タワーマンション・超高層マンション(以下タワマン)は法的に明確な定義はないものの、一般的に20階建て以上で高さ60m以上の高層マンションを指します。高層階からの眺望や利便性の高い立地などで人気のタワマンですが、実際に購入するとなると、S造、RC造、SRC造などの建物の構造や資産価値、容積率などについても気になるものですよね。今回はタワマンの構造や資産価値に加え、なんとなく知っているようで知らない建築用語などについて解説します。
型枠を組んだ中に鉄筋を配置し、コンクリートを流し込んで固めた構成材を用いた構造を鉄筋コンクリート造(RC造)といいます。タワマンに限らず、多くの分譲マンションで採用されているのはRC造です。
一方、鉄骨造(S造)は、鉄骨を柱や梁などの骨組みに使用する構造です。賃貸マンションなどでは採用されることもあるS造ですが、分譲マンションで採用されることはまれです。しかし、S造はRC造などよりも軽量なため、タワマンの場合は階段やエレベーター昇降路など、部分的にS造を採用している「RC造一部S造」というケースもあります。
また、鉄筋コンクリートの芯の部分に鉄骨を入れた構成材を用いる鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)が高層の建物では採用されることもありますが、RC造に比べるとSRC造はコストも工期もかかります。
SRC造の最大のメリットは広い無柱空間をつくることができる点なので、商業ビルやオフィスビルなどで用いられることが多く、一般的なマンションなどでもあまり採用されることはありません。超高層のタワマンでも、SRC造よりもRC造が採用されることが多くなっています。
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先に紹介したS造、RC造、SRC造など、材料による構造の分類のほかにも、「ラーメン構造」や「壁式構造」など、柱や梁の構造の違いもあります。
まず、ラーメン構造の「ラーメン」は「枠」という意味で、柱と梁のフレームで建物を支える構造です。ラーメン構造は壁式構造と比べれば、構造解析の理論展開が最もポピュラーで、比較的やわらかくしなやかなため、地震のエネルギーなどを効果的に吸収できるという特徴があり、タワマンの場合はラーメン構造を採用しています。
一方、壁式構造は床、壁といった面で建物を支える構造になり、壁式構造は柱や梁型がないため、室内がすっきりする工法です。ただし、建物が重たくなるため、壁式構造は5階が限度になっています。特殊な工法の場合、5階を超える階数でも建築確認を取ることは可能ですが、20階を超えるようなタワマンで壁式構造が採用されることはありません。
耐震性を考える上で重要となる建物の構造として、「耐震構造」「制振(制震)構造」「免震構造」などもあります。
耐震構造は耐力壁などで建物を固めて揺れに対抗する構造で、一戸建てから大規模なビルまで幅広く用いられる構造です。しかし、タワマンの場合は高層階の揺れが大きくなるため、振動エネルギーを吸収する制振(制震)構造や免震構造が採用されることが多くなります。
制振(制震)構造と免震構造では、揺れのエネルギーを吸収する仕組みが異なり、制振(制震)構造は建物に制振ダンパー(制振装置)を配置します。一方、免震構造の場合は建物と基礎の間に免震装置を取り付け、振動を吸収し、建物に伝わる揺れをかわす構造です。
どちらの構造も地震動をどう抑え、制御できるかの技術開発が進められており、設計する設計会社やゼネコンなどによって、工法や性能には微妙な差異があります。
また、免震構造の場合、建物と基礎の間に免震装置を設置するだけではなく、建物の途中の階に免震装置を設置する中間階免震構造を採用するケースもあります。
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地震に備えるという観点では、建物の構造だけでなく、地盤や地盤に合わせた基礎も重要です。
支持層という強固な地盤が地表近くにある場合、直接地盤で支える直接基礎が採用されることが多いですが、支持層まで距離がある地盤の場合は、杭を支持層まで打ち込むことになります。
支持層が深いところにある場合は当然杭も長くなりますが、杭の長さがどの程度までであれば安心かという点について言及するのは難しいものです。
強固な地盤までの深さや、地盤の固さによっては、強度を増すために杭を太くしたり、本数を増やしたりすることでカバーしたりします。
●A=直接基礎(地盤にじかに乗る)
支持層と呼ばれる固い地層が地表近くにある場合は、基礎を直接乗せる
●B=杭基礎(地中に杭を打つ)
地盤が軟弱な場所では地中深く支持層まで杭を打ち、基礎を下から支える
マンションを建てるにはさまざまな工程が必要になりますが、大きく分けると準備工事、仮設工事、地業工事、土工事、躯体工事、内装・外装工事、外構工事があります。
準備工事ではまず仮囲いや山留工事を行い、状態によっては改良工事も行います。もともと建物がある場合は建物を解体して更地にする工事も必要となります。
躯体工事では地盤に杭を打ち込んだり、土台を作るための基礎工事からはじまり、低層階から順に躯体を作り上げていきますが、上階の躯体工事を進めながら、躯体のできあがった低層階の内装工事も進めていきます。
次に、外壁工事や屋上の防水など、外装工事を行い、続いて、電気設備や水道設備、空調などの配管工事のほか、天井や壁のクロスなどの仕上げを行った後、最後に植栽や外部の駐車場部分などの外構工事を行うのが一般的な流れです。
ただし、個別の工事によって条件というのはさまざまです。工程計画については条件に合わせて検討されるため、工事の流れは物件ごとに異なります。
また、建設期間についても工事の流れと同様、土地の状態や建物の規模など、さまざまな条件によって左右されますが、一般的にマンションを建てるにはかなりの期間を要するものです。物件によって建設に要する期間は異なりますが、タワマンのケースについては、大規模なものになると建設期間が数年に及ぶケースも少なくありません。
構造以外にも、建築用語や法律的なことなど、タワマンにまつわるさまざまな疑問についても、解消していきましょう。
敷地面積に対して、建築面積を規定するのは建ぺい率ですが、敷地面積に対して建てられる建物の延床面積を規定するのは容積率です。
建ぺい率も容積率も用途地域によって制限値は異なりますが、何十階もの高さのタワマンの場合、延床面積が大きくなるため、「容積率の上限を超えてしまうのでは?」と疑問に思うこともあるのではないでしょうか。
タワマンが容積率をオーバーせずに建築可能な理由としては、さまざまな緩和措置があることが挙げられますが、例えば、容積率の割り増しを受けられるケースとして、総合設計制度による「公開空地」を設けるという方法があります。
総合設計制度とは、500m2以上の敷地内に居住者以外の一般の人も自由に通行や利用ができる公開空地を設けることなどによって、容積率制限や斜線制限、絶対高さ制限の緩和を受けられる制度で、タワマンの場合は敷地内にこの公開空地が設けられていることが少なくありません。
梁は床版(スラブ)の下が和に配置することが一般的ですが、上階の床版の上側に梁を配置した工法を逆梁工法といい、逆梁で柱をバルコニー側に出したものを逆梁アウトフレーム工法といいます。逆梁アウトフレーム工法は室内に柱や梁の出っ張りがなく、開口部を大きく取れるため、眺望を楽しみたいタワマンなどではよく使われる工法です。
逆梁アウトフレーム工法の場合は順梁工法のものとは外観も異なり、柱や梁が直接外観に現れるため、重量感のある外観になります。
RC造のマンションの法定耐用年数は47年ですが、これは減価償却のための法定耐用年数であり、物理的な耐用年数ではありません。躯体自体は適切に維持管理をすれば、100年でも持たせることは可能と言われますが、建物の耐震性やメンテナンスの状況にも左右されます。
また、躯体自体の耐用年数は長く持つといっても、建物の劣化状況や機能的に生活スタイルとマッチしなくなったりすることで、いずれ解体して建て替えるという可能性もあります。
建て替えにかかる費用については、建物の規模が大きくなるほど解体費用は高額になり、タワマンの場合は特殊な解体機材を用意する必要もあるため、タワマン全体の建て替え費用としては小規模なマンションなどよりも高額になることは必至です。ただし、一戸当たりの負担額となると、一概にタワマンの方が高額になるとは限らず、ケースバイケースということになるでしょう。
また、マンションの場合、建て替えをするには区分所有者及び議決権の5分の4以上の同意が必要で、総戸数の多いタワマンの場合は、小規模マンションよりもさらに合意形成のハードルは高くなります。しかし、現在、区分所有法については見直しの検討が進められており、建て替えに必要な賛成を緩和する案などが検討される見通しです。
タワマンに限らず、集合住宅の場合、騒音はご近所トラブルにもつながる大きな問題ですが、一般的に木造やS造の多い賃貸マンションよりも、RC造などが多い分譲マンションの方が建物の遮音性能は高い傾向にあります。
しかし、タワマンの高層階については、地上から離れている分、周囲が静かな環境のため、低層階よりも音が気になることもあります。さらに、タワマンはその眺望が魅力の一つですが、眺望を重視するため、バルコニーを設けずに直接外部に対して開口部が大きく、広く取られていることが多く、一般的なマンションに比べ、開口部から音が入りやすいことに加えて、遠くの音が届く傾向があります。
また、低層のマンションなどに比べると、高層のタワマンは建物の戸境壁にコンクリート以外の素材を主とした乾式のボードを使用していることが多くなります。乾式のボードを使用したものの方がコンクリートの戸境壁よりも遮音性能が低いといわれることもありますが、仕様の違いによるところが大きく、乾式ボードを採用しているからといって、一概にタワマンは隣室の生活音や騒音が気になるというわけではありません。
さらに、床についてはタワマンに限らず、マンションではコンクリートスラブに直接床材を張る「直床」ではなく、「二重床」が採用されている物件がほとんどです。二重床は、コンクリートスラブの上に支持脚をのせ、その上に床材をのせるため、床材とコンクリートスラブの間に空洞が生まれます。空洞がある分、一般的には音も反響しやすくなりますが、一方でこの二重床の音の反響を抑える手法や技術も開発が進んでおり、二重床の遮音性については仕様の違いによるところが大きくなります。
また、二重床の懐の高さ寸法をきちんと確保している場合は、配管・配線などを設置できるため、将来のリノベーションの際も交換が簡単というメリットがあり、そのような点を考慮して、直床よりも二重床を採用しているタワマンが多くなっています。
マンションの資産価値とは「高く売却できるか」、「高く貸せるか」ということに言い換えられます。
通常、マンションの価値というのは築年数と共に落ちていくものですが、資産としての価値を維持できる物件というのは、年数を経てもニーズのある物件です。例えば、その物件に多くの人が住みたいという要素があるかどうか、また購買力が高い層に魅力的かどうかという点が資産価値を保つための要件となります。
ニーズを考える上で、最も重要になるのはその物件の立地です。都心部など人気のエリアに立地していたり、駅近にある物件などは比較的価値が落ちにくく、場合によっては分譲時の購入価格よりも、中古の取引価格の方が高くなることもあります。
タワマンの場合、立地という観点でいうと、都心部や、駅近に位置するものも多く、また、駅近に立地している場合などは、周辺に利便施設が集積しているなど、資産価値の観点で有利な条件がそろう物件が多い傾向があります。
さらに、タワマンは再開発の一環として開発されることも多く、街全体のポテンシャルの高まりと共に、物件自体の資産性も高まるケースも少なくありません。
立地以外の部分でも、タワマンの資産価値においてアドバンテージになりうるポイントとしては「希少性」が挙げられます。
20階以上の高層階住戸は、マンションのマーケット全体に占める割合を考えると希少性があるものですが、その希少性はそれらの住戸を有するタワマン全体の資産価値にも影響するものです。最高階数が20階以上のマンションについては、最高階数がそれよりも低いマンションよりも、資産価値が高くなる傾向があります。
さらに、立地などに比べると影響は大きくないものの、住戸の広さや方角、日当たり、さらに住戸からの眺望なども資産価値に影響するポイントです。タワマンの場合、高層階からの眺望というのは魅力の一つですが、東京タワーなど、シンボリックな建造物や景色が見えるような眺望は特に人気があり、資産価値を考える上で考慮しておきたい要素にもなります。
相続税は「相続税評価額」によって決定されます。相続税評価額とは、国税庁が定める評価基準(財産評価基本通達)によって決められた、被相続人の財産の価額です。
マンションの建物部分の相続税評価額については、居住用か賃貸に出していたものかでも異なりますが、被相続人が居住していた場合、相続税評価額は「固定資産税評価額」と同じです。固定資産税評価額は市区町村役場から毎年送られる「固定資産税の課税明細書」に記載されています。
なお、マンションの固定資産税評価額については、1棟当たりの評価額を床面積比で按分するため、住戸の階数が評価額に影響することはありません。
ただし、タワマンについては市場の取引価格において、高層階の方が低層階よりも高額になる傾向があるため、2017年度の税制改正により、同じ面積であれば、高層階の方が固定資産税額が高くなるように、固定資産税額の算出方法が変更されました※。
※平成29年1月2日以降に新築された、20階以上(60m超)のマンションが対象
この改正は固定資産税評価額の改正ではなく、固定資産税額の算出方法の変更のため、居住用タワマンの相続税評価額への影響はありません。通達上の相続税評価額については階数による補正は行われないため、タワマンの場合、相続税評価額と市場での一般的な取引価格との差が大きくなる傾向があります。
このような理由から、節税対策としてタワマンを購入する人も少なくありませんが、財産評価基本通達6項に「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する」と定められているため、あまりに節税金額が大きくなる場合は、この財産評価基本通達6項が適用される可能性もあるということも覚えておきましょう。
タワマンはどのように探せばいいのか、SUUMOを例にネットでのタワマンの探し方をご紹介します。
まず、物件を探す場合、ポイントとなるのはエリアです。希望のエリアを選択して探しはじめるのが定番ですが、タワマンを買うのか借りるのか、買う場合は新築か中古かなどが決まっていれば、それらの条件から探しはじめることも可能です。
「関東」「関西」など、広域のエリアの選択から始めた場合、次は買うか借りるかなどの条件を選択した上で、都道府県や希望の沿線、駅なども選びましょう。次の絞り込み条件の所で「階建て20階以上」にチェックを入れれば、希望エリアのタワマン物件を検索できます。絞り込み条件では、価格や広さ、駅徒歩分数などの詳細条件も指定すれば、さらに希望の物件を絞り込むことが可能です。
また、都道府県や沿線を選ぶページで、「タワーマンション」というキーワードを入力すれば、広域エリア内のタワマン物件をダイレクトに検索できます。
また、以下のURLからはSUUMOのタワーマンション(20階以上)の条件で探す新築マンション、中古マンション、賃貸マンションの情報ページを直接確認できるので、ぜひチェックしてみてください。
タワマンの多くはRC造で建てられ、制振(制震)構造や免震構造を採用されることが多い
公開空地を設けるなどして、容積率の緩和措置を受けて建設されるタワマンは少なくない
都心部や駅近など、資産価値を保つ上で重要となる立地の面で優位性のあるタワマンは多く、タワマンにおける高層住戸の希少性や眺望なども資産価値を考える上でアドバンテージになりうる