リヒャルト・シュトラウス:交響詩(全7曲)【サクッと】聴いてみよう。R. Strauss:7 Symphonic Poems

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リヒャルト・シュトラウスの交響詩を【サクッと】聴いてみようと思います。

リヒャルト・シュトラウスの交響詩は、とても人気があり、演奏を聴く機会が多くあります。海外からオーケストラが来日した時も、地元オケのコンサートでも演奏される機会が多いです。このページでは、R・シュトラウスの交響詩全曲7曲を、ひととおり【サクっと】聴いてみることにします。

一作品一演奏を聴いて、生オケで聴きたい曲を選んでみたいと思います。もちろん、気に入った曲は【聴いてみよう】のページに掲載して、同曲異盤(異演奏)をご紹介する予定です。全7曲とは次のとおりです。

01:ドン・ファン 02:マクベス 03:死と変容 04:ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら 05:ツァラトゥストラはかく語りき 06:ドン・キホーテ 07:英雄の生涯

01 交響詩「ドン・ファン」 😍

リヒャルト・シュトラウス:交響詩「 ドン・ファン」ジュゼッペ・シノーポリ シュターツカペレ・ドレスデン 1991年 R. Strauss: Don Juan, Op. 20, TrV 156 Giuseppe Sinopoli Sächsische Staatskapelle Dresden

リヒャルト・シュトラウスの交響詩「ドン・ファン」(作品20)は、1888年に作曲されています。スペインに伝わる伝説ドン・ファンは、理想の女性を見つけようとしていますが、女たらしなのです。しかし、理想の女性を見つけられず、絶望してしまった彼は・・・というストーリーです。シノーポリさんの演奏は、壮大な「ドン・ファン」で、ゆったりと歌いあげていきます。

たっぷり奥行き感があることと、のびの良さと歌い方が決めてです。ガチガチにならず、ゆったり、おおらかに歌いあげる姿勢が好ましく、懐に余裕があります。ひとことで言うと、大きなドラマが描かれているのです。最後の盛りあがりは、スケールが大きい。大きすぎて、びっくり! まるで、雄大で壮大な自然を眺めているような。まるで天高くそびえる山を見上げているような雰囲気が漂います。

冒頭、金管が、精力的で活気に満ちた主題を提示します。すぐに、ソロヴァイオリンがロマンティックな旋律を奏で、オーボエがドン・ファンと恋人の仲睦まじい関係を示します。ホルンが遮るように、英雄的で自信にあふれたテーマを奏でます。このようなやりとりが続きますが、ドン・ファンは疲れ、憂鬱になり、恋人の父親と決闘をして敗れるというラストを迎えます。

たっぷりとしたオケであるシュターツカペレ・ドレスデンの響き、おおらかさを感じさせる演奏です。オペラのようです。パヴァロッティさんのように、朗々と大きな声で歌されるような男前のドン・ファンです。繰り返し聞くと、ちょっと笑えてしまうのですが、なかなか~ ここまで壮大に歌いあげてくれる演奏はありません。ちょっと恥ずかしいぐらいの演奏で、誇大妄想的ですが、これが、指揮者シノーポリさんの嗜好でもあるわけで、つきあって美音を奏でるオケにも拍手したいと思います。

交響詩「マクベス」の後に作曲されているのですが、マクベスは改訂をしていたので、ドン・ファンの方が作品番号が先になり、R・シュトラウスの交響詩第1号になりました。そして、女たらしで有名な主人公の作品が、大ヒット。R・シュトラウスの出世作品になりました。ストーリーだけを見ると、かなり世俗的なのですが、オーケストレーションは魅力的ですし、各楽器のテクは、高いものが要求されているそうです。

なにより、ドン・ファン以降も、魅力的な作品が続きます。大ヒットしたことで、クラシック音楽の演目としてR・シュトラウスの作品は、確固たる地位を得たのですから、我々も大いに恩恵を受けています。まあ~ ストーリーについては、目をつぶることにします。 出典:YouTube R. Strauss: Don Juan, Op.20 シュターツカペレ・ドレスデン – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

02 交響詩「マクベス」 😱

リヒャルト・シュトラウス:交響詩「マクベス」ロリン・マゼール ウィーン・フィル 1983年 R. Strauss: Macbeth, Op. 23, TrV 163 Lorin Maazel Wiener Philharmoniker(Vienna Philharmonic Orchestra)

マクベスは、ご存知のとおり、ハムレット、オセロー、リア王と並ぶシェイクスピアの四大悲劇の一つ。スコットランドの荒野において三人の魔女に出会い、将軍マクベスは、いずれ王になる方だと言われます。その後、予言の一つがあたり、次第に野心に目覚め、嫁にそそのかされ、主君である国王を殺害し、自分が国王になってしまう。その後、亡霊に悩まされ、夫人もノイローゼに。そして、自滅していくというストーリーです。

この題材をもとに、R・シュトラウスは交響詩を作曲していますが、初演で好評を得られず、完成から2年後、2作目の交響詩「ドン・ファン」が成功した後に改訂されています。イギリスの演劇関係者の間には、劇場内で「マクベス」の名を口にすると、災いが起きるというジンクスがあるそうで、いまでもマクベスのことを、「The Scottish play」と呼びかえる方もおられるのだとか。予言や占いに振り回され、亡霊を見ちゃうほど、不安に追い込まれてしまう心理劇を、多くの楽器を使って、サスペンスドラマのように描いていく、その能力の高さに感服です。

マゼールさんの演奏は、楽曲そのものが分厚く、ティンパニーもシンバルも、ジャンジャン鳴っています。こりに凝った作りのようで、金管とティンパンニーが、どぉん どぉん どぉ~んと響き、どす黒いフレーズが見え隠れしています。ティンパニーが強烈に叩かれ出番が多いです。疑心暗鬼の醜態に、夢遊病者となっちゃうが、ドンドン シャンシャンは、最後ぐらいに取っておかないと物語的に変だし。難しい楽曲だと思います。

派手に鳴らしすぎてて、重くて、重くて~ 楽器が多すぎなんんじゃーないのって思っちゃいました。これでも、整理されて聴きやすくなっているようには思うんですけど、後半は、やっぱり、大盤振る舞いのてんこ盛り状態でしょうか。人気がないのも、ちょっと解る気がします。出典:YouTube R. Strauss: Macbeth, Op. 23, TrV 163 Herbert von Karajan Provided to YouTube by Universal Music Group

03 交響詩「死と変容」 😂

リヒャルト・シュトラウス:「死と変容」(死と浄化)ヘルベルト・フォン・カラヤン ベルリン・フィル 1972年 R. Strauss: Tod und Verklärung, Op. 24, TrV 158 Herbert von Karajan Berliner Philharmoniker

R・シュトラウスの交響詩「死と変容(死と浄化)」(作品24)について、ワタシ、学生時代は「死と変容(死と浄化)」っていうタイトルは、キリストの昇天を描いたモノだと勝手に思いこんでて。ずっと最晩年の作品だと思い込んでいました。宗教性の高い楽曲だと思っていたのです。

あはは~ なんと20代半ばの作品です。勝手な思い込みは、大はずれだったのです。この曲は、ハ短調→ハ長調で、ゆるやかな葬送行進曲風のラルゴで始まり、弱音器をつけた弦による序奏が、病人を描き、ティンパニの弱奏が心臓の鼓動を表します。木管の明るいメロディーが表れ、独奏ヴァイオリンも加わって幸せだった日々が回想されます。突如、ティンパニの一撃で、生と死の壮絶な戦いが始まり・・・というストーリーが描かれています。来世での変容って、こんな曲を25歳で作ります? 

うっソーっですよね。カラヤンさんの演奏は、かくも盛大、荘厳で、長大。楽曲そのものを陶酔型に変容したような演奏で、ここまでやられると、総スカンになるか、涙目になって拍手するか、二者選択という感じがします。甘い映画音楽のような演奏になっちゃってて、豪華絢爛。派手も派手で~ どっぷり陶酔できること請け合いの演奏になっています。

出典:YouTube R. Strauss: Tod und Verklärung Op. 24, TrV 158 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 Provided to YouTube by Universal Music Group

04 交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」😘

リヒャルト・シュトラウス:交響詩「ティル・ オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」 ルドルフ・ケンペ シュターツカペレ・ドレスデン 1970年
R. Strauss: Till Eulenspiegels lustige Streiche Op. 28 Rudolf Kempe Sächsische Staatskapelle Dresden

R・シュトラウスの交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」(作品28)は、1895年に作曲されています。14世紀の北ドイツの伝説の奇人ティル・オイレンシュピーゲルの物語を、シュトラウスの巧みな管弦楽法で音楽化した作品で、「ロンド形式による昔の無頼の物語」という副題があります。冒頭のフレーズは、昔、昔 あるところに~という始まりのテーマです。続いてホルンで奏でられるのが、ティル・オイレンシュピーゲルの第一のテーマで、ティルの笑いを表すテーマがクラリネットで奏でられます。

物語のストーリーです。市場に現れたティルは、牛馬を解き放し、市場は大騒ぎになってしまいます。空を飛ぶ靴でティルは遁走します。続いて、ティルは僧侶に変装して、でたらめなお説教で人々を煙に巻きます。 ヴァイオリンのソロが、退屈したティルのあくびを表現しますが、ふと彼の心に、破滅への予感がよぎります。(金管群による信号で表されます)

続いてティルは、騎士に変装し、美しい淑女を口説きますが、あっさりと袖にされます。怒ったティルは、全人類への復讐を誓います。(金管の鋭い上昇音型で表されます)。最初の標的を俗物学者(ファゴットによるユーモラスな音型)に定めたティルは、彼らに論争をふっかけます。次第に旗色が悪くなり、論破されたティルは悔しまぎれに小唄を歌います。再びホルンによるティルのテーマが現れ、次第に勢いを増して、好き放題に、いたずらを繰り返すティルの活躍が描かれます。しかし、突然、小太鼓が鳴り、ティルは逮捕されてしまいます。

金管による、いかめしい裁判のテーマが奏され、ティルは裁判を嘲笑しているものの、彼は死の予感におびえて、金切り声をあげます。ついに、死刑の判決が下り、ティルは絞首台にのぼらさされて最期を遂げてしまいます。冒頭のテーマが回帰してきて、ティルは死んでも、彼の残した愉快ないたずらは不滅であることを示し、ティルの笑いの動機で曲が終わるというものです。

短い曲ですが、ストーリー仕立てとなっており、さほど構えなくても面白さが感じられる楽曲です。しかし、頭に絵が描けないと、単に騒がしいだけの楽曲もなってしまう恐れがあります。せっかくなので、同じ聞くなら、それぞれの場面をイメージトレーニングを兼ねて、楽しみながら聴いてください。ケンペさんの演奏は、全体的に柔らかい音質で、描写能力の高いものです。道化師のように飛び跳ねる要素がたっぷり感じられ、いたずらが過ぎて、厳しい刑がくだされてしまう結末も、慈愛に満ちたものとなっています。
出典:YouTube Till Eulenspiegels lustige Streiche Op. 28 (2006 Remastered Version) ルドルフ・ケンペ – トピック Provided to YouTube by Warner Classics

05 交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」 🤩

交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」(Also sprach Zarathustra) 作品30は、1896年に作曲されています。ニーチェの著作にインスピレーションを得たと言われており、9つの部分から構成され切れ目なしに演奏されます。では、順番に、各イメージと演奏をマッチングさせて掲載します。

1 導入部 (Einleitung)
C音の保持音の上に、トランペットによって「自然の動機」が奏される。後述の通りの非常に有名な場面です。

2 世界の背後を説く者について(Von den Hinterweltlern)
「自然」を象徴する導入部のハ長調に対し、「人間」を象徴するロ長調に転じ、低弦のピッツィカートに上行分散和音を基本とした「憧憬の動機」が提示される。ホルンによってグレゴリオ聖歌「クレド」の断片が提示され、キリスト教者が暗示されると、ハ長調とロ長調のどちらからも遠い変イ長調によって、20以上の声部に分かれた弦楽を中心に陶酔的なコラールが奏される。

3 大いなる憧れについて (Von der großen sehnsucht)
既出の動機や聖歌「マニフィカト」の断片が並列される短い経過句に続き、「世界の背後を説く者」のコラールと、「憧憬の動機」から派生した低弦の激しい動機が拮抗しながら高まっていく。

4 喜びと情熱について (Von den Freuden und Leidenschaften)
二つの新しい動機、比較的狭い音域を動くものと十度音程の跳躍を含むものが提示され、活発に展開されていく。展開の頂点において、トロンボーンに、減五度音程が印象的な「懈怠の動機」が提示されると、徐々に音楽は静まっていく。

5 墓場の歌 (Das Grablied)
「喜びと情熱について」と共通の動機を扱うが、そちらとは異なりしめやかな雰囲気を持つ。弦楽パートの各首席奏者がソロで扱われる書法が試みられている。

6 学問について (Von der Wissenschaft)
「自然の動機」をもとにした12音全てを含む主題による、低音でうごめくようなフーガ。それが次第に盛り上がると、高音を中心とした響きになり「舞踏の動機」が提示される。「自然の動機」と「懈怠の動機」による経過句が高まり、次の部分に以降する。

7 病より癒え行く者 (Der Genesende)
「学問について」と共通の主題によるフーガがエネルギッシュに展開される。徐々に「懈怠の動機」が支配的になると、「自然の動機」が総奏で屹立し、ゲネラルパウゼとなる。「懈怠の動機」「憧憬の動機」による経過句を経て、トランペットによる哄笑や、小クラリネットによる「懈怠の動機」などが交錯する諧謔的な部分に入る。「舞踏の動機」や「憧憬の動機」を中心にクライマックスが形成されると、フルート・クラリネットによる鈴の音が残り、次の部分に移行する。

8 舞踏の歌 (Das Tanzlied)
全曲の約3分の1を占めており、ワルツのリズムを基調に、全曲における再現部の役割も果たす。独奏ヴァイオリンが活躍する場面でもある。弦楽(ここでも執拗に分割される)を中心にしたワルツに始まり、「自然の動機」、「世界の背後を説く者」のコラール、「舞踏の動機」、「喜びと情熱について」の諸動機が次々と再現される。その後は、既出の動機が複雑に交錯する展開部となり、壮麗なクライマックスを築く。

9 夜のさすらい人の歌(Nachtwandlerlied )
真夜中(12時)を告げる鐘が鳴り響くなか、「舞踏の歌」のクライマックスが「懈怠の動機」を中心に解体されていく。音楽がロ長調に落ち着くと、「大いなる憧れについて」や「学問について」で、提示された旋律が極めて遅いテンポで再現される。終結では、高音のロ長調の和音「人間」と低音のハ音「自然」が対置され、両者が決して交わらないことを象徴する。

リヒャルト・シュトラウス:交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」 アンタル・ドラティ デトロイト交響楽団 1982年 R. Strauss: Also sprach Zarathustra Dorati Antal Detroit Symphony Orchestra

R・シュトラウスの「ツァラトゥストラはかく語りき」は、有名曲です。なんといっても冒頭から、「どぉ~ そぉ~ どぉ~~ ふぁみっぃ~  ドソ ドソ ドソ ドソ ドソ ドソ ドッ」という印象的な主題が登場します。
で、フレーズの最後、パイプオルガン付きで、ごごご ごぉ~っ!と地響きを立てて鳴り響くので、まあ、最初聴いたときには、度肝をぬかれた感じでした。大きなスピーカーで聴くと、音圧、大迫力で酔いしれることができます。イヤフォンで聴くときは、ちょっと気をつけないとあきません。

で、若かりし頃には興奮しておりました。しかし、この最初の序奏部分だけで聴いて終わり。という曲の代表格となっていたのです。ずーっと。アハハ~ (なんというリスナーでしょう) 冒頭だけで、あとはインパクトに残らない筆頭って感じ楽曲で、2曲目の「現世に背を向ける人々について」以降は、正直、あまり聞き込んでいませんでした。そもそも、現世に背を向けないとダメなのか?って気持ちの方が強く、哲学にさほど興味が湧かない性格だったもので、低弦の響きから弦楽四重奏曲のようなフレーズに変化し、沈静化して、甘いチェロとヴァイオリンのフレーズで、夢心地になって終わりというパターンでした。

今もって、成長はあまりしておりませんが~ 「どそど」などの三つの分散和音が、常に変化して登場します。まずは、そこを聴いていただければ、良いのではないかと思います。この変化を楽しんでみてください。ドラティさんの演奏は、迫力も、艶もある美しい演奏です。出典:YouTube R. Strauss: Also sprach Zarathustra, Op.30, TrV 176
チャンネル:デトロイト交響楽団 – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

06 交響詩「ドン・キホーテ」 🙂

R・シュトラウスの交響詩「ドン・キホーテ」(作品35)は、1897年に作曲され、副題を「大管弦楽のための騎士的な性格の主題による幻想的変奏曲」といいます。ご存知、セルバンテスの小説「ドン・キホーテ」に基づいて書かれた曲で、独奏チェロ・独奏ヴィオラが活躍することでも有名で、チェロが主人公のドン・キホーテ、ヴィオラが従者のサンチョ・パンサとして役割を与えられています。

有名チェリストを迎えて演奏されるので、協奏曲のようでもあり、変奏曲でもあるので、なかなかに芸の細かい楽曲です。10個の変奏曲があるので、序奏、主題、10個の変奏曲、終曲という感じで、全部で13個のインデックスで区分されていることが多いです。なので、ちょっと邪魔くさいのですが、順番に、各イメージと演奏をマッチングさせて掲載します。

1 序奏 Introduktion
https://www.youtube.com/watch?v=tVY5425D0bU
ラ・マンチャの村に住む男が、騎士道の本を読み、騎士ドン・キホーテであると思い込んでいく。

2 主題 Don Quixote, der Ritter von der traurigen Gestalt
ドン・キホーテは従者サンチョ・パンサを引き連れ、冒険に出る。ドン・キホーテの主題が独奏チェロで、サンチョ・パンサの主題が独奏ヴィオラで奏される。

3 第1変奏 Variation I (Gemächlich)
ドン・キホーテは風車を巨人と思い込んで戦いを挑む。風車が回り、地面に叩き付けられてしまう。風は弦楽器のトリルで表現される。

4 第2変奏 Variation II (Kriegerisch)
ドン・キホーテは羊の群れを敵と勘違いして蹴散らす。羊は金管楽器のフラッター奏法で示される。

5 第3変奏 Variation III (Mäßiges Zeitmaß)
https://www.youtube.com/watch?v=uEtF9sF46-8
冒険が嫌になったサンチョ・パンサとドン・キホーテが言い合いをする。独奏チェロ・独奏ヴィオラの聴きどころである。

6 第4変奏 Variation IV (Etwas breiter)
ドン・キホーテは、懺悔者の一行が携える聖像を誘拐された貴婦人だと思い込む。助け出そうとして一行に突入するが、叩き付けられて失神してしまう。

7 第5変奏 Variation V (Sehr langsam)
ドン・キホーテは、架空の恋人ドルシネア姫への思いに耽る。

8 第6変奏 Variation VI. (Schnell)
ドン・キホーテは、通りかかった不器量な田舎娘をドルシネア姫だと信じ込む。娘は気味悪がって逃げてしまう。

9 第7変奏 Variation VII. (Ein wenig ruhiger als vorher)
女たちにからかわれ、だまされて目隠しをされる。乗せられた木馬を魔法の馬だと信じる。巨人退治に夢中になる。ウィンドマシーンによって架空の飛行が奏される聴き所である。持続低音が、実際は地面に止まったままであることを表している。

10 第8変奏
川岸で櫂のない小舟を見つけた2人は、それに乗って囚われの王子を救出に向かう。水車に巻き込まれて転覆し、ずぶぬれになってしまう。滴る水を弦楽器のピッツィカートが表現している。

11 第9変奏 (Schnell und stürmisch)
ドン・キホーテは2人の修行僧(2本のファゴット)を悪魔と勘違いして襲いかかる。驚いて修行僧たちは逃げるが、ドン・キホーテとサンチョ・パンサは意気揚々と旅を続ける。

12 第10変奏 Variation X. (Viel breiter)
ドン・キホーテを妄想癖から治そうと、彼の友人カルラスコが騎士に扮して決闘を挑む。トランペットで表現される)。ドン・キホーテは、ついに冒険をあきらめ、寂しく村に帰る。

13 終曲 Finale (Sehr ruhig)
ドン・キホーテは故郷の村で死の床にある。ドン・キホーテは静かに自分の生涯を回想する。チェロのグリッサンドによって彼の死が示される。


リヒャルト・シュトラウス:交響詩「ドン・キホーテ」 ミッシャ・マイスキー ズービン・メータ ベルリン・フィル 2002年 R. Strauss: Don Quixote Mischa Maisky Zubin Mehta Berliner Philharmoniker

マイスキーさんのドン・キホーテは、身ぶり手ぶりが大いので、ストーリーに沿って解りやすい演奏だと思います。コミカルさも漂わせつつ、抑揚が大きく、メータさんがオケを振っているので、歌舞伎の演出っぽく感じられるかな~と思います。存外、この楽曲に似合ったコンビかもしれません。

独奏チェロは、おしゃべりで、ちょっと破天荒な性格を巧く表現しています。R・シュトラウスって、音が多いし、多層的に響いているように思うので、ソロを大事にしてくれる指揮者だと、チェリストも救われますよね。チェロが目立つ演奏の方が嬉しいですかね。チェロVSオケだと、巨大企業VS社員って感じの風刺になっちゃいます。できる限り、ユーモラスなイメージを湧かせてお聴きください。出典:YouTube R. Strauss: Don Quixote, Op. 35 ミッシャ・マイスキー – トピック Provided to YouTube by Universal Music Group

07 交響詩「英雄の生涯」 🤩

リヒャルト・シュトラウスの交響詩「英雄の生涯」(作品40)は、30代後半となった1898年に作曲されています。演奏するには、105名4管編成の大編成のオケが必要です。技術的にも難しい曲だそうです。「英雄の生涯」は、次の6つの部分で構成されており、切れめなく演奏されます。順番に、各イメージと演奏をマッチングさせて掲載します。

1 英雄 Der Held
2 英雄の敵 Des Helden Widersacher
3 英雄の伴侶 Des Helden Gefährtin
4 英雄の戦場 Des Helden Walstatt
5 英雄の業績 Des Helden Friedenswerke
6 英雄の隠遁と完成 Des Helden Weltflucht und Vollendung der Wissenschaft

1 英雄:Der Held  いきなりスタート。低弦とホルンが雄渾な英雄のテーマが提示します。強い意思や情熱、行動力がみなぎる力強いテーマです。

2 英雄の敵:Des Helden Widersacher  木管により、人々が嘲笑するような動機が提示されます。敵の非難を受け手、英雄は、ちょっと落胆していますが、やがて力強く元気を取り戻します。

3 英雄の伴侶:Des Helden Gefährtin  ソロヴァイオリンが、英雄の伴侶のテーマを提示します。壮大な愛の情景を描いており、人々はやかっみ、嘲笑していますが、英雄は動じません。

4 英雄の戦場:Des Helden Walstatt  舞台裏からトランペットが鳴り響き、戦いが始まります。敵を表す金管・木管は、英雄を非難していますが、英雄(低弦とホルン)は戦い、伴侶(ヴァイオリン)は英雄を支えます。ティンパニー、大太鼓などの打楽器が激しく叩かれています。そして勝利!

5 英雄の業績:Des Helden Friedenswerke  ホルンにより交響詩「ドン・ファン」のテーマが、弦により交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」のテーマが奏され、引き続いて「死と変容」「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」 「マクベス」「ドン・キホーテ」など、これまでの交響詩のフレーズが登場します。英雄=R・シュトラウスご自身と、明確に示されています。(わざわざ、おっしゃらなくても~ みんな解ってるよね)

6 英雄の隠遁と完成:Des Helden Weltflucht und Vollendung der Wissenschaft  イングリッシュホルンによる牧童の笛が鳴り響き、田園の情景が描かれています。ここでは、交響詩「ドン・キホーテ」終曲のテーマが引用されています。年老いた英雄の姿が描かれています。

R・シュトラウス 交響詩「英雄の生涯」ロリン・マゼール バイエルン放送交響楽団 1996年
Lorin Maazel Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks

マゼールさんの演奏は、堂々とした英雄です。R・シュトラウスは、まだ30歳後半で、40歳にもならないのに、よくまあ~ これだけ壮大に、自分自身を英雄になぞらえる、人生を振り返ることまでを含めて作品を描けるものだと、呆れつつも感心してしまいます。作曲家ご本人は、これ以降も元気で、1949年(85歳)まで長生きされています。英雄の生涯で打ち止めになるのですが、これで満足だったんだろうなあ。

で、これだけ壮大だと、良い音響で派手に鳴らしてもらわない演奏だと、ちょっと不満が残るという楽曲になるでしょうか。出典:YouTube Ein Heldenleben, Op. 40 ロリン・マゼール – トピック Provided to YouTube by RCA Red Seal

リヒャルト・シュトラウス:交響詩 タイトルと作品番号、作曲年

R・シュトラウスの交響詩 タイトルと作品番号、作曲された年

01 交響詩「ドン・ファン」作品 20 TrV 156 1888年
02 交響詩「マクベス」作品 23 TrV 163 1886~88年 改訂 1889、1890年、1891年
03 交響詩「死と変容」作品 24 TrV 158 1888~89年
04 交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯」作品28 TrV 171 1894年~95年
05 交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」作品30 TrV 176 1896年
06 交響詩「ドン・キホーテ」 騎士の性格の主題による幻想的な変奏曲 作品 35 TrV 184 1897年
07 交響詩「英雄の生涯」作品op. 40 TrV 190 1898年

こうやって作曲年を見ると、1888年から98年の約10年間で、立て続けに、7曲もの交響詩を完成させていることがわかりますね。

リヒャルト・シュトラウスの交響詩を【サクッと】聴いてみて~【まとめ】

さて、まとめです。リヒャルト・シュトラウスの交響詩を、全部聴いてみたのですが、ワタシ的に、とっつきやすいのは、ドン・ファン 場面設定がわかりやすいのは、ティル 聴き応えがあって映えるのは、英雄の生涯 いきなり終わってフェードアウトするのは、死と変容 知名度は高いけれど、抽象的で意外とつまんないのは、ツァラ 協奏曲、変奏曲のイメージが強い上級者向けは、ドン・キホーテ ゲンが悪くてあまり聴かないのは、マクベス でした。

改めて聴いてみて、やっぱりストーリーを事前に予習しておいて、ある程度知っていた方が良いと思います。特に、ティル、ツァラトゥストラはかく語りき、ドン・キホーテは必須になるかと思います。英雄の生涯は、なんとなく感覚で解るところが多いですが、こういうシーンだと知って聴くと、より一層楽しめるように思います。コンサートで聴きたいと思うのは、ツァラトゥストラはかく語りきと、英雄の生涯かなあ。チェリストが良ければ、ドン・キホーテでしょうか。ドン・ファンは、誰が振っても映えると思います。

しかし、まあ~ 壮大な曲ばかりが並んでいますね。交響詩の創設者たるリストもご大層な曲が並んでいましたが、R・シュトラウスの交響曲も、大編成のオケでないと演奏できないという曲が多くあります。ご両名とも、交響詩の分野では、外せない作曲家ですが、リストの交響詩がマイナーなのに比べ、R・シュトラウスの交響詩はメジャーな存在です。両者の違いは、どこにあるのかなあ。R・シュトラウスは、ストーリーをしっかり提示して、あまり抽象的でないところが受けたのでしょうか。また、場面設定をキッチリしているので、イメージしやすいのかな~と思います。みなさんは、どう思われますか。以上、勝手気ままな感想でした。

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