小田原「だるま料理店」 明治26年創業の街の食堂。天丼だけじゃない昼酒処

小田原「だるま料理店」 明治26年創業の街の食堂。天丼だけじゃない昼酒処

東海道五十三次、9番目の宿場町、小田原。天下の険、箱根の江戸側の玄関です。城下町であり、港町でもある小田原は、地形や歴史、文化に様々な表情を持つ”濃い”街です。

お酒と食事を楽しむならば、1893年(明治26年)創業の長い歴史を持つ食堂「だるま料理店」は外せません。小田原を代表する一軒で、名物は特注のごま油で揚げた天丼です。ただ、ここはそんなガイドブックに乗っているような食事だけでなく、小田原のベテランノンベエの間で重宝されている昼酒処でもあります。

駅伝で話題の小田原へ、足を伸ばし、相模湾の幸や名物の天ぷらを肴に一献傾けてみませんか。

 

小田原へは、東京駅からJR東海道線でおよそ60分。新宿からの特急ロマンスカーもとっても便利です。街の雰囲気は、同じ県下の横浜や川崎の雰囲気と違い、独特の地方主要都市のムードがあり、日帰りで旅情を味わえる街として人気です。温泉街、箱根湯本も登山電車で少しの距離。

 

箱根を目指す路線バスのターミナルがある小田原駅前。「桃源台」や「箱根町」の行き先にワクワクします。それを囲むようにひもの屋、かまぼこ屋、ういろう屋とお土産物屋が賑わいます。

 

目指す「だるま料理店」は、市民会館のお向かい。東海道(国道1号)が鉤型に折れる場所で、箱根駅伝でも有名なスポットに接しています。

 

町の食堂、と言うにはあまりにも立派な建物。相模湾で多くあがったブリの漁で財を成した地元の網元直営の店として始まりました。豪壮・華麗、楼閣風の母屋は、関東大震災のあと、1926年(大正15年)に建てられたもの。檜、松、欅といった良材がふんだんに使われています。正面中央に唐破風玄関、これが食堂?と驚く造りです。

 

なんと、国の登録有形文化財。

 

中に入ると、柱の少ない高い天井の広間が広がります。店内の重厚感もなかなか。アールデコ調の飾りなどもあり、大正ロマンがつまっています。

 

テーブル席の他、小上がりがあり、老舗の温泉旅館へやってきたような気分で食事・お酒が楽しめます。二階にも座敷があり、数寄屋風書院造となっています。

 

そんな歴史ある建物ですが、いまでも「街の食堂」をモットーにされていることから、普段から利用できる価格で気軽に立ち寄れます。ご近所の方がお昼ご飯にぶらり訪れるようなお店です。

まずは瓶ビールをトトトと注ぎ、乾杯!

 

瓶ビールは中びんのキリンラガー(550円)、樽生はアサヒスーパードライプレミアムで450円です。お酒は沢の鶴と、地元丹沢のお酒・松みどり(足柄上郡松田町・中沢酒造)を用意。甲類はなく、酎ハイは乙類いいちこ麦のウーロン割を用意しています。このあっさりとしたドリンクメニューも老舗らしさ。

 

定食、お刺身、お寿司、天ぷらを揃えています。人気の天丼セットは1,700円。お刺身は950円、寿司や天ぷらは1,000円からと、ちょっとした贅沢ご飯にちょうどいい価格。

 

網元直営から始まった歴史もあり、いまも小田原・早川漁港で水揚げされた相模湾の鮮魚をしっかりと揃えています。今日はひらめ、かんぱち、まぐろなど。鯵ずくし握りは、よい鯵が水揚げされたときのみ登場し、これもおすすめ。

 

セット、定食は2,000円ほど。今日はせっかく小田原まできたので、松定食といきましょうか。天ぷら、刺身、小鉢に椀のものと、おつまみが一通り揃います。

 

盛りの内容は、季節によって変わっていきます。この日の八寸は、お正月らしく縁起の良い内容。

 

お刺身はまぐろと鯛で紅白です。こうなると、ビールから自然と日本酒へ移行したくなります。

 

松みどりのお燗は、かわいいひょうたん徳利で運ばれてきます。

 

燗のつけが絶妙で、品書きに「熱燗」とあっても、「上燗」ほどのちょうどいい塩梅です。刺身も八寸もお酒も、老舗の安心感があります。

 

大きく立派な海老天と穴子、ししとうの天ぷら。ごま油がほのかに香り、箸が進みます。この味を求めて長年通う地元の常連さんも多いです。

 

ご飯と吸いものは後にしてもらえます。こうして揃えば、お酒を誘うものばかり。数人でくれば、天ぷら1,000円など単品であれこれ頼めますが、1人、2人ならばこういう定食飲みもおすすめです。

実は、早川漁港(小田原漁港)の場内にある「魚市場食堂」も、ここだるま料理店の系列店。小田原の魚で飲みたいとき、だるま料理店という選択はいかがでしょう。お正月明けより、無休でお昼から通し営業という使い勝手の良さもポイントです。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

のれんと味 だるま料理店
0465-22-4128
神奈川県小田原市本町2-1-30
11:00~20:00(元旦~1/3定休)
予算3,000円