ドネツク人民共和国の自警団 - Sputnik 日本, 1920, 31.01.2022
ウクライナでの露特別軍事作戦
ロシアは2022年2月24日、ウクライナで軍事作戦を開始した。プーチン大統領は、その作戦の目的を「8年間ウクライナ政権によって虐待や大量虐殺にさらされてきた人々を守ること」だと述べた。プーチン大統領は、この目的のために「ウクライナの非軍事化と非ナチ化」を計画していると語った。西側諸国は、特別作戦に関連して、ロシアに対する新たな厳しい制裁を発動した。

【人物】北の温もり、ドンバスへ届けたい シベリア発・人道支援団体代表が語るマリウポリでの支援活動

© 写真 : ©Humanitarian Volunteer Corps民間団体「人道ボランティアコルプス」の活動
民間団体「人道ボランティアコルプス」の活動 - Sputnik 日本, 1920, 23.11.2022
サイン
2014年から絶え間なく戦闘が続いてきたドンバスでは、様々な団体が民間人の生活を支援している。そのうち最も大規模かつ継続的に活動しているのが、シベリアのハンティ・マンシ自治管区(ユグル)の中心都市スルグトを拠点とする非営利の民間団体「人道ボランティアコルプス」である。この組織にはロシア中の25以上の地方から志願者が参加し、ボランティア活動を行っている。代表、エドアルド・ロギノフ氏に話を聞いた。
ロギノフ氏は、スルグトからドンバスへ向かう途中、モスクワに立ち寄り、取材に応じてくれた。人道ボランティアコルプスは、2014年から現在に至るまで約3000トンの物資をドンバスに送ってきた。今回もまた、人道支援プロジェクトの一環で、食料品や衛生用品などの支援物資を届ける。目的地はマリウポリだ。
基本的には、お金ではなくモノを集めている。食料品はマカロニやトションカ(茹でた肉の缶詰)などで、ユグルの住民たちが持ってきてくれるのだ。「市民から市民、ユグルのおばあちゃんの手からマリウポリのおばあちゃんの手へ渡ることがとても大事」と言うロギノフ氏は、人道支援物資の引渡しに必ず立ち会うよう心がけている。
このインタビューが行われた前日、人道ボランティアコルプスは、ユグルの女性から連絡を受けた。現地に住むおばあちゃんが、電気もガスもなく、食べるものがないという。すでに現地入りしているボランティアと連携し、そのおばあちゃん宅に、ガスコンロとガスボンベを持参して、食事を作りに行った。アパートの上の方に住んでいると下に下りるだけでも大変だし、路上で火をおこして、料理を作るのもひと苦労だ。ロギノフ氏は言う。

「マリウポリでは、せめて1日に1度、温かい食事が取れるように炊き出しを行っています。お粥やスープなどをボランティアが調理します。ひとりひとりの人生、生活がとても大事です。どんな政治的意見を持っているか、宗教は何を信仰しているか、その人が何の民族か。私たちの救助活動には、そういったことは一切関係ありません。どんな人でも助けます。命より大事なものなんて何もありません」

© 写真 : ©Humanitarian Volunteer Corpsエドアルド・ロギノフ氏。後列右から3番目 
エドアルド・ロギノフ氏。後列右から3番目  - Sputnik 日本, 1920, 23.11.2022
エドアルド・ロギノフ氏。後列右から3番目 

シベリアのぬくもり

人道ボランティアコルプスが本部を構えるスルグトから、ドネツク人民共和国の主要都市、ドネツクやマリウポリまでは陸路で3500キロ以上もある。

「私たちは北のぬくもりを届けます。何千キロ離れていても、心の温かさ、思いやりの温かさを届けます。このことは心にエネルギーを与えてくれます。ソ連時代、ユグルの都市はドンバス出身者によって作られました。彼らはここで働き、北の地に根を下ろしたのです。

 とはいえ、その理由で、ドンバス支援をしているわけではありません。私たちはシリアにおける人道支援にも参加しました。この支援活動はむしろ、シベリア人のメンタリティというものでしょう。シベリア人、ユグルの人というのは、生きていくために戦うことに慣れています。シベリアの気候が、独自の性格を形成していくわけです。

 町と町の間の距離は、日本の方には想像もつかないほど遠いです。スルグト地方だけで、フランスがいくつかすっぽり入ってしまうくらいです。マイナス50度とか60度の中、車で走っていると、日本車でさえ、極寒の中で故障してしまうこともあります。そんな中で助け合いは必須です。

 ユグルの人は良い意味で、みんなで自然と戦ってきました。生きていくためには、建設しなければいけないし、石油を採掘しなければならない。ユグルではひとりで生きていけないのです。なのでドンバスで起こっていることも、他人事と思えないのです。もちろん起こってほしくはありませんが、日本で何か起これば助けに行く覚悟です」

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民間団体「人道ボランティアコルプス」の活動 - Sputnik 日本
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民間団体「人道ボランティアコルプス」の活動
© ©Humanitarian Volunteer Corps

人道支援を受けるために並ぶ列

人道支援を受けるために並ぶ列 - Sputnik 日本
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人道支援を受けるために並ぶ列

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民間団体「人道ボランティアコルプス」の活動
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民間団体「人道ボランティアコルプス」の活動

連絡先は紙に書いて!

このような活動をしていると、あらゆるシーンに遭遇する。ロギノフ氏が「あれはショックだった」と話すのは、マリウポリで人道支援物資を引き渡しているときの出来事だ。ある女性が声をかけてきた。

「ガレージから母親を引っ張り出すのを手伝ってほしい、と言われました。聞けば、ウクライナ軍による見境のない攻撃が始まったとき、とにかく早く逃げなければと車で避難したそうです。母親の分は席がなかったので、彼女を救うためにガレージに入れてガレージを閉めた、と言うのです。

 場所はアゾフスタリの近くでした。アゾフスタリからは、非常に強い攻撃が延々と行われました。もちろんその母親は、もう生きてはいません。車のトランクや屋根のスペースを活用するとか、やろうと思えば何か方法はあったはずだし、どうしても駄目なら男が残ればよかったのでは。

 でも結局その人たちは、誰に助けを求めることもできない、老いた母親を捨てた。この人たちが何を考えているのか、この精神状態は私には理解できないものです」

人道ボランティアコルプスは、もともとユグルで、行方不明になった人や徘徊する高齢者探しなども行っていた。そのノウハウを生かし、探索専門のチームが、依頼を受けてドンバスで行方不明の人を探すこともある。該当者が、ウクライナ西部や西側の国に行って、連絡が取れなくなったケースが多々ある。

「私はみんなに言っているんです。携帯に番号が保存してあったとしても、いつデータが消えるかわからないから、メモ帳に書いておいて、と。番号をなくすと捜索の難易度は上がり、何週間もかかります。そして自分の身近な人を捨てないで、と言いたい。

 私は、老いた親が残されているのを見るのは辛い。その人たちにはみんな、子どもがいるのです。所在地がロシア領だろうがウクライナ領だろうが、その人の親であることに変わりはないのに、なぜ多くの人が気遣わないのか、疑問に思います」

逃げ遅れた人を避難させる、というのはよくある依頼である。障害をもった子どもを含む一家全員を避難させたことがあったが、子ども・両親の3人とも結核だったことがあとでわかった。一家を乗せた車はロギノフ氏が運転し、列車に乗せ、さらにモスクワで一時的な住居を提供した。かなり長い時間その家族と一緒にいたが、ボランティアは誰も感染しなかった。ロギノフ氏は「人道ボランティアコルプスには、ボランティアの安全を守るため、活動に際して厳しい決まりがあります。しかし医療証明書がなくて、結核のときのように、1か月も経ってから、初めてそれがわかることもあります。今までメンバーに怪我人も犠牲者もいないのは、神のご加護でしょう」と話す。
ドンバスからの避難者 - Sputnik 日本, 1920, 19.05.2022
ウクライナでの露特別軍事作戦
ドンバスからの避難者を自宅で受け入れるモスクワの男性 自身も辛い境遇、でも人助けしたい

政治に関わりたくない、しかし…

人道ボランティアコルプスは、マリウポリの病院、学校、幼稚園といった公共施設の復旧や清掃活動を手伝い、患者や児童を受け入れられるよう協力してきた。

「マリウポリといえば有名なフェイクニュースがあります。ドラマ劇場です。西側メディアで、1500人もの民間人が殺された、などの報道があった場所です。私たちのスタッフは、非常事態省のメンバーとともに破壊された劇場の片付けを手伝いました。そこからは46人の遺体が発見されました。

 特に恐ろしかったのは死臭です。ドラマ劇場周辺の臭いは、とてつもないものでした。しかし遺体は探し尽くしたはずで、どこからこんなひどい臭いが来るのかわかりませんでした。結局、傷んだ魚をつめた箱が大量に発見されたのです。

 その後も調査が続けられ、劇場は内側から爆発したことがわかりました。アゾフのロゴが入った書類も発見されました。46人は、言葉は悪いですが、おそらく「埋葬」されたのでしょう。その後、ウクライナは世界中に、劇場に避難した民間人をロシアが爆撃したというフェイクを広めました。

 何度も言いますが、私たちは政治に関わりたくないのです。でも、ボランティアのメンバーもニュースを読む中で、自分の目で見たことと全く違うことが報道されていたら気分が良くありません。なぜ全世界が、ウクライナが流しているフェイクを信じているのか?と思います。

 私たちは炊き出しをするとき、ウクライナ軍に従軍していたかとか、ウクライナを支持していたかなんて、絶対に質問しません。その人が必要なものを渡すだけです。それなのに、ボランティアに向けて攻撃されたこともありました。ウクライナ軍は、私たちが彼らの親戚に食事を届けているという事実を受け入れたくないのでしょう」

活動を続けていると、嬉しいこともある。ある炊き出しでは、自転車に乗った12歳くらいの少年が、近所の寝たきりの人のところに、食事を運ぶのを積極的に手伝ってくれた。犬が空っぽの缶詰を口に加えて炊き出しの列に並び、みんなで大笑いしたこともあった。そんなエピソードが、ボランティアの心を支えてくれる。
ロギノフ氏は、自分たちの本来の役目は、自然と戦うことだと強調する。

「この大変動、戦争、カタストロフィーが早く終わってほしいです。私たちのミッションは、ドンバス支援だけでなくシベリアの森林火災消火や、コロナ隔離中の独居者支援など多岐にわたります。

 戦争とかそういうことではなく、自然と戦うほうがいいです。もちろん自然災害が起こってほしくはないし、それ自体よくないことですが。兄弟が殺し合い人間が人間を破壊しようとしている今よりも、自然を助け、自然を守り、地球を守り、そして人助けするというのが本来あるべき姿。私たちはすべてが終わったら、平和に暮らすことを学ぶべきです」

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