角部屋を活かしたリノベーション インテリアコーディネーターが造る 見栄えと実用性を兼ね備えた空間づくり

角部屋を活かしたリノベーション インテリアコーディネーターが造る
見栄えと実用性を兼ね備えた空間

モデルルームのその先にある暮らしを考えて

2年前、2人暮らしの伊東夫妻は65㎡の広さを持つ築35年の中古マンションの角部屋を購入し、フルリノベーションを行った。
「主人に相談することもありましたが、間取りを含め、ほぼ私が考えました」と話すのは妻で、インテリアコーディネーターのIto Yukiさん。モデルルームのコーディネートや、自身のオフィシャルサイトで、生活感を出し過ぎずにおしゃれに快適に暮らす方法を発信している。
Itoさんの理想を具現化させたのが今回のリノベーションだった。「以前からリノベーションがしたいと訴え続けていたら、ある日、主人がリノベーションの相談会があることを教えてくれて見に行きました。それがきっかけで、良い物件に出会えて購入してリノベーションをして・・・、本当は2~3年後ぐらいに探そうよと話していたんですけどね」とItoさん。
彼女のコンセプトは、モデルルームの先にある実用性を兼ね備えた空間づくり。伊東邸には、見栄えだけでなく快適に過ごすための工夫が随所に見られる。
開放感のあるリビング。室内窓があることで広い空間を演出した。テレビのある正面奥の壁にグレージュのタイルを貼りアクセントに。

開放感のあるリビング。室内窓があることで広い空間を演出した。テレビのある正面奥の壁にグレージュのタイルを貼りアクセントに。

テレビ上の梁を活かすため造作棚を設置。飾られた本のブックカバーはItoさんオリジナルで、色が統一されている。

テレビ上の梁を活かすため造作棚を設置。飾られた本のブックカバーはItoさんオリジナルで、色が統一されている。

窓が大きく、カーテンだとボリュームが出てしまうのでロールスクリーンを選択した。調光ができるため日差しが強い時でも柔らかな光が部屋に入る。

窓が大きく、カーテンだとボリュームが出てしまうのでロールスクリーンを選択した。調光ができるため日差しが強い時でも柔らかな光が部屋に入る。

角部屋を活かした開放感と回遊性

リビングに入ってまず感じるのは開放感。元々3LDKの物件だったが、南側のリビングと和室の仕切りを無くした。そして東側の寝室とリビングの間には縦軸回転の窓を設けている。「東から入る朝日をリビングに入れ、風通しを良くするために窓をつけました。実際よりも広く見えますよね。縦長の物件だと、奥に光が入らないと思っていたので、角部屋で正方形に近い物件を選んで正解でした」。
回遊性のあるキッチンも開放感を演出している。「普通すぎるのが嫌で、分譲ではなかなか見られないレイアウトを考えて、ダイニングとキッチンを横並びにしました。見栄えもいいし、導線的にも楽ですし。リビングからキッチン全体が見えるので、見栄えを意識しています」。キッチンと洗面所はグレーの塩ビタイルにし、リビングの木目床と差別化した。汚れも目立ちにくく、メンテナンスも容易で、見栄えだけでなく実用性も兼ねる。
在宅ワークが多いItoさんが使う、リビングに造作した仕事用のデスクもこだわりのひとつ。「以前の家では、ダイニングテーブルで仕事していました。でも食事の時間になる度に片付けなくてはいけなくてストレスだったんですね。カタログやプリンターなど仕事道具が決まった場所に置くことで、生活スペースと別けることに意味があると思っています」。仕事で使う壁紙の見本帳などを収納できる造作棚を机と一体化させたことで、収納と効率化を実現させた。
ソファをテレビの正面に置かないことで、視覚的な仕切りを無くし開放感を持たせた。

ソファをテレビの正面に置かないことで、視覚的な仕切りを無くし開放感を持たせた。

寝室。将来的にシングルベットを2つ横並びにできるよう計算された間取りにしている。

寝室。将来的にシングルベットを2つ横並びにできるよう計算された間取りにしている。

正面の窓を開けると南東で風が抜けるようになっており、角部屋の利を活かす。右側は仕事机があるため開かないようになっている。

正面の窓を開けると南東で風が抜けるようになっており、角部屋の利を活かす。右側は仕事机があるため開かないようになっている。

窓向こうのダイニングに見えるのはルイスポールセンのペンダントライト。

窓向こうのダイニングに見えるのはルイスポールセンのペンダントライト。

「以前、集めていた古木の家具を使っているのですが、今は北欧系もいいかなと考えています」とItoさん。キッチンの色合いや照明は北欧系の家具に合うように選んでいる。

「以前、集めていた古木の家具を使っているのですが、今は北欧系もいいかなと考えています」とItoさん。キッチンの色合いや照明は北欧系の家具に合うように選んでいる。

生活に枝物を飾り季節感を演出するのもIto流。

生活に枝物を飾り季節感を演出するのもIto流。

水周りは床材を変えアクセントに。グレーで汚れも目立たず、メンテナンスもしやすい。

水周りは床材を変えアクセントに。グレーで汚れも目立たず、メンテナンスもしやすい。

同じスペースにある洗濯機で洗ったものを、上のポールに干し、乾いたら左側の収納棚へ。ワンステップで家事ができるよう配置されている。

同じスペースにある洗濯機で洗ったものを、上のポールに干し、乾いたら左側の収納棚へ。ワンステップで家事ができるよう配置されている。

洗面台に貼られているのは名古屋モザイク工業社製のヘキサゴン型タイル。三面鏡下に設置された照明によりホテルライクな雰囲気を演出。

洗面台に貼られているのは名古屋モザイク工業社製のヘキサゴン型タイル。三面鏡下に設置された照明によりホテルライクな雰囲気を演出。

仕事用デスク前には大きな窓があり圧迫感がない。見本帳を使い色味を確認するため、頭上のダウンライトは2種類を切り替えられるようになっている。

仕事用デスク前には大きな窓があり圧迫感がない。見本帳を使い色味を確認するため、頭上のダウンライトは2種類を切り替えられるようになっている。

フレキシブルだからこそ次を考え楽しめる空間に

Itoさんのこだわりはライティングにも。「玄関から入ってきた時にリビングの梁が目立つので、ダクトレールを付けてスポットライトを設けました。壁に掛けたアート作品や天井に当てると雰囲気が出るので気に入っています」。
ダクトレールにしたことにはもう一つ理由がある。「照明を動かせるようにしています。長く住むとレイアウトを変えるかもしれないですし、将来的に賃貸や売却を考えた時に、フレキシブルにレイアウトを考えられる方がいいなと」。ここでも見栄えと実用性の両立を垣間見ることができる。
誰もが憧れるオシャレなモデルルームをコーディネートする中で、そのアイデアをより生活に活かせる方法を自宅で実践し情報を発信するItoさん。「今の満足度は90%。まだまだやりたいことは沢山あります。どうやっても『こうした方が良かったな』というのが仕事柄出ちゃいますね。だから100%とは言えないです」と話す姿は楽しげ。今後のレイアウトをある程度決めつつも、フレキシブルに考えられる余白がある伊東邸だからこそ持てる楽しみだ。
玄関廊下を無くし広い空間を確保。右手前は納戸で、玄関と廊下の双方からアクセスできるようになっている。

玄関廊下を無くし広い空間を確保。右手前は納戸で、玄関と廊下の双方からアクセスできるようになっている。

シューズラックは取り外せるようになっており、高さが調整できるだけでなく、大きな家具を入れる際にも便利。

シューズラックは取り外せるようになっており、高さが調整できるだけでなく、大きな家具を入れる際にも便利。

玄関からリビングに続く廊下。洋室の入口前には壁のスペースを利用した収納棚を設置。リビングの間にある引き戸にはガラスをはめ、ここにも広く見せる工夫がある。

玄関からリビングに続く廊下。洋室の入口前には壁のスペースを利用した収納棚を設置。リビングの間にある引き戸にはガラスをはめ、ここにも広く見せる工夫がある。

グレーとブルーで統一された洋室は、将来の子ども部屋を想定して用意されている。「こちらは、まだまだこれからです」と笑顔で話すItoさん。

グレーとブルーで統一された洋室は、将来の子ども部屋を想定して用意されている。「こちらは、まだまだこれからです」と笑顔で話すItoさん。

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