image: Rumka vodki / Shutterstock
長らくSF世界の住人だったが、いま確実に人型ロボットの足音が現実世界に近づいている。Teslaが開発中の「Optimus」や、Amazonが物流拠点で試験導入する「Digit」のように、作業現場での実用化を目指した人型ロボットの開発やテストに関するニュースを耳にする機会が増えた。開発スピードが加速している背景には、なんと言ってもAI技術の進歩、それに加えて製造コストの低下があるという。

※TECHBLITZでは、人型ロボット分野の国内外のスタートアップを独自に調査。記事後半では、中でも注目の5社を紹介します。

人型ロボット(ヒューマノイドロボット)とは:
人間の体に似た形状のロボット。人型のデザインは、人間が使用する道具や環境に適合させるという機能面の目的が一般的。近年はスタートアップを中心に開発競争が進み、手足の動作が滑らかなロボットも数多く登場。まずは倉庫や工場での活用、ゆくゆくは高齢者介護の現場などでも活躍できる可能性があり、深刻な労働力不足の解消につながることが期待されている。

<目次>
Teslaの人型ロボット、AIが開発スピードに貢献
人型ロボットが「人型」をしている理由
TECHBLITZが選ぶ、人型ロボット関連スタートアップ5選
 1. 1X(ノルウェー)
 2. Agility Robotics(米国)
 3. Sanctuary Cognitive Systems Corporation (Sanctuary AI)(カナダ)
 4. Diligent Robotics(米国)
 5. PowerON(ニュージーランド)

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Teslaの人型ロボット、AIが開発スピードに貢献

 Teslaは2023年12月、第2世代の人型ロボット「Optimus Gen 2」の動画をX(旧Twitter)に投稿。前モデルからのアップデートとして、軽量化や歩行速度の向上、卵をつかめるほど繊細な指の動きが可能になった新型の「手」などが目を引いた。

 それから1カ月後の2024年1月には、ロボットが器用な動作で洗濯物をたたむ動画をElon Mask氏がXに投稿。複雑な動作をこなす姿に驚きのコメントも寄せられたが、これはネット掲示板のユーザーにより「仕掛け」がすぐに見破られ、画面外でオペレーターが遠隔操作していると判明した。Mask氏は自身の投稿にリプライを付ける形で、「注意事項:Optimusはまだ洗濯物を自動ではたためないけれど、いずれこれが任意の環境で完全自動化されるのは間違いない」と弁明。器用さを検証するための試験だったという。

 いずれにせよ、プロジェクト発表(2021年8月)から2年半弱での開発スピードには目を見張るものがある。2023年に第1世代と第2世代が立て続けに公開されたOptimusの急速な進化について、開発に携わっているMilan Kovac氏は、「大規模なAIモデルのトレーニングと評価インフラストラクチャー」「アクチュエーターやバッテリー、AIチップ、自動運転ソフトなど自動車開発で培った技術的な基礎」などがこれを可能にしたとXへの投稿で言及している。

 なお、人型二足歩行ロボット開発の先駆けとして知られるBoston Dynamicsの「Atlas」は、2013年7月のデビューから、ジョギング機能が追加されるまでに約5年の歳月を要した。

洗濯物をたたむ「Optimus Gen 2」(Xに投稿された動画のスクリーンショット)

人型ロボットが「人型」をしている理由

 Amazonは2023年10月、物流拠点に人型ロボット「Digit」を試験導入すると明らかにした。ロボットは、同社が投資するスタートアップのAgility Roboticsが開発したもの。二足歩行し、両腕を使って物を持ち上げたり、移動させたりすることができる。

 物流拠点や工場ではロボットアームが導入されるケースが多い。Amazonは人型ロボットを試験する理由について、「サイズと形状が人間向けに設計された建物によく適している」「作業員との協業型ロボットであるDigitのようなソリューションを拡張する大きなチャンスがある」と説明している。

 このように、人型ロボットが「人型」をしている理由は、人間が働いている場所での協業や代用を想定しているケースが最も一般的。2023年3月にステルスモードから脱したスタートアップのFigureの自律型汎用ロボット「Figure 01」や、Apptronikの二足歩行ロボット「Apollo」などもその例だ。別のケースとしては、Engineered Artsが開発する人型ロボット「Ameca」に代表される娯楽目的のロボットのように、用途が人との交流である場合が挙げられる。

「Ameca」は表情豊かで、OpenAIのGPT-3を利用して会話内容を生成する(Engineered Arts提供)

TECHBLITZが選ぶ、人型ロボット関連スタートアップ5選

人型ロボット開発は各種作業を想定した汎用型ロボットを筆頭に、物の移動により特化したもの、病院での業務支援ができるものなどさまざま。また、サブ技術ではあるがロボットのグリッパーに「触覚」を与えるような技術を開発するスタートアップもある。TECHBLITZ編集部が選ぶ、人型ロボット関連のスタートアップ5社はこちら。

1. 1X

1X
労働力不足を補う人型アンドロイド
設立年 2014年
所在地 ノルウェー モス
 1Xのロボットは、人間のような動きや行動が可能な、安全性と実用性を重視したアンドロイド。世界中での労働力不足を緩和する目的で人間と共存可能な実用アンドロイドの開発を行っている。特徴は、ギアを排除し人工筋肉と独自開発したモーターを使用して、より自然かつ安全な駆動を実現している点。OpenAIが出資している。
image: 1X

2. Agility Robotics

Agility Robotics
二足歩行の人型デリバリーロボ
設立年 2015年
所在地 米国オレゴン州コーバリス
 Agility Roboticsのロボットは、二足歩行の人型デリバリーロボット。最大約18kgの荷物を持ち上げ、指定された場所まで配送。高度な自立性を有し、最小限のプログラミングで利用できることが特徴。Amazonが出資している。
image: Agility Robotics

3. Sanctuary Cognitive Systems Corporation (Sanctuary AI)

Sanctuary Cognitive Systems Corporation (Sanctuary AI)
汎用動作を行うヒューマノイドロボット
設立年 2018年
所在地 カナダ ブリティシュコロンビア州バンクーバー
 Sanctuary Cognitive Systems Corporation (Sanctuary AI)のロボットは、汎用的に活用できるヒューマノイドロボット。ドアの開閉 / 物を持ち上げる / ごみを捨てるなどの基本的動作を始めとする数百のタスクを行え、サービス業などの人手不足解消に貢献。最終的には、自然言語で指示を受けることができるよう目指す。
image: Sanctuary Cognitive Systems Corporation (Sanctuary AI)

4. Diligent Robotics

Diligent Robotics
自律型の病院ロボットアシスタント
設立年 2016年
所在地 米国テキサス州オースティン
 Diligent Roboticsのロボットは、病院スタッフが患者のケアに専念できるように、日常業務を支援するロボット。消耗品 / 医薬品 / 検体の院内配送など、患者とは直接接しない日常的な雑用を引き受け、活動範囲は特定の科やフロアにとどまらず、病院の建物全域で臨床スタッフを支援。
image: Diligent Robotics

5. PowerON

PowerON
ロボットグリッパーに触感を与える
設立年 2019年
所在地 ニュージーランド オークランド
 PowerONの製品は、誘電エラストマー (DE) 技術を活用した「人工筋肉」とロボットフィンガーチップ用の触覚アレイ。DEスイッチにより、ロボットのグリッパーに「触覚」を持たせ、把持力の調整、物体や掴むべき位置、滑り具合などを識別することが可能。ロボットの他にも、オートメーション、Eコマース、アグリテック、医療などの分野で、様々なアプリケーションの可能性が考えられる。
image: PowerON

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