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ダウン症児を育てて思うこと。子どもたちみんなが生きやすい社会になってほしい【俳優 奥山佳恵×加藤貴子】

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家族ぐるみで泊まりがけで出かけたり、互いの家に遊びに行ったりするほど仲よしだという奥山さんと加藤さん。撮影中は終始にぎやかな笑い声が。

不妊治療・3度の流産を経て44歳で第1子、46歳で第2子を出産した加藤貴子さんと、28歳で第1子、37歳で第2子を出産した奥山佳恵さん。2人はプライベートでも仲よしで、子育ての話もよくするそうです。奥山さんの二男は生まれたあとにダウン症とわかり、そのことも公表しています。加藤さんと奥山さんに不妊治療や出生前検査にどのように向き合ったのかについて聞きました。

NIPT検査は赤ちゃんを受け入れるための準備

「不妊治療をして高齢出産した子に障害があるとしたら・・・と子どもの将来を考えてすごく悩みました」と加藤さん。

――加藤さんは44歳での高齢出産でしたが、おなかの赤ちゃんに染色体異常があるかどうかがわかるNIPT検査(非侵襲性出生前遺伝学的検査)を受けたそうです。

加藤さん(以下敬称略) 私は42歳から不妊治療を始め、3度の流産を経て43歳で長男を妊娠しました。ただ、長男の妊娠4カ月に入っても胎児の鼻骨が見えないことと、首の後ろあたりにむくみがあることから染色体異常の確率が高いと医師から言われました。死産になってしまう可能性があるとも説明され、「43歳という年齢で不妊治療で死産になった場合、子宮のことを考えると次の子どもは望めません。その覚悟で妊娠を継続するか、中絶するか、どうしますか」と判断を迫られました。

自分が望んで不妊治療をして産んだ子どもにもし障害があったとしたら、この子が30歳になるまで自分が元気で働いて面倒を見ることができるのか、とすごく不安になりました。夫と一緒に悩んだ末「まだわからないことを不安に思うのはやめよう、はっきりさせてどんな結果が出ても一生懸命考えよう」と決心し、NIPT検査を受けることにしました。助かる命なら何としても助けたいから、そのためにどんな方法があるかを知りたかったのと、結果がわかった時点で自分の覚悟が明確になるだろうという理由もありました。その後、検査の結果、陰性で赤ちゃんにいちばん心配していた染色体異常はないとわかりました。

――奥山さんは先天性の染色体異常の一つであるダウン症候群の二男を育てています。検査についてどう考えていますか?

奥山さん(以下敬称略) 私は妊娠中はおなかの赤ちゃんは健康だと言われていたし、当時はまだNIPT検査はなかったので受けてはいません。出産してから、生後1カ月のときにダウン症だとわかったんです。そのとき、染色体異常がある赤ちゃんの95%が残念ながら死産になると聞きました。今思うと、美良生はよくそこをかいくぐってきたな、と。生きる力が強いからこそ生まれてこられた気がします。

NIPT検査が始まったのは、美良生が生まれた翌年の2013年ごろからのことです。私の妊娠のタイミングではできなかった検査になりますが、私がもし、妊娠初期で赤ちゃんに染色体異常があるかもしれないとわかっていたらどうしたかな、って考えることはあります。

私は、健常児で授かった長男でさえ育児ノイローゼになりかけるほど育てるのが大変でした。だから障害がある診断がされていたら、私のような度量ではきっと育てられません、と泣く泣くあきらめていたんじゃないかと思うんです。妊娠継続を辞退している人の気持ちも私はわかるように思います。

加藤 私は二男を妊娠したときにもNIPT検査を受けたんだけど、もし障害がある子が生まれたとしたら、親として勉強したり準備できることがあるのか?を知っておきたかったから・・・。 

奥山 受け入れるための準備だよね。それが出生前検査の本来の目的であるはず。でも最近は少し違う意味合いで捉えられてるんじゃないかな、と感じます。安心安全な答えが欲しいから診断してる人もいるんじゃないかな。事前に情報がわかるのはいいけれど、不安が増してしまうのは残念ですよね。それなら何のためにこの検査って存在してるんだろうって。それって本当にみんなの幸せになるのかな、と考えています。

私個人としては、事前におなかの子どもの様子がわかるよりも、障害や病気をもって生まれてきても大丈夫な世の中になってほしいなって思います。病気の子が生まれたら、その子の命をサポートしてくれる施設が充実するといいな。

長男の言葉がきっかけで美良生くんのダウン症を公表した

「佳恵ちゃんの前向きな考え方にいつも勇気づけられます」と加藤さん。

――奥山さんは美良生くんが2歳のときにダウン症であることを公表しました。加藤さんはいつごろそのことを知りましたか?

加藤 長男を妊娠して、もしかしたら障害があるかもしれないとわかって不安だった時期に、私たちが所属している芸能事務所のパーティに参加したんですが、そこで佳恵ちゃんと2歳くらいだった美良生くんに会いました。そのときは美良生くんがダウン症だとは知らなくて、佳恵ちゃんのかわいい息子さん、として見ていました。佳恵ちゃんも幸せそうで、笑顔がいっぱいだな、うらやましい家族だなって思ったんです。

その後、長男を出産する1カ月前にテレビで佳恵ちゃんが美良生くんのダウン症を公表した番組を見ました。そのときに、パーティでの幸せそうな佳恵ちゃんと美良生くんの姿を思い出して、障害がある子の子育てを不安に思うのは、未知の世界のことすぎて、いろいろなことが全然わからないからじゃないかな、と気づいたんです。

奥山 2013年に美良生のことを公表したのは、長男の空良が背中を押してくれたからなんです。NIPT検査が始まったころに、長男と一緒にNIPT検査の特集の番組を見たんです。長男に「教えて」と言われて「おなかの赤ちゃんに染色体異常があるとわかったら、多くの人が赤ちゃんにさようならしてしまうっていう数字が出てるらしいよ」と番組の内容を説明しました。

そしたら長男が「染色体異常って美良生くんのこと? 美良生くんはこんなにかわいいのに。お母さんはテレビに出る仕事をしてるんだから、かわいいってことをもっとみんなに知ってもらったほうがいいよ」って言ってくれたんです。たしかに、私も二男の産後しばらくは障がいのことがわからないから不安だったけど、実際育ててみたら二男はとっても育てやすい子だったんです。そのことを知ってもらえば、かつての私のように障害があると不安って思っている人たちも少し生きやすい世の中になるのかもって。それで、公表しようということにつながりました。

加藤 佳恵ちゃんはよく「状況は変わらなくても自分の受け取り方一つで状態は変わる」と話してくれるんですが、私はこの考え方にすごく影響を受けました。遊園地に行くのを楽しみにしていた日に雨が降っちゃう状況ってどの家庭でもあると思うけど、それをどう楽しむかの発想があればその日1日が台無しにならないって考え方を佳恵ちゃんに教えてもらいました。子どもを育てる中で、その考え方一つで心が楽になるなぁって。

奥山 雨が降っているのはしかたがないもんね。どうあがいても天気は変えられないから、それならやってくる毎日を楽しくしなきゃもったいないじゃんって思います。

子育てで対峙する自分の弱み

「障害の有無にかかわらず、子育ての大変さはそれぞれだなって思います」と奥山さん。

――『たまひよ』は今年で創刊30周年を迎えます。奥山さんの長男は今年20歳になるとのこと。『たまひよ』の今の読者からは先輩ママですが、子育てを振り返ってどんなことを思いますか?

奥山 子育てしていて思うのは、自分の度量のなさ、ダメなところがこんなにまざまざと見せつけられるんだ、ということ。自分の至らなさを突きつけられて逃げられないというか。

加藤 わかるなぁ。どうしても自分のダメなところと対峙しなきゃいけないときがあるよね。

奥山 私はすごく沸点が低くて、すぐキレちゃうの。子どもをしんぼう強く待ってあげられないんだよね。
この春小学校6年生になった美良生は、最近、ひらがなの「え」を練習してるんだけど、何度練習しても「え」のしっぽみたいな部分がどうしても書けない。書いて消して、書いて消してを繰り返す練習につき合って、5回目くらいで限界に。その場にいたら二男に「ワーッ!」と言ってしまいそうだったから、自発的に部屋にこもってちょっと離れたんです。

そしたら、しばらくして二男が部屋にやってきて「また頑張ろうね」って言うんです。もう「ごめんなさいっ!」と思いました。一生懸命考えて彼なりに「次また頑張ればいいよね」と言ってくれたんですけど、そんなことを子どもに言わせてしまう自分のダメさを反省しました。美良生のほうがよっぽどしっかりしてるなって。
親だからって全然えらくなんてなくて、子育てを始めて20年たった今も子どもに育ててもらってるなあと思います。

お話/奥山佳恵さん、加藤貴子さん 撮影/山田秀隆 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部

今回の対談で、子育てに悩んだ過去や今の困りごともお話ししてくれた奥山さんと加藤さん。親として真剣に子どもや自分の人生と向き合う2人の姿に共感した人も多いのではないでしょうか。

●記事の内容は2023年4月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

奥山佳恵さん(おくやまよしえ)

PROFILE
1990年、映画の全国オーディションにてグランプリを射止め、92年主演でスクリーンデビュー。翌年日本アカデミー賞新人俳優賞受賞。以降、ドラマ・バラエティー番組などで活躍。2001年結婚、翌年長男を出産。2011年には二男を出産、その後二男がダウン症候群であることが判明。現在は、2度の子育て、ダウン症の次男を迎えての家族の日々などを伝えることでダウン症への理解を深めてほしいと、TVやイベント出演、講演活動なども積極的に行っている。著書に「眠れぬ森の育児」(主婦の友社)「生きてるだけで100点満点!」(ワニブックス)がある。

加藤貴子さん(かとうたかこ)

PROFILE
1970年生まれ。1990年に芸能界デビューして以降、数々の作品に出演。代表作として『温泉へ行こう』シリーズ(TBS系)、『新・科捜研の女』シリーズ(テレビ朝日系)、『花より男子』(TBS系)などがある。2014年に第1子となる男児、2017年に第2子となる男児を出産。著書に自らの妊活や不妊治療についてを語った『大人の授かりBOOK~焦りをひと呼吸に変える がんばりすぎないコツ~』がある。

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