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 少女漫画の名手・咲坂伊緒による漫画「思い、思われ、ふり、ふられ」。ともに大ヒットし、映像化された「ストロボ・エッジ」「アオハライド」に続く「青春三部作」の最終章だ。この話題作が、アニメーション&実写で映像化。作品では、4人の高校生が織り成す青春が描かれる。恋愛に夢見がちな市原由奈、恋愛に現実的で積極的な山本朱里。タイプが違う2人のヒロインと、朱里の義弟の山本理央、由奈の幼馴染の乾和臣。4人の想いが絡み合い、すれ違っていく。

【映像】声優・島崎信長の出演アニメ一覧(※ABEMAページに飛びます)

 9月18日に公開されるアニメーション版の「思い、思われ、ふり、ふられ」(以下、「ふりふら」)では、ある秘められた想いを抱える、クールな王子様タイプの少年、理央の声を島崎信長が務める(※「崎」は正式には立つ崎の字)。恋愛と青春のきらめきが詰まった作品の魅力から、島崎自身の高校時代の秘話までを聞いた。

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■島崎信長、“王子様”山本理央は「実はとってもわかりやすい」

――島崎さんが演じる理央はどんなキャラクターでしょうか?

島崎:理央は、実はとってもわかりやすい人。作中で“王子様”と言われたり、一見クールでかっこいいと見られたりしているけれど、彼自身は、別にカッコつけていたわけではなくて……。単にいろいろなことが上手くいかなくてくすぶっていたり、人に興味がないから自然に振る舞えていたりしたのが、たまたまクールにかっこよく見えていただけなんです。

――物語序盤で、うつむきがちな由奈のほっぺたを理央が持ち上げて、「俺、こっち」と自分のほうを向かせるシーンがありますよね。あれも、由奈を意識していなかったからできたことだと思います。

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島崎:あんなに素で振る舞えていたのに、理央は、由奈ちゃんを意識し出したら、ちょっとしたことですぐ照れるし、ドキドキしちゃう。由奈ちゃんにかっこよく見られたいという心が出たり、文化祭で王子様の衣装を着させられて「こんな格好見られたら恥ずかしい」ってなったり。くすぶってかげっていたものが晴れて、彼が本来持っているまっすぐなところ、かわいらしいところが出てくる。僕はそこが好きなんです。

――理央に共感するところはありますか?

島崎:どのキャラクターにも共感できるところがあるのが、「ふりふら」のすごいところなんです。みんなすごく「いそう」なんですよね。「あ、こういうこと思うよね、するよね」というところがいっぱいある。理央だったら、気持ちが走り出したらまっすぐなところ。僕個人も、最終的には「まっすぐ派」なんです。 理央と由奈は、ふたりともいろいろなことを考えている子なんですが、最後はもう、自分の気持ちで突っ走っちゃう。

――作中、由奈への気持ちを自覚した理央が、同じく由奈に想いを寄せる我妻に「俺、由奈ちゃんのこと好きだ」と言いに行くシーンが印象的でした。

島崎:朱里や和臣だと、ちょっと考えると思うんです。「それを言われた我妻ってどう思うかな」とか。でも、理央は「言わなきゃ!」と言いに行く(笑)。あの感じ、僕はすごくわかるんです。僕もいろいろ考えるけれど、最後の最後は気持ちで動いちゃうほうだから。そのへん、理央との相性はいいのかなって思いますね。

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――作中には、理央と和臣、タイプの違う男の子2人が登場します。一見、クールでなんでもそつなくこなす理央に対して、和臣は思ったことを率直に口にする好青年です。

島崎:僕は、和臣もけっこうストレートな人だと思っているんです。ただ、物語が和臣視点じゃないから、わかりづらいだけ。ただ、理央と由奈は「ここ!」と決まったら、一瞬、それしか見えなくなる度合いが高い。けれど、和臣と朱里は、それしか見えなくなりつつも、でも、周りのことをちょっと考えちゃう。大人な部分をもっているふたりなんです。視野がちょっと広いだけで、基本はストレート。あと、和臣に共感できるのは夢!

――和臣は映画が大好きで、映画監督になるという夢を持っていますが、なかなか両親に認めてもらえません。

島崎:夢を楽しそうに話す、目指すものがある。そこにはすごく共感します。和臣はいうなれば映画オタク。好きだからこそ、映画を作ってみたいんですよね。僕もやっぱり、アニメや漫画、ゲームなど、声優さんが関わるコンテンツが大好き。好きだからこそ、今も関わらせていただいているし、今後も関わりたい。僕は今、運よくその好きなことを仕事にできて、好きなまま楽しかった人。「ふりふら」に描かれているのは、恋愛だけではありません。夢、家庭環境、友情。青春のいろんなものが、この劇場の短い尺(時間)のなかにぎゅっと詰め込まれているんです。

■「理央はこういう風に言うんだ」アフレコ時の気づき

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――理央を演じるときに気をつけたことは?

島崎:黒柳トシマサ監督は最初に、「キャラクターが本当にそこに生きている、生活しているように描きたい」とおっしゃったんです。それは、僕も常々思っていること。たとえば、理央だったら、ずっと“王子様”としているわけじゃない。人間、しかも思春期の青少年だから、ちょっとしたことで変化が生まれるんです。しかも、「ふりふら」では、世界が闇に包まれたとか、爆発したとかが起こるわけじゃなくて、思春期なら当たり前の経験だけで、人がこれだけ大きく変わるんだよ、と描かれている。それがとても人間らしい。

 だから、頭で変に考えるよりも、その場のかけあい、空気感の中で、その変化が出せればいいなと思いました。もちろん、事前に台本を読み、原作をチェックし、映像を見て、「理央はここでこう思って、こう変わったんだろうな」と情報はたくさん入れていきます。ただ、マイクの前ではあまりそういうことを意識しすぎないようにしました。

――少女漫画らしい、ときめきが溢れている台詞もありました。

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島崎:ときめくような台詞も、この作品に関しては盛ったり、ドラマチックにしたりしないで、ストレートに言わせていただきました。「ふりふら」のように、等身大でリアルに寄った作品だと、変にかっこいい声で言おうとすると、逆にかっこ悪くなるんです。現実世界で、いい声でかっこよく言っている人って、むしろおもしろキャラじゃないですか(笑)。そこは僕の好みの芝居ができたので、うれしかったですね。

――共演は、和臣役が斉藤壮馬さん、朱里役が潘めぐみさんです。そして由奈役は新人声優の鈴木毬花さんが務めています。かけあいなどで楽しかったところは?

島崎:特におもしろかったのは、由奈役の鈴木さんとの掛け合いです。作中では、時間が進むごとに、由奈と理央の関係性も理央の気持ちも変わっていくから、毎回新鮮な会話になったんです。しかも、鈴木さんはアニメーションのアフレコをやるのがほぼ初でした。だからこそ、気持ちのままに、まっすぐにぶつかって、由奈の言葉をつむいでくれました。

 芝居の技術はもちろん大事ですが、ただ、場合によってはそれで小手先のものになって、中身が伴っていない芝居になることもあるんです。今回は、まっすぐに放たれた由奈の言葉が理央にもまっすぐに響いて、自分でも思っていなかったニュアンスを出すことができました。「あ、理央はこういう風に言うんだ」とか、「台本を読んで想定していたよりも笑ったなあ」とか。

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――アフレコの雰囲気はいかがでしたか?

島崎:アフレコって、マイク前で演技をしているときだけじゃなくて、現場での雰囲気作りも大事だと思うんです。やっぱりよい関係性の中でリラックスしてお芝居をしたほうが、いいパフォーマンスが出ます。そういう意味では、みんなとっても気遣い屋さんなんです。先輩3人が、鈴木さんに対して、兄、姉のような……と、自分で言うとちょっと気持ち悪いんですけど(笑)。とくに潘さんのお姉ちゃん感はすごかったですね。リラックスして、集中するところは集中して。アットホームな現場でした。

――もし学生時代に戻れるとしたら、映画に出てくるシーンで体験したいことは?

島崎:先ほども挙げた、理央が自分の本当の気持ちを自覚して、我妻に筋を通しに行くシーン。あのシーンは我妻も込みで好きなんです。我妻が都合のいい人だと、たぶん、譲るんですよ。でも、我妻は、「お前の気持ちはわかった、でも、俺も伝えに行くから」と言う。対等なんですよね。だからこそ、彼らは今後もあとくされなく仲がいいんだろうなと思える。その後、理央が走っているところも好きですね。やっぱ、青春って走ってますよね。僕も BUMP OF CHICKENさんの曲をバックに走りたいです!(笑)

――BUMP OF CHICKENさんの曲、とても印象的でした。

島崎:まさに高校生の頃も聞いてましたからね。BUMP OF CHICKENさんの曲がかかったら、限界を超えて走れますよ! 理央は、冷静に考えれば別に急いで走る必要はないんですよ。でも、一分でも、一秒でも早く会いたい、早く気持ちを伝えたい。だから息を切らせながら走って、でも、いざ会ってみたら言葉がスラスラ出て来なくて……。あの流れはものすごい青春ですよね。あれはやってみたい!

――BUMP OF CHICKENさんの曲はお好きですか?

島崎:BUMP OF CHICKENさんの曲は、とてもストーリー性がありますよね。歌から映像が、ドラマが浮かんでくるんですよね。「K」とか、もう、物語じゃないですか! 「ラフ・メイカー」は特に好きですね。僕にも笑顔をもって来て欲しい!

――島崎さんご自身は、男子校でどんな高校生活を?

島崎:僕自身は、男子校に通っていて、吹奏楽部に所属していました。吹奏楽部って、肺活量が必要だし、部によってはマーチングもあるし、体育会系なんですよ。運動部が休みで校庭が空いていると、運動していました。その中で、一時期、うちの部で流行ったのがカバディ。「カバディ」と言っている間だけ攻撃ができるので、みんな、本気で「カバディ、カバディ」と叫んでいました(笑)。「カバディ」と言っている間は、息継ぎしてはいけないので、「お前、今、息吸ったよね」「吸ってねーし!」って本気でやり合っていました。男の子ってやっぱり負けず嫌いだから。あれは楽しかったなあ。

――男子校らしいエピソードですね。

島崎:それと、マラソン大会! 絶対に脱ぐヤツがいるんですよ、男子校は(笑)!

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■大人も「リアル」 光るベテラン声優の演技も見どころ

――由奈の両親、朱里と理央の両親も「大人」としてきちんと描かれているのも印象的です。

島崎:若い人に焦点を当てた作品だと、大人って便利な人か、敵対する相手にされがち。ただ、この作品ではリアルですよね。大人も人生を生きているひとりの人間として描かれています。大人にもいろんな面があって、なんでも優れているわけではない。ダメなところもある。そういう意味でも、老若男女、誰が見ても楽しめるんじゃないかなと思います。

――再婚したもののケンカしがちな理央と朱里の両親を久川綾さんと井上和彦さん、仲がよい由奈の両親を井上喜久子さんと田中秀幸さん。それぞれベテランの方々が演じています。

島崎:とくに(井上)和彦さんの演技がリアルなんですよ。夫婦ゲンカしている最中に、朱里ちゃんが帰ってきたときの、第一声でホッとしている感じとか。久川(綾)さん演じるお母さんがずっと怒っていて、「まあまあまあ…」となだめていたんだろうな~と想像できる。和彦さんはリアリティを感じさせるお芝居から、デフォルメしたものまでなんでもできて……同性の先輩として、和彦さんのお芝居がすごく好きなんです。一方、由奈ちゃん家は、(田中)秀幸さんと井上喜久子さん。秀幸さん演じるお父さん、井上さん演じるお母さんもとても素敵で。温かみのある究極のお芝居。ああいうお芝居を、自分もしていきたいですね。

――最後にアニメーション版「ふりふら」の見どころを教えてください。

島崎:「ふりふら」は本当に、性別も年齢も関係なく、どなたが見ても刺さる作品。大人だったら「自分もこんなことあったなあ」とか、リアルタイムで高校生だったら「今、こういうことあるわ~」とか。仮に自分が経験していなくても、「世の中で絶対こういうことがあるな」とか、「クラスメイトのあいつはたぶんこういう経験しているだろうな」とか。すごく身近に感じて、実感を伴って共感できる作品です。だからこそ、作品からいろいろなことを受け取ることができるし、惹きつけられるし、入り込める。僕はいつも出演作に対して、それが明るい物語でも悲しい物語でも、ご覧になった人の人生がよりよくなるきっかけやエネルギーになったらうれしいと思っています。「ふりふら」は、観ていただけたら、きっと人生にいいエネルギーが生まれる作品。ぜひ多くの方に観ていただきたいです。

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(Photo:You Ishii)

(Text:仲川僚子)

▼アニメーション映画『思い、思われ、ふり、ふられ』9月18日(金)全国ロードショー

(ストーリー)

自分に自信が持てない高校1年生の市原由奈。ある日、由奈は同じマンションに引っ越してきた少女・山本朱里と出会う。夢見がちで恋愛に消極的な由奈と、恋愛に現実的で積極的な朱里。正反対のふたりは、親友に。やがて、由奈は朱里の義理の弟の理央に惹かれていく。一方、朱里は、由奈の幼馴染で、率直だがつかみどころのない和臣が気になるように。しかし、理央にはある秘められた想いがあり、和臣はある“秘密”を目撃し…。まっすぐな「好き」が絡み合う、全員片思いの青春恋愛映画。

配給:東宝

(C) 2020 アニメ映画「思い、思われ、ふり、ふられ」製作委員会

(C) 咲坂伊緒/集英社

アニメーション映画『思い、思われ、ふり、ふられ』公式サイト
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【まとめてイッキ見】SAO アリシゼーション WoU
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