酸素吸入器を傍らに置いて絶叫
本放送の放送順に挙げていくと、まず「野ブタ。」の戸田は、主人公・修二(亀梨和也)が好きでお弁当をいつも作ってきている女子高生。制服の戸田恵梨香は、再放送を見た視聴者から「可愛い」「可愛い」と連呼されていた。
デビューから5年、まだ十代の戸田は頬がふっくらしてあどけない少女ながら、いじめられっ子の信子(堀北真希)に優しく接し、周囲に流されない凛とした人物であった。
戸田恵梨香が演技派俳優になっていく過渡期で、翌年、映画「デスノート」(2006年)のアイドル・ミサミサこと弥海砂役を演じ、可愛さで画面を制していたが、その後は、「コード・ブルー~ドクターヘリ緊急救命」シリーズ(2008年~、フジテレビ系)、「BOSS」(2009年、フジテレビ系)などで、可愛さばかりが売りではない、登場人物の内面に迫っていく役を演じるようになっていく。
2010年になると、代表作となる「SPEC~警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿~」の当麻紗綾役に戸田はほぼすっぴんで臨んだ。
京大出身の天才刑事・当麻は見た目に構わず髪の毛はボサボサで、なぜかずっと腕に包帯を巻いている。“SPEC(スペック)”という謎の力を使う者たちと対峙していく。
激化する戦いの場面を撮影する際は、酸素吸入器を傍らに置いて絶叫していた戸田恵梨香。華奢な身体のどこにそんなパワーがあるのかと驚くような力強さを発揮していた。
一見、ぶっきらぼうでがさつに見えて、実は繊細で思いやりがあって……という当麻の人物造形は戸田恵梨香の演技によってとても愛おしいものとなった。
2012年、大野智主演の「鍵のかかった部屋」では新人弁護士・青砥純子役。弁護士・芹沢(佐藤浩市)のアシスタントをつとめている。ひっつめた髪型、パンツスーツで通す、真面目な人物だが、ちょっと変わったところもあって、そのギャップにナチュラルな可笑しみが宿る。大野と佐藤のアシストも絶妙だった。
2018年、「大恋愛~僕を忘れる君と~」は若年性アルツハイマーにかかる産婦人科医・尚役。婚約者がいながら、大好きな小説の作者である間宮真司(ムロツヨシ)に惹かれ、彼への愛を貫くも、じょじょに記憶を失ってしまう。
きびきび働く優秀な医者が記憶を失くして弱さを露呈していく、その変化が切なければ切ないほど、真司と尚の純愛が際立っていく。恋愛ドラマが求められてない時代だなんて嘘のように盛り上がり、恋愛ドラマ復活の急先鋒となった。