み重ねもあり、今回は西宮市とホニアラ市の間で環境分野における協力関係を構築しようと、両市間でMOU(覚書)を締結すると共に、ホニアラ市長らと共に、在ソロモン諸島日本大使館やJICAの協力もいただき、環境学習都市として今後に向けたフォーラムに出席し西宮市の取り組みなど報告するため、訪問することとなりました。

4泊7日と書きましたが、行きも帰りも香港とポートモレスビーを経由して機中泊が含まれますので、実際の稼働は3日半にも満たないものでしたが、日本大使館の三輪大使らの心温まるサポートもあり、環境大臣や保健大臣、教育省次官やガダルカナル州知事、そして在留邦人の方々と意義深い懇談をすることができました。

この地は、日本人にとって忘れられない地でもあります。81年前、このガダルカナル島は太平洋戦争の激戦地となりました。今回の旅では、慰霊塔を訪れ、心ならずもこの地で眠ることとなった二万余もの英霊に対し、感謝と鎮魂の思いを捧げる機会も得ることができました。

また、当時の戦闘機などが一箇所に集められた民設の戦争記念館や、沈没したままで海辺に残る輸送船鬼怒川丸の姿を見、また今なお続く、第二次大戦時の不発弾処理の現場も視察させていただきました。加えて、遺骨収集の状況についても大使から詳しく聞かせていただきました。第二次大戦の処理は、今なお続いているという現実を改めて認識したところです。

一方で、心配していた対日感情については、決して悪いものではありませんでした。その点では大戦を引きずってはおらず、むしろ日本大使館やJICAを通じた草の根支援が、現地の人々にとっては温かく迎えられ、多くの感謝の言葉を投げかけてもらいました。

西宮市のごみ収集車についても、更新期限を迎えた車両を送ったのですが、現地責任者から「あの車はよく動くよ! 壊れないし! 助かるねー!」と言ってくれました。JAPAN quality と日本人の心遣いが、ソロモン諸島の人らにも受け入れられていると感じました。

さて、本論のホニアラ市における環境問題ですが、はっきり言ってかなり酷い状態です。急激な人口増加と都市化、それに伴う廃棄物の増加に都市機能が全く追い付いていません。それ以前に人々がごみを集めることすら不十分で、浜辺はゴミで溢れています。美しいはずの海は、さまざまな排水がおそらく多量にそのまま流されているのでしょうか、匂いこそしませんが、淀み、ごみもぷかぷか浮き放題、目の前の海では泳ぐには躊躇するほどです。ホニアラ市に着いた当日にごみ集積場を視察しましたが、とにかくあらゆるごみが積み上げられているばかりで、なかなか厳しい現実です。

そうした都市環境の深刻な状況は、市役所も市民も認識しているようでした。大臣や市長、そして市の担当者も、真剣にこの難題に向き合っておられますが、なんせすごい勢いでの都市化に、施策が追い付いていません。この課題を改善するためには、行政の取り組みだけでは無理で、市民の理解と協力が不可欠です。西宮市では、地球環境を守る機運を市民と共に盛り上げようと、環境学習都市宣言を行い、主に子どもたちに対して、環境意識の向上や身近な実践などのプログラムを提供してきましたが、同様の仕組みをホニアラ市に提供しようと、JICA とLEAFの皆さんは奮闘して来られました。ホニアラ市においても、市民と共に学ぶ、ここに活路を見出しているとのことです。

現状を鑑みると、道程はとても険しく長いものにも思えますが、思いを持って立ちあがろうとされるソロモン諸島の方々を、私たちなりに応援したいと思います。

今回、教育の状況も視察したいと考え、ソロモン国立大学と、セントジョンハイスクールを訪問しました。ハイスクールとはいいますが、日本で言う小中高校がひとつにまとまった学校で、6歳くらいから高校生の生徒たちは、珍しい訪問客(私たちのこと)をとても歓迎してくれました。目をくりくりさせて見慣れぬ私たちを見る子どもたちの目は、とても輝き、若い国のエネルギーを強く感じるものでした。大げさな表現ですが、人類の可能性を感じる、そんなエネルギーでした。数百人の生徒が、ソロモン諸島の国歌を高らかに歌い、その後「君が代」が流され、私や大使が歌う姿を、ガダルカナル島の子どもたちはじっと見守ってくれました。校長先生と私のスピーチの後、生徒たちが私たちの前で、伝統的な民族舞踊を見せてくれ、学校中がエネルギーに満ちた壮烈な歓声に包まれたのは、とても印象的でした。

一方で、現地ではなかなか厳しいリアリティを目の当たりにしました。それは、基本的な教育環境が、驚くほど整っていないと言うことです。そもそも義務教育制度もなく、一定の学費が必要なので、必ずしも全ての子どもたちが学校に来れていません。首都ホニアラへの人口流入など人口増加に伴い、子どもの数も増加の一途を辿り、教室には子どもたちで溢れています。溢れすぎて朝からの授業だけでは対応できず、子どもたちは朝の部と昼の部に分かれて学校に来ています。今の日本では考えにくいことですが、教室など基本的な教育資源も足りない状況は、思った以上に大変な様子です。

訪問前には、現地校と西宮市の学校とリアルタイムでのオンライン交信を通じてコミュニケーションできるような提案をしたいと思っていたのですが、そもそも最低限のICT環境も不十分であるため、軌道修正の必要性を認識させられました。

ではありますが、ホニアラ市と西宮市の子どもたち、生徒たちとの何らかの交流の可能性を実現したいと思っています。今すぐにリアルタイムのコミュニケーションができなくとも、やれることはあるはずと思います。

西宮市は、これまでの間、アメリカのスポーケン市のほか、ブラジルのロンドリーナ市、フランスのロット・エ・ガロン県とアジャン市、中国の紹興市と友好関係が紡がれています。それらの交流は、今後も可能な形で続けていきたいと考えていますが、一方でこれら4市は地球規模で見ると、相応に発展している地域でもあります。故に、私としてはこれらの4市との関係だけでは気付けない、そして築けない、次の世代を担う西宮の若者に対し、グローバルな課題、リアリティをまざまざと認識するための糸口を作りたいと考えていました。

国際連合は、持続的な開発目標としてSDGsを掲げ、日本でも注目を集め、この目標に沿った自治体や企業の運営が推奨されています。私も西宮市政の遂行にあたり、SDGsを意識しています。日本国内でもなかなか達成の困難な目標もあるSDGsですが、その一方で発展途上国におけるSDGsの達成度合いは、我々のそれとははるかに遠く、同じ地球にいながらも、私たちが当たり前に享受している環境を、相当数の人類が手にできていないことに、大きな衝撃を受けるものです。私は基礎自治体の長ですから西宮市のことをしっかりマネージするのが最大のミッションですが、同じ地球の市民として、西宮市民と共に出来る対応をしていく、そして西宮で育つ宮っ子たちが、西宮から世界に目を向ける機会をつくる、そうした形で貢献したいと考えています。

ガダルカナル島では、見たことのない鳥や草木も目にすることができました。海も、少し都心を離れると、透き通るような世界が広がっているそうです。太平洋のど真ん中に位置するこの島は、日本にはない、地球の大自然を感じられる魅力があります。また、One Talkシステムと言われる人々のつながりがあり、親戚縁者を支え合う、素晴らしい風習があるおかげで、貧しくとも街中に浮浪者らしき人も見当たらない、温かい人々の国です。一部の途上国で感じられるような、街を歩く際に感じる、危険な匂いやしつこいモノ売り、殺伐とした空気は全く感じられませんでした。

この素晴らしき潜在力のあるソロモン諸島が、直面する難題を乗り越え、素晴らしい地へ発展することを心より願うものです。この度の訪問に際し、お力添えいただいた全ての皆様に感謝し、報告とさせていただきます。

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