今季メジャー初戦のワールドレディスサロンパスカップを制覇した吉田優利だが、SNS発信力は女子ツアーでも屈指といわれる。多くの人に見られるだけにSNSの使い方は難しい側面もあるが、吉田はどのような考えでSNSを使っているのか。

トッププロだと知らずにTikTokをフォローしている人は多い

 先週の国内メジャー初戦「ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ」を制した吉田優利。ツアー通算3勝目という実績もさることながら、強風が吹いて、速いグリーンというコースコンディションで多くの選手がスコアを落とす中、最後まで耐えてもぎとった価値ある優勝だった。

 彼女の知名度と人気もこれで急上昇したと思うが、そのバロメーターの一つとして分かりやすいのがSNSだろう。現在のフォロワー数は「TikTok(ティックトック)」が4.4万人、「インスタグラム」が15万9000人、「ツイッター」が5万人で、女子プロゴルファーの中でもこれだけのSNSを使いこなし、フォロワーを獲得している選手も珍しい。

SNSだけじゃなく常にファンを意識したプレーも吉田優利の魅力 写真:Getty Images
SNSだけじゃなく常にファンを意識したプレーも吉田優利の魅力 写真:Getty Images

 特に短い曲に合わせた振り付けで踊る「TikTok」に上がっている数々の動画だけを見れば、プロゴルファーと分かる人はきっと少ないはずだ。

 そもそも、これほどのSNSを使う理由が気になり、吉田に直接話を聞いてみた。

「自分が好きでやっているというのもありますし、ファンとの交流ができるのもそうなのですね。取材されるメディアをとおさず、フィルターなしで自分から伝えられる唯一のツールだと思っています。そこで大事にしているのは、自分が誰かのファンだったとして、そこに何を求めているのかです。それを考えながらSNSに写真や動画を載せることが多いです」

 つまりは、自分の好きなように投稿することは大前提だが、ファンの目線で何が見たいかを考えているということだ。インスタグラムに掲載されている数多くの写真にある、ゴルフ以外では気心知れた仲間たちと和気あいあいとしたプライべートショットの多くは、彼女の日常であり日々楽しく過ごしている姿が見てとれる。

「アスリートである以上求められることは高い」

 ただ、吉田には多くのフォロワーがいて、応援される立場である一方、色々な誹謗中傷のコメントも送られてきたりするという。SNSの使い方が難しいのはこの部分で、心無いコメントを気にすればキリがないことは、吉田自身が一番分かっていた。

「やっぱり試合で成績が出なかったりすると、意外にもたくさん“言われてきた派”なんですよ。でも、自分のことを分かってくれている人がいればいいし、そのときの気の持ちようとしては、アンチコメントを入れてくる人たちのために生きているわけではないですから、そこは気になりません」

自身3勝目となる「ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ」での優勝。SNSにはアンチがかき消されるほど祝福のコメントであふれた 写真:Getty Images
自身3勝目となる「ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ」での優勝。SNSにはアンチがかき消されるほど祝福のコメントであふれた 写真:Getty Images

「むしろ、こういう立場だからこそ、アンチが出てくるのは絶対にあると思うんです。でも、努力して成績が伴えばそういう声も減ってきますし、それは自分が一番よく分かっています。実際、自分自身がそれを証明したことでもあるので実感はあります」

 メジャーで勝ったことでSNSのフォロワーから祝福の声が増え、アンチが減るのは当然のことだろう。吉田はまだ23歳だが、こんな考え方も口にしていた。

「アスリートである以上、(周囲から)求められることは非常に高い。でもやるしかないっていう感じです」

 プロだからこそ常に結果が求められる世界で戦う吉田の強い意志と覚悟が見て取れる言葉。SNSから見える青春を謳歌する23歳は“素”の彼女であるが、ファンが何を求めているのかを考えてからの発信だからこそ、たくさんのフォロワーがついているのだろう。

 SNSとの上手な付き合い方や発信力もプロのアスリートには必要なスキルになるのかもしれない。

吉田 優利(よしだ・ゆうり)

2000年4月17日生まれ、千葉県出身。2019年プロ入り。西村優菜、古江彩佳、安田祐香らと同学年の“プラチナ世代”の一人。21年「楽天スーパーレディース」でツアー初優勝を飾り、同年の「ゴルフ5レディスプロゴルフトーナメント」でも優勝を遂げた。23年ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップで公式戦初制覇。エプソン所属。

キム・ミョンウ