関西から関西以外の地域に引越した経験がある方は、同じ畳数の部屋でも狭く感じた経験があるかもしれない。実は日本ではエリアによって畳のサイズが異なっていた背景があり、現在の住宅にもそれぞれのエリア性が反映されていることがある。そこで、京間(関西間)をはじめとした畳の種類やサイズの違いについて一級建築士の佐川旭さんに解説していただいた。
「京間(きょうま)」は、京都を中心とした関西圏以西の西日本で使われている畳のことで、「関西間」「本間間(ほんけんま)」とも呼ばれる。一畳のサイズは1.82m2(1.91m×0.955m)。このサイズは1間(6尺3寸)がもとになっている。
京間から派生した畳のサイズはエリアによって異なり、愛知・岐阜・三重など東海エリアに多く見られるのは「中京間(ちゅうきょうま)」、東京をはじめとした関東地方を中心に東日本で使用されている「江戸間(えどま)」、アパートやマンションなどの集合住宅で使用されている「団地間(だんちま)」がある。
京間が本間とも呼ばれているように、中京間は三六間(さぶろくま)、江戸間は五八間(ごはちま)、団地間は五六間(ごろくま)と呼ばれている。三六間は一間(長辺)の長さが六尺、短辺の長さが三尺であることから三六間といい、江戸間と団地間はそれぞれのエリアで用いられていた一間(長辺)の長さからつけられている。
面積は、京間>中京間>江戸間>団地間の順で大きくなる。
畳の種類 | サイズ |
---|---|
京間(本間) | 10.94m2 |
中京間(三六間) | 9.93m2 |
江戸間(五八間) | 9.27m2 |
団地間(五六間) | 8.67m2 |
畳の広さは京間と団地間とでは、同じ一畳でも面積が約20%も異なり、京間の6畳は団地間では約8畳に相当する。畳縁はどのタイプも同じ幅なので、京間に比べて江戸間や団地間の見た目の印象はよりコンパクトに感じるかもしれない。畳の種類によってサイズがバラバラなので、現在の住宅建築では建築物や建材の基準となる寸法として尺モジュールを採用するようになり、一畳は1.62m2が一般的な大きさとなっている。
「一部のメーターモジュール(100cmを基準とした寸法)の住宅では京間を使用することも。また、不動産業界では、一畳を1.62m2で表記するルールが定められていますが、物件の表記方法として平米数と併記すればどの畳のタイプで畳数を表記してもいいことから、団地間を用いた畳数表記を使用している場合もあるので、平米数で換算して確認することが大事です」(佐川旭建築研究所 佐川旭さん。以下同)
上述したように、一畳1.62m2が基準となるため、市販のカーペットやラグといった敷物はこの寸法に合わせて目安となる畳数表記している。
元々、畳は日本古来の敷物であり、奈良時代や平安時代から皇族や貴族の住まいに取り入れられるようになり、鎌倉・室町時代の書院造りでは現在の畳の使い方に近いものになったと言われている。畳の語源は「たためるもの」が由来で、畳床がついたものではなく、ムシロ状の敷物を折り重ねたものの総称とされていて、家具として扱われていた。明治時代になると一般家庭にも普及し始めたが、床の間や客間など一部に留まり、広く一般的に用いられるようになったのは戦後以降となる。
「畳のサイズの違いは、エリアごとの家の建て方の違いによるもの。関西エリアは畳の寸法を基準にしていた「畳割り」だったのに対して、関東エリアは柱真間の距離を基準にした「柱割り」だったことから違いが生まれました。また、戦後の人口増加に合わせて公団などの集合住宅建築が急ピッチで進められた際に、よりコンパクトなサイズの「団地間」が使用されるように。それぞれの時代や地域の住宅事情に合った畳のサイズが用いられていたと考えられています」
住宅の面積表記は、坪数と平米数で表記されることが多いが、坪数は尺モジュールを用いているため、一辺の長さは一間である1.82mで、畳2畳分が1坪の面積になる。
また、メーターモジュールの1グリットは1m×1m=1平米、尺モジュールの1グリッドは0.91m×0.91m=0.81平米(半畳)。尺モジュールの4グリット分が1坪となっている。
畳の面積について詳しくはこちら
1坪は何平米?1平米はどれぐらいの広さ? ちょうどよい広さの目安は?
畳には湿気を吸ったり吐いたりして、快適に保とうとする機能がある。しかし、湿気を溜め込んでしまったり、部屋の湿度が高くなってしまうとカビの原因にもなるため、時々換気をしてこまめに掃除しよう。
「伝統的な建物ではわらを芯材(畳床)に使用した畳が多く使われていますが、最近はいろいろな素材があり、現在の主流は芯材に断熱材「スタイロフォーム」を使用した「スタイロ畳」で、床下からの冷気や湿気の流入を和らげ、紙などを素材とした化学畳表を採用することでカビの発生リスクを減らすことができます。また、高齢者や小さいお子さんの転倒での骨折や怪我のリスクを減らす「衝撃緩和型」の畳もあります」
障子や襖などで和室をしつらえて、客間や寝室として使用するだけでなく、リビングに隣接させた畳コーナーなどカジュアルに畳のある空間を楽しむこともできる。
「日本人は、空間を多用途に使うのが得意な国民性なので、いろいろな用途にフレキシブルに使える畳は相性◎。琉球畳のような半畳サイズの畳や縁のないタイプの畳などを使えば、洋風のLDKの空間にも馴染みます」
また、畳を全面に敷かずにフローリングと組み合わせたり、置き敷きタイプはフローリングに敷くだけで気軽に畳を取り入れることができる。畳をどのように使うのかで空間の雰囲気は変わるので、インテリアテイストに合わせて畳の使い方を楽しもう。
カラフルな畳をアクセントにすると、LDKの雰囲気にマッチした空間を演出することもできる。
「最近は、畳のカラーバリエーションも豊富。織り目の模様もさまざまなデザインのものがあります。縁もカラフルなものから選ぶことができるので、デザインやカラーを楽しむことができます」
市販のカーペットのサイズは先述したように一畳1.62m2に合わせているが、居室のサイズに合わないこともあるので、予めカーペットを敷く部屋の実寸を測っておくことが大切。畳の溝のところが窪みやすく段差ができるとつまずきやすいため、なるべくぴったりになるように調整しよう。
「湿気が溜まってしまうため、畳の上にはなるべくカーペットを敷かないほうがいいのですが、使う場合は月1回くらいカーペットを剥がして、畳を呼吸させてあげるようにしましょう」
「畳の上に大きな家具などを置くと、重みで畳が凹んで跡が残ってしまいます。ベッドやタンス、机など動かさないものはなるべく畳の上には置かないようにしましょう」
畳の上でキャスター付きの椅子や収納などを使用するとイ草が切れてボロボロになってしまうので、それらを使用する場合は畳に敷物を敷くなど対策を。カッターなど鋭利なもので傷つけないようにも注意が必要だ。
「畳の掃除は掃除機でもOK。畳の目に合わせてかけるようにしましょう」
「京間」は、京都を中心とした西日本で使われている畳のことで、「関西間」とも呼ばれる。一畳のサイズは1.82m2(1.91m×0.955m)
関西エリアは畳の寸法を基準にしていた「畳割り」だったのに対して、関東エリアは柱真間の距離を基準にした「柱割り」だったことから、エリアごとの家の建て方の違いによって畳のサイズの違いが生まれた
現在、不動産業界では、一畳を1.62m2で表記するルールが定められている