日本全国にあるクルマのプロショップ。オーナーの趣味や得意分野が活かされた専門性の高いショップも数多い。そんな専門店のひとつが、ロータス7&ケータハム7を中心にイギリス車を数多く取り扱う群馬県のケントスピード。まるで倉庫のような広い展示場内には多くの販売車両が並び、その隣にはファクトリーも併設。数多くのパーツもストックされている。そんなケントスピードと、同店で扱う車両2台を紹介する。

新旧問わずセブンの整備からチューニングまで。

チューニングしたセブンを所有し、サーキット走行を楽しんでいる店長の町田さん(右)とスタッフの茂木さん(左)。いずれもメンテナンスはもちろん、レストアやチューニングに関して豊富な知識をもつ

イギリスのコンパクトなライトウエイトスポーツカー、ロータス7は1957年にデビューし、その後ロータスでの生産が終了した後もケータハム社が生産を引き継ぎ、なんと現在まで生産を続けている超ロングセラーモデルだ。

群馬県高崎市にあるケントスピードは、創業以来40年以上の歴史を誇り、新旧7シリーズを中心にイギリス車を数多く販売している。歴代モデルは様々なエンジンが搭載されており、また独特のフレームやボディ構造など、メンテナンスやレストレーションには独特なノウハウを必要とする。

同社では数多くの販売車両を販売するだけでなく、自社工場を完備し、部品も数多くストックしている専門ショップ。安心して愛車を任せることができる。

1968 LOTUS SUPER 7 (Series 3)

まるでゴーカートのようなアイポイントと、ダイレクトかつプリミティブなドライブ感が魅力のスーパーセブンシリーズ。長年生産されているだけに、年代によって仕様は細かく異なり、搭載するエンジンも異なる。ここに紹介するのはケントスピードにてレストアされた、ロータス生産時代の1968年モデル。グリーンのボディに赤い内装という、なんともブリティッシュな雰囲気を持つ美しい1台だ。

内装に合わせて赤いトランクカバーや背面にスペアタイヤを装着したクラシカルなスタイル。ブリティッシュスポーツと呼ぶに相応しい キャビン内はシートやダッシュ、カーペットにいたるまで赤で統一される。サイドブレーキはシフトレバーのさらに前に備わる

全体の歴史の中ではシリーズ3と呼ばれる時代のモデルで、通称クラムシェルフェンダーと呼ばれる流麗で流れるようなデザインが特徴のボディマウント式フロントフェンダーが備わるのが特徴。エンジンはクロスフロータイプ1・6リッターのいわゆるケントユニットと呼ばれるフォード製225E型直列4気筒で、4速マニュアルのトランスミッションとの組み合わせとなる。

エンジンは1.6リッターの通称ケントユニットでキャブレターはウェーバーのサイドドラフトを二基装着する

シリーズ3は、この1968年と1969年の実質2年間しか製造されなかったが、リアアクスルのトレッドが拡大され、それに伴いリアフェンダーも拡幅。そのほかフロントのディスクブレーキが標準化されるなど、より装備のモダナイズ化が進んだモデルだ。後のケータハムカーズが製造するモデルもこのシリーズ3をベースとするなど、歴代モデルの中でも完成度はかなり高い。ヴィンテージが欲しいが、ワインディングも楽しみたい人にお勧めのモデルだ。

ヘッドライトはフェンダーとノーズピースの間にマウントされ、その下にはウインカーも設置される シリーズ3からフロントはディスクブレーキが標準となる。ホイールは13インチの8スポークホイールを装着 サイクルフェンダーではなく、ボディ側にマウントされる通称クラムシェルフェンダーが備わる

【スペック】
全長:3350mm
全幅:1560mm
全高:1130mm
ホイールベース:2260mm
エンジン:直列4気筒
排気量:1600cc
燃料供給方式:キャブレター
駆動方式:FR
乗車定員:2名
価格:660万円(税込)

2023 CATERHAM SUPER 7 (480S)

エンジンフードやボディ側面がアルミ素地のボディとなるこちらのクルマは、ケータハムが生産をする新車のセブン(480S)だ。ケータハムがロータスから引き継いで生産を続けているのは、ロータス時代のシリーズ3をベースとしたモデルとなる。

この車両もサイクルフェンダーを装着し、後部にロールバーが備わるほかは前ページのシリーズ3のシルエットと大きな変更はないが、見えない部分は大きく進化している。フェンダーやダッシュパネルなどが軽量で強度のあるカーボン製となっているのもそのひとつ。

480Sに搭載されるエンジンはDOHCのフォードデュラテックで排気量は2リッター。NAで240psを発生し、現在入手できるセブンの中ではNAエンジンで最強のモデルとなっている。

エンジンはDURATECと呼ばれるフォード製DOHC2 リッターで、インジェクション制御で240psを発生する。車体右側にマフラーが備わるレイアウト

ちなみに車名となっている480は1トンあたりの馬力を表しており、車重が約500kgであることとエンジンのパワーに由来している。これを一般的なパワーウエイトレシオに置き換えると、約2.1kg/PS。これはGTーR NISMOやホンダNSXを軽く凌駕し、C7コルベットのZ06やランボルギーニ・アヴェンタドールなどと比肩する値。100km/h加速も3.4秒とレーシングカー並の加速を味わうことができるのだ。

取材車両は標準的な480Sに13インチホイール&エイボンタイヤを装着するオプションを装着している。何より驚きなのは、電気自動車が街中を走り回る現代に、余計な装備を省いたプリミティブなスポーツカーが新車で購入できるという点。新車で購入できる今こそ、最後のチャンスとなるかもしれない。

幌には開閉できるドアも備わる。ドアの下部が外側に膨らんでいるのは。肘をカバーするためのもの シートはヘッドレスト付きのレザーシートで、運転席は若干だが前後スライドが可能 ダッシュパネルはカーボン製。ステアリングはMONOでトランスミッションは5速マニュアルを採用する

【スペック】
全長:3100mm
全幅:1575mm
全高:1115mm
ホイールベース:2225mm
エンジン:直列4気筒
排気量:1999cc
燃料供給方式:電子制御インジェクション
駆動方式:FR
乗車定員:2名
価格:1050万円(税込)

【DATA】
ケントスピード
群馬県高崎市島野町68-34
TEL027-352-8070
営業/9:00〜18:00
休み/第1&第3火曜、水曜日
https://kentspeed.net/

※情報は取材当時のものです。

(出典/「Lightning2023年10月号 Vol.354」)

著者:Lightning 編集部