思い出胸に拠点撤去、気仙町今泉地区の集会所「小さな積み木の家」/陸前高田

▲ 大学生らの協力のもと進められる解体作業=気仙町
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復興への願いが記された部材=同

 東日本大震災で壊滅的被害を受けた陸前高田市気仙町の今泉地区に建てられた集会所「小さな積み木の家」の解体作業が行われている。住民の復興への願いなどが書かれた集成材を積み上げて建てた、思いの詰まった拠点。被災市街地復興土地区画整理事業によるかさ上げ工事に伴い撤去することとなり、住民や建設時から協力する福岡県福岡市の2大学の学生らが、名残を惜しみながら作業に当たっている。26日(土)には、部材を現地で公開する予定で、願いを書いた住民ら関係者に観覧を呼びかけている。
 
26日に解体部材を公開
 
 小さな積み木の家は、住民有志で組織する「今泉の明日を創る会」(河野和義会長)が平成23年11月に整備。津波で失った地域の拠点の代替施設をと、九州産業大と九州工業大の提案・協力を受けて建てたもので、木造平屋の広さ約50平方㍍。費用は一般財団法人・材料科学技術振興財団からの助成金を充てた。
 建設地は気仙川そばにある同町字町の菅野剛さん(67)宅敷地内で、津波の浸水地。当初から撤去を想定し、誰でも簡単に建設・解体できるようにと、間伐材をブロック状に加工して積み上げる「積み木工法」を用いた。
 解体作業は21日から本格的に行われ、九州産業大、九州工業大の学生7人も駆けつけた。
 震災発生時、小学6年だった九州産業大建築都市工学部の井本大智さん(1年)は「当時は震災の苦しみや悲しみも分からなかった。大学生となり、少しでも協力できることがあればと思って来た」と作業に汗を流した。
 「目指せ完全復興!!」「微力ながら応援しております」──。積み上げたブロック約340個には、側面に一つ一つ番号が刻まれ、上面に被災者やボランティアらの思い思いの願いが記されている。
 屋根の撤去を終え、23日にはブロックの取り外しが始まった。タイムカプセルのように未来への希望を込めたメッセージが久々に現れ、関係者がじっくりと眺めていた。
 5年9カ月の間、交流の拠点を担ってきた建物。今後のまちづくりを考える集会や、今泉伝統のけんか七夕の太鼓のたたき方を小学生らに継承する「太鼓教室」の会場として使われるなど、たくさんの思い出が詰まる。
 菅野さんは「寂しさはある。地元はもちろん、支援で訪れるボランティアの利用など、たくさんの交流があった」と振り返る。
 被災後同じ場所に再建した自宅の撤去も控えるが、「(撤去は)当初から分かっていたこと。かさ上げ地にどれほどの人が帰ってくるか気がかりだが、魅力あるまちに戻れば」と期待を込める。
 ブロックは26日、終日解体現場で公開する。関係者は「実際に書いた人にはぜひ見に来てもらいたい」と呼びかける。
 その後は近くのプレハブ小屋に保管し、活用のあり方を検討していく。