マンションの購入を考えて物件探しをしているときなど、「ゼネコン」や「デベロッパー」という言葉を耳にします。よく聞く言葉ですが、実は違いがよく分からないという人もいるのでは? ゼネコンもデベロッパーも、私たちの暮らしや住まいに密接にかかわっている業種。それぞれの事業内容について知っておきましょう。
「ゼネコン(総合建設業)」というのは、ゼネラル(general=総合)コントラクター(contractor=契約者)という英語の略称。もともとはアメリカで使われていた言葉です。一般的には「特定建設業許可を受けた総合工事業者」のことを意味しています。といわれても、あまりピンときませんね。順を追って説明していきましょう。
・「一般建設業許可」と「特定建設業許可」
建設工事を請け負うには建設業の許可が必要です。建設業許可には「一般建設業許可」と「特定建設業許可」があります。一般建設業許可は、許可を受けている業種全ての建設工事を受注することができます。いくらで工事を請け負うかという下請契約金額の制限はありません。
特定建設業許可は、1件の建設工事代金が4000万円以上、または建築一式工事代金が6000万円以上の工事を、下請けに出すときに必要な許可のことです。
つまり、国 や自治体、民間企業といった発注者から直接請け負った金額の大きな工事を、下請業者(協力会社)に発注することができるのがゼネコンということになります。
・社会基盤をつくる土木工事や、街をつくる建築工事を担当
では、ゼネコンが発注者から請け負う工事にはどんなものがあるのでしょうか。
土木一式工事では、道路や鉄道、トンネル、港、ダムなど社会の基盤となるものをつくります。建築一式工事では、高層ビルやマンション、ホテル、学校や駅などの公共施設、工場など規模の大きな建築物をつくります。また、台風や地震など自然災害の被害を受けた道路やトンネルなどの復旧工事もゼネコンの重要な仕事です。
日本国内にゼネコンは数多くあります。なかでも、売上規模の大きな大林組、鹿島建設、清水建設、大成建設、竹中工務店はスーパーゼネコンと呼ばれています。
なお、ゼネコンから下請業者として工事の発注を受ける専門工事業者のことはサブコンといいます。
「デベロッパー(ディベロッパー)」は英語でdeveloper=開発者のこと。不動産のデベロッパーというと、都市開発や再開発、宅地開発、マンション開発など、大規模な物件の開発事業を行う会社を指すのが一般的です。
・業務内容によって不動産会社もいろいろ。デベロッパーは?
「不動産会社」といっても、賃貸住宅の仲介をする不動産仲介会社もあれば、不動産の販売窓口となる不動産販売会社もあります。建売住宅を企画して販売も行う不動産会社もあれば、賃貸物件を所有してオーナーとして管理も行う不動産会社もあります。会社によって、物件の種類や取り扱い方はさまざまです。
そのなかで、デベロッパーは、宅地開発や新築マンション開発、都市開発、都市の再開発、リゾート開発などを手がける不動産会社を意味します。これらの事業にはさまざまな企業がかかわりますが、デベロッパーはその事業の主体となって、企画・開発をメインに行います。
デベロッパーにはさまざまな会社がありますが、住友不動産、大京、東急不動産、東京建物、三井不動産、三菱地所、野村不動産、森ビルなど、どれも聞いたことがある社名でしょう。どの会社も、オフィスビルやマンション、宅地開発、都市開発など幅広い事業を展開しています。
ゼネコンもデベロッパーも、私たちの暮らす社会や街をつくり、支えている会社。例えば、新築マンションを開発する場合、デベロッパーが建築用地を確保し、どんな建物を建てるのか、大規模な土地の場合はどんな「街」に開発するのかを検討します。その企画の建築の発注を請けるのがゼネコンです。デベロッパーが発注者、ゼネコンが下請け業者ということになりますが、大規模なプロジェクトの場合、デベロッパーとゼネコンが共同事業者として企画や開発を進めることもあります。ゼネコンとデベロッパーは、パートナーの関係だといえるでしょう。
では、デベロッパーやゼネコンが行うさまざまな事業のなかで、私たちにとって身近な「街の開発」「新築マンション開発」「宅地開発」について解説しましょう。
活用されていなかった土地を活かしての街の開発や、既存の市街地や工場地などを再整備する再開発。再開発の例としては、現在進行中の渋谷駅周辺や、工場跡地にタワーマンションが次々と出現した武蔵小杉駅周辺がイメージしやすいでしょう。
新たな街の開発や再開発が行われる場合には、オフィスビルやマンションの新築だけでなく、車や人の流れがスムーズになり、駅などへのアクセスがしやすいように道路の拡張や変更を行うなどインフラ整備も一体として計画されることが多いです。商業施設や医療施設の誘致のほか、公共施設が移転してくる場合もあり、住みやすい、働きやすい街として完成します。
マンション開発では、デベロッパーが用地を仕入れ、どんなマンションを建てるかを計画し、ゼネコンが建築を行います。どんなマンションが求められるかは立地によって違ってきます。そこで、デベロッパーでは、都心からの距離や、地域の特性、周辺環境などさまざまな項目についてマーケティングを行います。その結果を踏まえて、自社のどのマンションブランドを建てるのか、どんな間取り、どんな仕様にするかなどを検討します。
下はマンションデベロッパーの一部と、主なマンションブランド(マンションシリーズ)名。同じデベロッパーのマンションでも、価格帯やデザインなどの特徴が異なるブランドを用意しています。
【住友不動産】シティハウス、シティタワー、シティテラス、グランドヒルズ、ガーデンハウス
【大京】ライオンズ、ザ・ライオンズ
【東急不動産】ブランズ、ブランズタワー、マジェス(ハイ・リノベーションマンション)
【東京建物】ブリリア、ブリリアタワー
【三井不動産レジデンシャル】パークマンション、パークコート、パークタワー、パークホームズ
【三菱地所レジデンシャル】ザ・パークハウス、ザ・パークハウス グラン、ザ・パークハウス アーバンス、スタイルハウス
【野村不動産】プラウド、プラウドタワー、プラウドシティ、オハナ
大規模なマンションでは、複数のデベロッパーが共同で開発を行うこともあります。例えば、「グランアルトシリーズ」は大京と住友不動産が共同開発するマンションに付けられるシリーズ名です。
つまり、マンション名からは、価格帯や特徴の目安ほか、どのデベロッパーが建てたマンションなのかが分かるのです。
土地を仕入れて、宅地の販売や建売住宅の企画・販売を手がけるのもデベロッパーの事業のひとつ。宅地は施工会社を指定した建築条件付きで販売したり、建売住宅は販売会社に販売を依頼したりなど、デベロッパーによって販売の仕方は違います。
開発の規模はデベロッパーによって違いますが、大手デベロッパーの場合、10区画程度や数十区画以上など、まとまった広さの開発を行うのが一般的です。何年にもわたって造成と販売を行う宅地開発の場合は、複数のデベロッパーが共同で事業を進めるケースも多く、駅の新設や商業施設、医療施設の誘致も含めた大規模な街づくりとなります。
社会のインフラや街づくり、家づくりを担うゼネコンとデベロッパー。気になるマンションを見つけたら、どのデベロッパーが企画開発したのかもチェックすると、自分の好みが見えてくるかも。
ビルや道路、ダムなど大規模な建設工事や土木工事などを受注して形にするのがゼネコン
都市開発やマンション開発など大規模な案件・物件の企画開発がメインのデベロッパー
新築マンション開発で、デベロッパーとゼネコンはパートナーとして事業に携わる