北陸建築めぐり1日目(山代温泉古総湯・九谷焼窯跡展示場・サイエンスヒルズこまつ)

雪が降る前の、冬の初めの北陸地方は小雨がよく似合う街のように思う。
雨が降っても、梅雨時期のようなうっとおしさもなく、「しとしと」と濡れる光景が静けさを感じさせる。
都市部はやはり賑やかだが、肌寒さと相俟ってしんみり感が強調されるのだろうか。そんな時はぶらぶら歩き回ってみるのも悪くない。

ということで、年末は恒例の建築見て歩き電車旅に出掛けてきた。飲み鉄は封印。
電車旅のルールとしては、使える交通手段は電車と脚、時々バスとする。このルールのおかげで電車旅の時は何故か歩き回る羽目になり(1日2.5万歩くらい)、疲労感が半端ない。

-今回は、加賀から金沢、富山へと建築を巡ってきた。

山代温泉総湯・古総湯

カメラ片手にパシャパシャ撮ったり、突然立ち止まってジッと眺めてみたり、とにかく「建築見て歩き」なんてのは一部の建築関係者にしか理解できないことかもしれない。

名古屋から先ずは加賀温泉駅へ。
加賀温泉駅からはシャトルバスが2時間おきに発車しており、行きは早くもバスに乗車。
[山代温泉古総湯]内藤廣
PC261046
山代温泉の街が新しく生まれ変わり、その中心施設として二つの共同浴場として「総湯」と明治時代の総湯を復元した「古総湯」が建てられた。古総湯はシャワーも洗い場もなく、脱衣場も浴室と一体となっており、現在では体験できないような当時の風習に触れることができる、不思議な場となっている。古総湯は熱めの湯で、パッと入りパッと出ていくような入浴スタイル。
PC261052
2階の休憩室へ。ステンドグラスでカラフルな空間になっています。
PC261069
こんな風情ある足湯もあります。気持ちいのでおススメ。

九谷焼窯跡展示場

山代温泉街から徒歩10分程のところに漆黒の建物の展示館が見えてくる。
豊田伝左衛門は、古九谷の再興を目指し、久谷の地を去り山代越中谷に登り窯をつくったそうだ。その窯跡を覆うように保護している建物がこの展示場である。
[九谷焼窯跡展示場]内藤廣
PC261056
PC261060
窯跡を覆う展示空間は、山形鋼を用いたダブルレイヤーのトラスにより構成されている。3次元立体トラスを組立てる際には、やはりジョイント部に相当の苦労の跡が垣間見れる。ボールジョイントだと簡単だろうけど、そうはさせない設計者の意図を感じ取れる。
PC261062
山形鋼などの開断面の部材は基本的にはトラスなどの軸力部材には不向きだ。なぜならば座屈に対しとても注意が必要だからだ。だけども開断面部材を用いることのメリットとして、シャープな陰影を引き出し、空間を引き締める効果は抜群だ。

僕も好んで開断面部材を使うが、設計中は苦労が絶え間ない。

サイエンスヒルズこまつ

加賀温泉駅から北陸本線で小松へ。駅から徒歩5分のところにサイエンスヒルズがある。
この建物はうねうね建築だ。地面からそのまま屋根の上に登って行ける丘のような建築だ。
[サイエンスヒルズこまつ
]元倉眞琴

PC261089
PC261077
この建物は一見すると、いわゆる「自由曲面のシェル構造」と思われがちだがそうではない。
内部の適切なところに鋼製支柱を設けて、フラットスラブ構造とシェル構造が混在したような構造となっている。
シェル構造などの空間構造の先駆者である、坪井善勝先生によると、「合理性の近傍に美は存在する」ということだそうです。この建物もシェル構造だけに拘っていないところがいいのかもしれません。
物の形態が、機能性と楽しさに寄与しているのは、同じ技術者として嬉しいことですね。
PC261079
PC261093
近隣ではコマツの重機が展示されています。
この写真からは読み取れないかもしれないが、この超巨大なトラックの迫力は相当なものだ。

金沢にて一泊。