分譲マンションの購入の手続きって、なんだか大変そう。どのような流れなのか、そもそも何から始めていいのかわからない、という初めてマイホームを購入する人へ、購入するメリットと、スムーズに理想の家を手に入れるための流れを解説します。
マンションにするか戸建てにするか、新築を選ぶか中古を探すかが家探しのスタートになる人は多いでしょう。すまいのどのタイプにもそれぞれメリットはありますが、ここでは新築分譲マンションを購入するメリットを紹介します。
一般的な賃貸マンションや賃貸アパート、築年数の古い中古住宅と比較すると、新築分譲マンションのキッチンや浴室、トイレなどの水まわり設備、建具などの内装材はグレードが高め。毎日の家事で使う設備機器や長い時間を過ごす空間が上質なほうが日常の満足度はアップします。
決まったプランの中から選ぶ分譲マンションですが、多くの物件で、内装やキッチンなどのカラーバリエーションを選べたり、一定の間取り変更が可能。分譲物件とはいえ、自分の好みや手持ちの家具に合う空間にすることができます。なお、オプション内容によっては有料の場合があるほか、オプションを選べる期限もある点に注意。
大規模物件やタワーマンションなど住戸数が多い新築マンションは、共用施設やサービスも充実。豪華なエントランスや高層階のラウンジ、ゲストルーム、ライブラリーのほか、コンシェルジュが常駐しクリーニングの受付や宅配便の取り次ぎなどさまざまなサービスが受けられる物件も。
エントランスはオートロックで守られ、各住戸の玄関ドアを施錠しておけば外部からの侵入がしにくいマンション。敷地への侵入や各部屋の窓の施錠に気をつかう必要がある戸建てに比べると、安心度が高いといえます。
子どもの成長がきっかけになることが多いマイホーム購入。そのため、一斉に入居する新築分譲マンションは近い世代が多く、同じ年頃の子どもがいるケースが。棟内で子ども同士や親同士の交流が生まれやすいでしょう。
タワーマンションなど再開発エリアに建てられる物件は、周辺に再開発計画で新設されたテナントビルやオフィスビル、クリニックなどがあり、入居時から生活環境が整っています。また、駅直結の物件なら暑さや寒さ、雨などを気にせずに最寄駅までアクセスできます。
賃貸住宅では住んでいる限り家賃を払う必要がありますが、購入したマンションならローン完済後は管理費や修繕積立金、固定資産税・都市計画税といった維持費や町会費を支払えば住み続けられます。退職前に完済すれば、老後の経済的負担が賃貸住宅よりは軽くなります。
設備や間取りに不満があっても勝手に変更できない賃貸に比べて、所有しているマンションは専有部であれば設備の交換や間取り変更ができます。家族構成やライフスタイルが変わったときに、暮らしやすい住まいにリフォームできることは大きなメリットです。
下記は分譲マンションでの一般的なリフォームの可否。ただし、マンションによっては管理規約で認められていないリフォームや、認められていても制約があるリフォームもあります。実際にリフォームをすることになったら、管理規約を確認することが必要です。
設備交換 | ◎ | キッチンやシステムバス、トイレ、洗面台、給湯器、冷暖房機器などの交換はOK |
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間取り変更 | ○ | 建物を支える構造壁や梁、PS(パイプスペース)などを除いて、変更は可能。ただし、キッチンなどの水まわり設備の移動は排水管に必要な傾斜をつけられない位置への移動は難しいことも |
窓の交換 | △ | 窓は共用部で、交換してサッシの色が変わると外観に影響するため基本的にはNG。ただし、サッシはそのままで複層ガラスにするなどのリフォームはOKの場合も。また、断熱性アップのために内窓を設置することは可能 |
玄関ドアの交換 | × | 玄関ドアは共用部分のため、基本的にはNG。ドアの内側の色の変更などはOKな場合も |
インターホンの交換 | × | オートロックのエントランスとつながるインターホンの場合、共用設備のため個人の判断ではNG |
都心部や駅近のマンションは、転勤などで一時的に転居が必要になった場合に貸しやすいのがメリット。また、資産価値が大きく下がらない立地なら、住宅ローンが残っていても売却で完済しやすく住み替える際にもスムーズです。
メリットの多い新築分譲マンションですが、物件によって、また住む人の価値観によってはデメリットといえることもいくつかあります。
毎月の住居費が家賃や管理費、火災保険料だけの賃貸と違い、マンションを所有している場合は固定資産税や都市計画税、マンションの大規模修繕に備える修繕積立金が毎月かかることになります。
マンションの建物や敷地を共同で維持・管理していくのがマンションの管理組合。区分所有法で、分譲マンションの購入者(区分所有者)は必ず加入することになっています。管理組合から理事会の役員が選ばれますが、小規模なマンションの場合、選出される確率が高かったり、順番が短期間でまわってくることに。理事会の活動が負担に感じる人にとっては分譲マンションのデメリットといえます。
転勤になったり、ご近所トラブルが発生したりなど、引越しを考えることもあるでしょう。しかし、購入したマンションの場合は、賃貸のように身軽に引越しがしにくいのがデメリットです。
分譲マンションを、賃貸マンションと比べたときのメリットやデメリット、とくに住居費についてはケースバイケース。詳しくは下記の記事も参考にしてください。
分譲マンション購入と賃貸マンションを比較するならこちら
→賃貸VS購入のメリットデメリットを比較。「住居費」はどっちが得?
満足できるマンションに出会うには、何をすればいいのでしょうか。まずは、購入を決めてから物件選びまでのダンドリを紹介します。
分譲中のマンションは数多くあります。片っ端からモデルルーム見学をしても、どれも素敵に見えてしまい購入候補をしぼりきれません。まずは、自分がマンションに求める条件を整理。どのエリアや路線に住みたいか、勤務先や通学先からの所要時間の上限、広さ、価格帯などの希望をリストアップ。すべて希望通りの物件がみつからないときのために優先順位も考えておくことが大切。
なお、条件が思い浮かばない場合は、まずはモデルルームを見学してみて、どんなマンションに住みたいかをイメージすることから始めるといいでしょう。
今現在、どんな新築分譲マンションが分譲されているのか情報収集。
パソコンやスマホなら、SUUMOなどの物件検索サイトが便利。市区町村別や路線別・最寄駅で検索ができ、価格帯や広さ、間取り、駅からの所要時間のほか、部屋の方角や床暖房有、ごみ出し24時間OKなどの条件でしぼりこむことができます。
そのほか、住宅情報誌や広告などで広く情報収集をするのがおすすめです。
自分がいくらのマンションが買えるかがわからなければ、物件探しもなかなか進みません。物件探しの初期段階で、資金計画も同時スタート。自己資金にはいくら用意できるか、住宅ローンからはいくら借りられるかを確認しておきましょう。なお、住宅ローンの借入額は借りられる金額ではなく、返せる金額で考えること。
SUUMOのサイトでは、毎月返済額や頭金額から購入限度額を出すことができます。
住宅購入する前にチェックしよう
→住宅ローンシミュレーション
新築分譲マンションの場合、価格の3~5%程度の諸費用がかかりますから、その分も忘れずに予算に入れておきましょう。
気になる物件が見つかり、自分が買えるマンションの価格帯や条件がつかめたらモデルルーム見学へ。完成前の物件のモデルルームは、購入したい住戸(じゅうこ:マンションなどの集合住宅内の住宅部分。一戸ごとのスペースを指す)とは異なるケースが多いため、モデルルームの営業担当者に間取りや内装、設備のどこが違うのかなどを詳しく聞いておきましょう。
また、棟内ではなく、別の場所にモデルルームが設置されている場合は、実際にマンションが建つ場所まで足を延ばして周辺環境をチェックすることも大切です。
モデルルーム見学は1件目で「これこそが理想的なマンション!」と気持ちが盛り上がることもよくあります。でも、複数の物件を見学し、最近の設備の傾向や価格の相場をつかんだうえで冷静に比較検討することは大切。家族でよく話し合って、購入物件を決定しましょう。
物件情報を収集し、モデルルームをまわっても、希望に合う物件になかなかめぐりあえないこともあります。そんなときは、エリアを変える、路線を変える、最寄駅を変えるなど物件探しの条件を変えてみるのも手。
特に、インターネットで条件を入力して検索する場合、条件から少しでもはずれた物件は見逃してしまいます。例えば、最寄駅から徒歩5分以内希望でも、徒歩6分のところに理想的な物件があるかもしれません。検索条件をゆるくして探してみるのもおすすめです。
購入物件が決まったら、いよいよ契約、そして入居。契約から入居までの流れや住宅ローンの手続き、どんなお金がかかるかを順を追って解説します。
購入したいマンションが決まったら、先着順受付の物件なら購入申し込みをして購入の意思を示します。抽選による受付の場合は登録期間中に登録をし、抽選に通ったら購入申し込みとなります。
住宅ローンを借りる金融機関に仮審査を申し込みます。金融機関は年収や年齢など、申し込んだ人の返済能力によって融資の可否や融資限度額などの条件を提示します。民間の住宅ローンの審査基準は金融機関によって違うため、複数の金融機関の仮審査を受けるといいでしょう。
住宅ローンの仮審査に通り、購入が決まったら売買契約を結びますが、その前に必ず購入物件と取引条件について宅地建物取引士が説明する「重要事項説明」を受けます。契約と同じ日に行われることが多いのですが、事前にコピーをもらって読んでおき、不明点があれば質問するようにしましょう。
売買契約では、契約書の内容に誤りがないかを確認。また、住宅ローンの本審査に通らなかった場合は無条件で売買契約を解除し、手付金が返還されるローン特約が盛り込まれているかもチェック。ローン特約の期限も確認しておきましょう。もしも、住宅ローンが希望通り借りられず購入が難しくなった場合、ローン特約が付加されていない場合は、手付金を放棄しての契約解除になるのが一般的です。
契約の解除についてもっと詳しく
→売買契約締結後の解除とキャンセルについて
売買契約後は住宅ローンの本審査を受けます。審査に通ると、物件の引き渡し時期の前にローン契約(金銭消費貸借契約)を結びます。不動産会社が金融機関と提携している提携ローンを利用する場合、金融機関の担当者とマンション購入者が集まって一斉に手続きをする住宅ローン契約会が開かれるのが一般的です。提携ローン以外の住宅ローンの契約は金融機関に足を運ぶことになります。
不動産会社から代金の残り(申込証拠金、手付金以外)や諸費用の金額や支払い方法、不動産登記の手続き、マンションの管理や、入居や居住に関することなど、さまざまな説明が行われます。提携ローンの契約会場で行われる場合もあります。
物件の引き渡し前に、建物や住戸の仕上がりが契約通りか、設備や建具、内装の仕上がりなどに不備がないかなどを確認する内覧会が行われます。問題がある場合は引き渡し日までに解決してもらえるかを確認しましょう。
住宅ローンから借りた資金と頭金の残りを支払い(残金決済)、諸費用を支払い、不動産登記の申請を行うことで、住戸の引き渡しとなります。通常、金融機関と不動産会社、購入者、司法書士が一堂に会して、すべての手続きをまとめて行う同時決済が一般的です。
※物件価格4000万円、ローン借入金3500万円の場合
売買契約印紙税:1万円
ローン事務手数料:約3万円
火災保険料:約2万円
ローン保証料:約72万円
金銭消費貸借契約印紙税:2万円
登記費用:約30万円
修繕積立基金:約30万円
管理準備金:約8万円
合計 148万円(物件価格の3.7%)
※諸費用は概算。ローン事務手数料や保証料は金融機関やローンの借り方によって異なる。火災保険料は保険会社や補償内容によって、登記費用に含まれる司法書士報酬は依頼先によって異なる。ローンは35年返済で試算
新築マンションの購入の場合、モデルルームで出会う担当者が入居までの流れを説明してくれます。担当者のサポートでスムーズに入居までの流れに乗れるのが一般的。とはいえ、ダンドリを自分でもしっかり把握しておけば、ローンの手続きや諸費用の用意などの準備を早めにでき安心です。
この記事は、2024年3月現在の情報です
新築の分譲マンションには賃貸に比べて設備のグレードが高いなどのメリットが多い
マイホームを買おうと決めてから物件を選ぶまでは、情報収集や理想のマンションの条件をイメージすることが大切
購入予算を把握するためには早い時期からの資金計画が大切
購入物件が決まったら、ローンの申し込みや売買契約など手続き関係が多くなるので早めに準備を