マンションを購入した知り合いや、モデルルームの営業担当の人から「マンション購入はメリットだらけですよ」と聞いたことはありませんか。たしかに、新築マンションも中古マンションもそれぞれに魅力的。でも、自分にとってはどうなのでしょう。メリットだけでなく、デメリットはないのでしょうか。そこで、さまざまな視点からマンションを買うメリットやデメリットを紹介します。満足できるマンション選びの参考にしてください。
ひとつの建物に複数の世帯が暮らす住居スペース(住戸)が集まった集合住宅のことをマンションといいます。マンション全体の所有者や、一室、または複数の住戸を所有する大家さんから借りる賃貸マンションもありますが、この記事では、住戸を購入して所有する分譲マンションについてお話しします。
まずは、マンションの主なメリット、デメリットをご紹介しましょう。メリット、デメリットを把握しておくことで、購入後にがっかり、ということを避けられます。
住まいは立地が大切です。どんな環境に建っているのか、通勤や通学、買い物などがしやすい場所にあるかといった日常生活に直結するからです。国土交通省の「令和2年度住宅市場動向調査」でも、分譲マンションを購入した人の69.4%が住宅の選択理由に「住宅の立地環境が良かったから」と回答。マンション選びで立地を重視する人が多いということです。物件にもよりますが、デベロッパーは完売しやすいよう、駅周辺や都心に出やすい路線など利便性のよい立地でマンションを供給するのが一般的です。また最近は、都心の再開発エリアでのマンション供給も多くありますから、駅近や駅直結のマンションを選ぶこともできます。
周辺に視線を遮るビルなどがなければ、マンションの中層階、高層階では眺望や採光、通風の良さが期待できます。敷地が広い大規模マンションでは隣の建物から距離があるため、1階や2階などの低層階の住戸でも、採光や通風が期待できます。
マンションは鉄筋コンクリート造が主流。躯体に隙間ができにくいため気密性が高く、冷暖房効率が高くなります。光熱費の削減や、CO2排出量の削減にもつながります。
住んでいる人が利用できる下記のような便利な共用施設や設備、サービスがあるのがマンションの特徴です。
・24時間利用可能なゴミ捨て場
・宅配ボックス
・セキュリティシステム
・ラウンジ
・ゲストルーム
・フィットネスジム
・ライブラリー
・コワーキングスペース
・コンシェルジュサービス
どのような共用施設や設備などがあるのか、無料か有料かは物件によって異なります。なかには、岩盤浴ができたり、カラオケルームがあったりするマンションも。一般的には総戸数の多い大規模物件やタワーマンション、グレードの高いマンションになるほど共用施設や設備、サービすが充実する傾向があります。
外からの侵入者を防ぐセキュリティ性が高いのがマンションの大きなメリットのひとつ。出入口に管理員の目があること、中層階、高層階の住戸は外から侵入しにくい点もマンションならではのメリットです。
共用設備がセキュリティをアップさせているのも特徴です。エントランスのオートロックや敷地内の防犯カメラはすでに一般的。カラーモニター付きのインターフォンは画像が鮮明で、録画機能が付いているものが導入されています。他にもオートロックが複数箇所あったり、外部からの訪問者は訪問先のフロアでしかエレベーターを降りられないようになっていたり。警備会社と契約して24時間体制で安全を見守られているマンションも多くあります。また、宅配ボックスには、宅配業者を装って侵入しようとする不審者を防ぐ効果があります。
上階と下階の2層になっているメゾネットタイプの住戸がある物件もありますが、多くはワンフロア。築年数の古い中古マンションでは、給排水管の通る浴室や脱衣室の床が一段高くなっている場合がありますが、最近のマンションは段差のないフラットな床で、バリアフリーな空間になっています。掃除機を一気にかけられる、ケガなどで松葉杖や車椅子を使うことになっても移動しやすいなどのメリットがあります。小さな子どもが段差につまずいてケガをすることもありませんから、子育て世帯にもメリットがあります。
映画や音楽の配信サービスの利用やテレワークの増加で、住宅でのインターネット接続は必要不可欠なものに。近年のマンションは、完成時からマンション全体でインターネットのプロバイダと契約がされており、入居したその日からインターネットが利用できる便利な環境になっているケースが多いです。
デメリットと感じるかはケースバイケースですが、人によっては「これがマンションのデメリットだ」と感じられることもいくつかあるでしょう。主なものを紹介します。
新築マンションの場合、マンションは供給するデベロッパーが間取りなどを企画して購入者は自分に合ったものを「選ぶ」ことになります。間取りやキッチンなどの設備機器、床や壁の素材や色などにこだわりがある場合は、満足できないこともあります。ただし、多くのマンションでは、間取り変更プランや、内装のバリエーション、住宅設備機器のグレード変更などをオプションとして用意しています。オプションには申し込み期限がありますから、自分の好みに変更したい場合は、数期に分けて販売されるうちの1期の販売中に購入を申し込むのがおすすめです。また、中古マンションを購入してリフォームやリノベーションをする場合は、物件によって制約はありますが、間取りや設備、内装などの自由度は高くなります。
マンションは購入した専有部分以外は共用部分。自分だけのものではありませんから、住戸に隣接しているスペースだからといって自由にできません。バルコニーやルーフバルコニーのフェンス位置に勝手に外壁をつくってサンルームのようにするなどもできません。つまり、家族が増えたり、モノが増えたりしても、住宅の面積は広げられないのです。
間取りを変更したり、キッチンやトイレの位置を移動したりなど、自由なリフォームができないケースがあります。構造によっては撤去できない室内の壁がありますし、排水のためには排水管に傾斜をつける必要がありますからキッチンや浴室、トイレなどの水まわりを大きく移動できないケースもあります。また、管理規約で使用できない床材があるなどリフォーム内容に制約が設けられているマンションもあります。
最近はペット可の分譲マンションも多くありますが、物件によって、特に中古マンションではペットが飼えないケースがあります。現在、ペット可の住宅に住んでいる人や、今後、ペットを飼いたいと考えている人は、そのマンションのルールを確認する必要があります。
コンクリートの壁や床、天井をはさんで、上下階や隣の住戸と隣接しているマンション。足音やものを落とす音、椅子などの家具を引く固体伝搬音は、コンクリートの躯体を通して伝わります。また、大音量のオーディオの音、大きな声、楽器の音などの空気伝搬音は窓や給排気口などの開口部を通して伝わります。音の問題はおたがいさまとはいえ、自分が出す音に気兼ねをしたり、近所からの騒音に悩んだりといったこともあるかもしれません。
マンションで考えられるメリットやデメリットは、戸建ての場合は違ってきます。戸建てのメリットは、自由度の高さ。予算という制約はあるものの、注文住宅なら間取りや住宅設備などを自分で選ぶことができますし、建売住宅、特に木造の戸建ては増築やリフォームの自由度が高いといえます。
その一方で、駅に近い利便性の高い立地ではなかなか土地が手に入らない、土地があっても金額が高いなどのデメリットが。また、宅配ボックスや防犯カメラ、警備会社との契約など、戸建てでも導入できますが、費用がすべて自分もちのためマンションよりも割高になります。
マイホーム購入後、長く快適に暮らしていくためには建物の維持や管理が大切です。建物全体を所有者みんなで維持管理していくマンションのメリット、デメリットを知っておきましょう。
マンションを購入すると管理組合に加入します。管理組合とは、マンションの維持や管理を主体的に行う組織のこと。維持管理とは、日常の共用部分の清掃、エレベーターや照明器具などのメンテナンス、修理などですが、管理組合が自分たちで行うのではなく、組合の活動をサポートする管理会社に管理業務を委託するのが一般的です。
建物や設備に詳しくない人がすべての維持管理を行うのは大変です。いつ、何をすればいいのかわからないでしょう。マンションなら、管理会社のサポートを受けながら、管理組合が日常的なメンテナンスや、10~15年ごとの大規模修繕を計画的に行えます。
日常の管理にも、定期的な大規模修繕にもお金がかかります。そのために毎月支払うのが管理費と修繕積立金。毎月、所有者みんなで出し合って積み立てておくことで、計画的な維持管理が実現しやすくなります。
管理組合主体で計画的に行われる維持管理ですが、人によってはデメリットと感じる点もあります。
そろそろ共用廊下を張り替えたい、エントランスの自動ドアをタッチ式からセンサー式に変えたいなど、共用部分についてのこうしたい、ああしたいがあったとしても、それはみんなのものですから勝手に修繕や変更はできません。また、テレワーク中で家にいることが多いので大規模修繕はもっと先のほうがいい、と思っても自由にはなりません。共用部分の維持管理に積極的にかかわりたいなら、管理組合の理事や理事長としてマンション全体の維持管理活動に取り組んでみるのもひとつの選択肢です。
さまざまな事情で管理費や修繕積立金を滞納してしまうケースがあります。滞納の件数が多かったり、長期にわたったりすれば、管理のための費用や、将来の大規模修繕の費用が不足することに。その場合、管理組合や管理会社から支払いを催促しますが、スムーズにいかず訴訟に発展するケースもあります。
戸建ての場合、管理費や修繕積立金を毎月払う必要はありません。しかし、外壁の塗り替えや屋根のふき替えなど建物の維持管理のためのメンテナンスは必要です。戸建てでも、維持管理用の資金を積み立てておくのが安心です。
メンテナンスの周期やいくらくらいかかるかは、使われている建材や設備などによって異なりますから、建築会社に相談を。
自分ですべての維持管理を計画して実行しなければならない大変さが戸建てのデメリットではありますが、経済事情によって修繕の時期をずらしたり、予算に合わせた修繕内容を選べるなど柔軟にできるのはメリットです。
マンションの購入費用や、購入後にかかる管理費や修繕積立金、税金などのコスト。マンションではどんなメリットが得られるのでしょうか。デメリットはあるのでしょうか。
マンションの所有者が負担するコストには物件代金のほか、主に以下のようなものがあります。
・管理費、修繕積立金
・駐車場代
・駐輪場代
・トランクルーム使用料
・専用庭、ルーフバルコニー使用料
・固定資産税・都市計画税
マンションでは、税金面での優遇メリットがあるほか、コストを支払うからこそ得られるメリットもあります。
マンションは土地の価格をみんなで分けて負担することになります。同じ広さの土地でも、戸建てよりもマンション、小規模な物件よりも総戸数の多い大規模な物件ほど、一人ひとりの負担は小さくなります。
マンションなどの不動産を所有している限り、毎年納めることになる固定資産税と都市計画税。そのうち、固定資産税は、新築マンションは当初5年間、認定長期優良住宅に該当する場合は7年間、税額が1/2に軽減されます。
ラウンジやコワーキングルームなどの共用施設がある場合、それらの管理や運営費は所有者みんなで負担しています。総戸数の多い大規模物件になるほど1住戸当たりの負担は小さくなります。軽い負担で、共用施設を無料、または安価で利用できるのはメリットです。
管理費や修繕積立金をみんなで払っているからこそ、共用施設やサービスが充実したり、建物の耐久性が保たれたりするのですが、一人ひとりの考え方や、マンション購入後の家計の変化などで、デメリットに感じられることもあります。
管理費や修繕積立金、駐車場代、トランクルーム使用料など、毎月かかるコストがあります。定期借地権マンション(定期借地権で借りた土地に建つマンション)の場合は、物件価格は安めでも毎月の地代や解体準備金がかかります。このようなコストは、金額を自分でコントロールできません。入居当時は負担に感じなかったのに、子どもの教育費がかかったり、転職などで収入が減ったりなどの家計の変化で負担感がアップするリスクがあります。
ラウンジやフィットネスジムなどの共用施設は、マンションの所有者全員が管理やメンテナンスのコストを負担しています。使わない人にとっては、費用の負担だけがあるということになります。物件探しの際には、自分にとって不要な共用施設のランニングコストに不満を感じないかを考える必要があるでしょう。
戸建ての場合も、マンション同様にメンテナンスのコストがかかりますが、決まった金額が毎月出ていくわけではありません。新築の場合は固定資産税が1/2に軽減されるメリットもあります。ただし、軽減される期間は一般的な住宅は当初3年間、認定長期優良住宅なら5年間で、マンションよりも短くなっています。大きなメリットは駐車場代が不要なこと。地方などで敷地が広ければ、複数台数の車がコスト不要で駐車できます。
マンションでは何階の住戸を選ぶかで、暮らし心地が異なります。1階、2階以上の低層階、高層階、タワーマンションの場合のそれぞれのメリット、デメリットをまとめました。なお、低層階は何階までのことをいうのか、高層階は何階以上なのかという明確な定義はありません。ここでは、低層階を1階~5階、6階以上を高層階とします。
物件によりますが、専用庭があったり、駐車場が庭に隣接していてエントランスを通らずに直接住戸に出入りできたり、戸建て感覚で暮らせるマンションもあります。
外に出るとき、エレベーターや階段を使わずにすむ気軽さもメリットです。
年をとってからの万が一の際、1階住戸なら自力で避難がしやすいといえます。
子どもの足音などが階下に響く心配がないのでのびのびと子育てができます。
人通りの多い道路に面した1階住戸は、外からの視線が気になることが。物件探しの際は、植栽やフェンスで目隠しがされるかをチェックしましょう。
外からの侵入が特に心配なのが1階。エントランスだけでなく、敷地全体のセキュリティ対策を確認する必要があります。
向かいの建物から距離がある敷地の広いタワーマンションや大規模物件では、採光に心配のない1階住戸も多いのですが、近くに高い建物があるマンションでは、採光が心配なケースがあります。
住戸の方角や周辺環境によりますが、同じマンションの1階よりも採光が期待できます。
停電時、10階以上など高層階の住戸は、階段だけで出入りするのが大変です。低層階なら階段で上り下りしやすいでしょう。
ンションはどの階でも上下階や隣への音に気をつかうものですが、2階以上の住戸は、1階よりも、より配慮が必要といえます。
周辺に高層ビルやマンションが密集していなければ、眺望や採光、通風の良い快適な住み心地が期待できます。
マンション周辺の道路から見上げても住戸の中は見えません。
新築マンションの分譲のときも、高層階は人気で早く売れるのが一般的。
停電が続くと階段で上り下りをすることに。高齢者や体が不自由な人、小さな子どものいる世帯などは負担が大きくなります。
マンションは上層階ほど揺れやすい構造になっています。家具の固定など、普段から備える必要があります。
眺望や採光、通風の良さや、外からの視線が気にならない、売却しやすいなど、一般的なマンションの高層階で得られるメリットのある住戸の数が多く、物件選びの際の選択肢が多いといえます。
エレベーターの台数が住戸数に対して少ないタワーマンションの場合、通勤時間帯などはエレベーターがなかなか来ない、来ても混んでいて乗れないことがあります。
エレベーターを待ったり、途中の階で乗り換えたりなど、タワーマンションは外へ出るまで時間がかかるため、外出が億劫になることがあります。
一般的なマンションと同様に、地震の際には高層階ほど揺れが大きく感じられます。
戸建ては平屋や2階建て、3階建てといろいろ。マンションに比べると、音の問題で気兼ねすることが少ない点がメリットでしょう。階段のない平屋は老後も暮らしやすいといえますが、建てるためには広い土地が必要。また、建築コストが割高になるデメリットもあります。
家族構成やライフスタイルの変化、転勤などで住宅を買い替える場合、マンションにはどんなメリット、デメリットがあるのでしょうか。
一般的には、戸建てよりもマンションのほうが売却がしやすいケースが多いといわれています。
耐久性の高いマンションの場合、永住を考える人だけでなく、将来の売却や賃貸にすることを考える人も購入を検討します。購入検討者の数が多ければ、それだけ売却がしやすいということになります。
新築で購入したマンションの買い替えよりも、中古で購入したマンションを売却する場合、買ったときの価格と売却価格の差が小さいケースが多くあります。つまり、売却でローンの残債を完済しやすいといえます。
売却しやすい点をマンションのメリットとして挙げましたが、立地や築年数、管理状態などによっては、なかなか売却が進まないケースもあります。
マンションも戸建ても、所有している限り固定資産税・都市計画税がかかります。マンションの場合はさらに、管理費や修繕積立金も毎月かかります。売却しやすいように退去している場合でも、支払う必要がありますから、売却できるまでは新居の費用とダブルの出費が重なることになります。
戸建ての場合、売りやすさはケースバイケース。立地や周辺環境、建物の状態がよく、暮らしやすそうな間取りやサイズの戸建ては売りやすくても、駅から遠い立地や大がかりなリフォームが必要な状態の戸建てなどは、売却に苦労するかもしれません。古家の場合は建物を解体して、注文住宅を建てたい人向けに更地にしたほうが、売りやすくなるかもしれませんが、解体費用が百万円単位でかかる点に注意が必要です。
マンションのメリット、デメリットはさまざま。物件によっても大きく異なる
メリットはセキュリティや共用施設の充実、立地の良さ、フラットなワンフロアの暮らしやすさなど
デメリットは内装デザインや設備を自分で選べないことや、物件によってはペット不可な点など
維持管理のためのコストはかかるが、必要な修繕費が計画的に貯められる
1階、2階、高層階など、どの階を購入するかで暮らし心地が異なる
戸建てに比べて、買い替えの際の売却がしやすいメリットがある