近詠十三句
太宰府 坊城 俊樹 令和6年1月
神鏡の故に映らず秋の風
狐火を粛々と燃す都府楼趾
冬の蝶永久の礎石へ行つたきり
太宰府は一千年の枯野へと
千年の冬列柱の礎石群
寒の紅ひき臣虚子の碑へ参る
紫は年尾の色の菊花展
冬日燦五重塔を金ぴかに
大仏が絢爛となる神の留守
五重塔深紅や冬の火焔とし
天智天皇の句碑とは虚子の秋
胎内の地獄めぐりを出て寒し
五重塔極彩色に冬ざるる
「虚子への俳話」168
「花鳥」令和5年2月号より転載
「金子兜太・黒田杏子 対談」2017年5月30日・NHK学園にて
この対談はかつてNHK学園で私が第一部として虚子の講演をした、その後第二部としておこなわれた金子・黒田氏の対談の模様を私が会場で速記をしたものです。このお二人とも故人となられた。誤謬などはご容赦を。
坊城俊樹
俊樹消息
2023年1月
此の度の能登地震により被災された誌友の皆様にお見舞申し上げます。
坊城 俊樹
2024年1月
あけましておめでとうございます。しかし本年も大きな震災や事故から始まった。
わたくし個人は新年からJAL.日本航空の「世界子供ハイクコンテスト」の選者をするために日本航空に出向いた。丁度その頃は羽田空港でJAL.と海上保安庁機の事故直後のころ。
審査員室には日本航空の会長も来られその話題となった。そこで語られた事は女性の若い客室乗務員が最後まで死力を尽して乗客を退避させた事であった。
後日会長がその乗務員を労うために会長室に呼んだがそこで初めて彼女は泣き崩れたという。張り詰めていた仕事への糸が切れたのだろう。
私の妻の父も日本航空の顧問でパイロットであった。だからそれらを聞いて私も少し誇らしく感じた。
近詠十三句
シャンデリア 坊城 俊樹 令和5年12月
小鳥来よ殺戮もなき民衆へ
カルメンのルージュみたいなカンナの緋
ゴダールの矢口書店に小鳥来よ
天辺を神の落とせる桐一葉
大仏の耳朶垂れて小鳥来る
ぐるぐるの螺髪に秋日ぐるぐると
永遠のステンドグラス秋日濃し
アールヌーボーの色して秋薔薇
金色の小鳥は神の意の儘に
可愛くてカンナが好きで貧乏で
ステンドグラスの冬日もロココ調
冬の灯を零して永久のシャンデリア
累々と積まれて売れず古書の冬
「虚子への俳話」167
「花鳥」令和5年1月号より転載
藤原鎌足という者が藤原家の祖と言われている。
その鎌足の曾孫が藤原冬嗣。その孫に高藤という者がいた。
彼は鷹狩りの後、嵐に遭遇し南山科の人家に逃げ込んだ。するとそこに十四、五歳の可愛い娘が居った。そして一夜を過ごし都へ帰っていった。
俊樹消息
2023年12月
現在、JAL 日本航空と「世界こどもハイクコンテスト」を日航財団とともに制作しております。これは、日本航空の全世界の支店を通して世界中の子供たちの俳句(ハイク、haiku)と絵を募集して顕彰し刊行することです。
私は日本人の担当で予選を通過した約四百人の作品の選をいたしました。本当に子供達の能力は未知数でして、この絵が何なのかわからないけど素晴らしいものや、大人の発想には無いデフォルメされたものなど、本当に学ぶところが多い事に驚愕しております。
皆様の俳句もそんな初心の白紙に戻してみたらいかがでしたでしょうか。むろん私自身の俳句も含めてですが。
近詠十三句
鯔背 坊城俊樹 令和5年11月
秋分のど真ん中行く人力車
色鳥に囃され恋の人力車
臍出して柏翠の忌を乙女らは
鯔背なる俥夫に惚れたる秋袷
秋袷恋に疲れて吉備団子
まねき猫まねく蕎麦屋の柏翠忌
柏翠忌ならば機嫌の簪屋
羊羹に群がる乙女にも秋思
名にし負ふ名妓の路地に新酒酌む
横丁もつまくれなゐの夜となりぬ
神楽坂の猫も失せしか蚯蚓鳴く
仲見世に小鳥招きぬまねき猫
隠れんぼ横丁に冬が隠れん坊
「虚子への俳話」166
「花鳥」令和5年12月号より転載
道のべに阿波の遍路の墓あはれ 虚子
虚子が生まれた明治七年、風早郡柳原村西ノ下という土地に住んでいた。武士が帰農せねばならない時勢のことであって、一家はここでなれない農業にたずさわる。母はつねに過保護なくらい虚子をかわいがった。兄たち三人に囲まれた子供はだれからも大切にされてゆく。それは四国の松山郊外の海の村の人情ともかかわっているからだろう。
俊樹消息
2023年11月
わたくしは学習院という学校の出身であります。これは好きで選んだ道というより坊城家という特殊な家の成り立ちからの由縁であります。そのあたりは来月号の「虚子への俳話」に触れておりますのでお読みください。
また現在「学習院俳句会」というものの主宰をさせていただいております。花鳥の方も幾人かいらっゃしゃいます。それは「学習院輔仁会」というものに属しております。つまり学習院が正式に承認した倶楽部ということになります。体育会系では野球部、馬術部とかそういったものです。天皇陛下が属されていたオーケストラの音楽部もそれです。
何故君は坊城家なのに和歌、短歌の道を行かぬのだ、というお叱りを受ける事もありますが、その度に私は高濱虚子という母方の祖を尊敬してこの道に進みました、と申しますと全ての方が深くうなずいて下さる事こそが私の生涯の喜びであります。
坊城 俊樹(ぼうじょう としき)
俳人
昭和32年7月15日東京都生。祖父の高濱年尾のもとで俳句を始める。
俳誌「花鳥」主宰、公益社団法人日本伝統俳句協会理事、日本文芸家協会会員
日本伝統俳句協会新人賞、南日本新聞俳壇選者、国民文化祭選者
句集に『零』、『あめふらし』(日本伝統俳句協会)『日月星辰』、『坊城俊樹句集』(飯塚書店)、『壱』(朔出版)、著書に『切り捨て御免』(朝日新聞社)『丑三つの厨のバナナ曲るなり』(リヨン社)『空飛ぶ俳句教室』(飯塚書店)『俳句川柳短歌の教科書』(土屋書店)などがある。
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